2012 Fiscal Year Research-status Report
担癌宿主におけるSTAT3阻害剤(GRIM-19)を用いた抗腫瘍効果の研究
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24791145
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
花輪 書絵 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (80535592)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 悪性黒色腫 / STAT3阻害薬 |
Research Abstract |
悪性黒色腫を含む様々な癌細胞において恒常的に活性化するSTAT3(リン酸化STAT3;pSTAT3)の発現はSTAT3シグナル依存性のサイトカインが周囲微小環境内の免疫細胞とcross-talkすることで細胞障害性免疫反応を強力に抑制することが明らかとなっている。過去、我々は内因性STAT3阻害分子(GRIM19)とpoly-arginine(R9)-protein-transduction domain(R9-PTD)を融合させたfusion-protein(rR9-GRIM19)を作製、その抗腫瘍効果について検討を重ねた。pSTAT3を発現するB16 melanomaの腫瘍塊にrR9-GRIM19を単独で接種しても、ある程度の縮小効果を認めるものの完全拒絶には至らなかった。腫瘍が完全拒絶に至らない一因としてrR9-GRIM19投与したB16担癌マウスと無治療のB16担癌マウスの傍腫瘍リンパ節内T細胞におけるサイトカインプロファイルを検討した。L-6は無治療群で産生が増強し、rR9-GRIM19投与群で減少した。一方IFN-γ産生は両群共に産生が抑制を示した。以上、B16担癌マウスで傍腫瘍リンパ節内T細胞におけるpSTAT3発現を抑制する事と抗腫瘍効果を担うIFN-γ等のTc1/Th1の産生は増強促進させる事がB16担癌マウスの完全拒絶には必要である。以前我々は卵白アルブミン抗原(OVA)とrR9- PTDを組み合わせたrR9-OVA fusion proteinを作製し、強いTc1/Th1inducerであると報告した。このrR9-OVAとrR9-GRIM19とCpG(Th1a アジュバント)としてしられている3剤を併用するとB16担癌マウスの完全拒絶を得られた。メラノーマ特異的抗原を使用していないにもかかわらずメラノーマ特異的CTLの誘導も確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B16悪性黒色腫担癌マウスでは腫瘍からIL-6 IL-10の産生が強く、IL-6は傍腫瘍リンパ節内T細胞におけるpSTAT3発現に強く関わっている。これはvitroの実験でナイーブのT細胞とB16細胞の培養液中で共培養しIL-6とIL-10の中和抗体投与後T細胞のpSTAT3発現を比較し、確認した。同じ実験系でrR9-GRIM19投与にてしIL-6中和抗体と同等にT細胞内pSTAT3発現を抑制するものがrR9-GRIM19であった。vivoにてB16担癌マウス傍腫瘍リンパ節内T細胞はpSTAT3発現をしめし、rR9-GRIM19腫瘍内投与で傍腫瘍リンパ節内T細胞のpSTAT3発現が抑制されると確認した。vivoにおいてB16担癌マウスR9-GRIM19腫瘍内投与後傍腫瘍リンパ節内T細胞ではIL-6産生は抑制されるが、IFN-γの産生は増強しない。(multiple cytokine ELISA)よって、Tc1/Th1の誘導が必要である。前述のように我々の報告したrR9-GRIM19(STAT3阻害薬)とrR9-OVA(Tc1/Th1inducer)とCpGの3剤併用療法(COG療法)のみがB16の完全拒絶を得る事ができた。B16担癌マウスCOG 投与後傍腫瘍リンパ節内T細胞ではIL-6産生は著しく抑制され、IFN-γの産生が著明に増強した。また、B16担癌マウスCOG 投与後傍腫瘍リンパ節内T細胞ではメラノーマ抗原Trp2特異的細胞障害性T細胞の誘導が確認できた(FACS)。メラノーマ特異的抗原を使用しない免疫療法では画期的な事と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果より、rR9-GRIM19投与にて腫瘍からのIL-6産生阻害が傍腫瘍リンパ節内T細胞におけるpSTAT3発現を抑制し、傍腫瘍リンパ節内T細胞をTc1/Th1に誘導すると考えられる。 今後、B16担癌マウスにIL-6中和抗体投与下でB16腫瘍の抗腫瘍効果が得られるかを検討する。IL-6中和抗体投与下でB16腫瘍の抗腫瘍効果がB16担癌マウスrR9-GRIM19投与と同等であるか検討が必要である。また、今後ヒトへ臨床応用を含め、human rR9-GRIM19(h rR9-GRIM19)を作製すること、human melanoma cell lineのpSTAT3発現を検討すること、hrR9-GRIM19添加でhuman melanoma cellのpSTAT3下流分子の発現が抑制されるかの検討が必要と考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
B16悪性腫瘍担癌マウスで腫瘍から産生されているIL-6が傍腫瘍リンパ節内T細胞のpSTAT3 発現を増強させ、T細胞からのIL-6産生を増強させることがわかった。今後、IL-6中和抗体をもちいてマウスにおいてB16担癌マウスの腫瘍増殖が抑えられるかの検討が必要である。また、B16担癌マウスにrR9-GRIM19(STAT3 阻害薬)とCpGとrR9-OVA(Th1/Tc1 inducer)を投与後完全拒絶を得たマウスにおける悪性黒色腫特異的CTLを検討するためTrp-2tetramerによる解析が必要とかんがえている。 Mouse IL-6 MAb (clone MP5-20F3) R&D 500μg 50000円 10個 H-2Kb -Trp2 tetramer-SVYDFFVWL-APC (Trp2-tetramer) Medical & Biological Laboratories Co. (Tokyo, Japan) 250000円 1個 total 750000円
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