2013 Fiscal Year Research-status Report
セマフォリン発現トランスジェニックマウスにおける皮膚免疫機能と肥満細胞の検証
Project/Area Number |
24791147
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
龍野 一樹 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (50436937)
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Keywords | semaphorin / mast cell / keratinocyte |
Research Abstract |
Semaphorin(Sema)3aは神経軸索反発因子として当初注目されていた分子であるが、近年Sema3aには血管新生、器官形成、癌の進展、免疫機能などに作用することが判明した。これまでの報告では、関節リウマチ患者から分離した活性化T細胞でSema3aの発現が障害されていたことや、アトピー性皮膚炎の患者における表皮内のSema3a発現が健常人に比べ低下していたことが判明している。このことから、Sema3aの発現低下は炎症性疾患に関連している可能性が推測される。 我々は、肥満細胞をはじめとする免疫細胞に対するSema3aの作用の調査を開始し、マウス肥満細胞にSema3aの受容体であるNeuropilinとPlexinの複合体(NRP1/PlexA1)が発現していることをFACS解析にて確認した。また、培養したBMDMCにSema3aを添加することで、肥満細胞が増殖することをつきとめた。 肥満細胞の膜表面にはC-kitが発現しており、そのLigandであるSCFは肥満細胞の増殖因子として働く。表皮ケラチノサイトはSCFの産生源として考えられ、Sema3aがケラチノサイトに作用することでSCFの産生が促進され、間接的に肥満細胞の増殖を誘導する可能性を考えた。マウス新生児の皮膚からkeratinocyteを培養し、FACS解析にてケラチノサイトにSema3aの受容体であるNRP1/PlexA1の発現が確認された。その後、マウス皮膚から培養したケラチノサイトをSema3a存在下で培養し、上清のSCFをELISAで評価した。予想に反し、SCFの産生量はSema3aの添加により減少する傾向にあることが確認された。Sema3aは肥満細胞に対し直接的には増殖促進作用を示したが、ケラチノサイトに対してはSCFの産生を抑制する方向に働くことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、Sema3aが肥満細胞の増殖を促すことがわかった。今回は、Sema3aがケラチノサイト(表皮)に作用し、肥満細胞の増殖因子であるSCFの産生を促すかにつき検証した。予想に反し、Sema3aにはSCFの産生を抑制する働きがあることが判明し、Negative-feedback的な構造が示唆される結果であった。 また、Sema3aはアトピー患者の皮膚で発現が低下しており、その結果SCFの発現がケラチノサイトで高まる可能性も考えられる。アトピー性皮膚炎では様々な炎症細胞が皮膚病変に浸潤しており、肥満細胞も病態に大きくかかわっている。Sema3aの発現低下が炎症性病変での肥満細胞の増殖や遊走につながっている可能性が今回の結果から考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度はアトピー性皮膚炎に関連する肥満細胞以外の炎症細胞とSema3aの関連を探っていく予定である。具体的にはT細胞との関わりにつき研究を進めていきたい。Sema3aは肥満細胞の増殖を促す結果であったが、肥満細胞にはpro-inflammatoryとanti-inflammatoryの両作用が備わっていることが指摘されており、増殖を促すことが必ずしも炎症を助長させることにはつながらない。アトピー性皮膚炎ではSema3aの発現が低下していることから、Sema3aには全体としてanti-inflammatoryな作用があると想定もできる。培養したT細胞にSema3aを作用させる実験をすすめていきたい。
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