2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791158
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森桶 聡 広島大学, 病院(医), 病院助教 (40536679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 蕁麻疹 / 血液凝固 / Tissue Factor |
Research Abstract |
まず、慢性蕁麻疹の病態において、外因系の血液凝固能が亢進しているか否かを確認するため、トロンビン生成試験(CAT)を行った。その結果、慢性蕁麻疹患者の血漿では、健常人にくらべ、Tissue Factor(TF)、Phosphatidyl serine (PS)の添加によって産生されるトロンビンの量が著しく増加していることが明らかとなった。この結果は、慢性蕁麻疹の病態では、外因系の血液凝固能が明らかに亢進していることを意味している。また、Tissue Factorの発現細胞の候補としては、血管内皮細胞に着目した。血管内皮細胞におけるTissue Factorの発現メカニズムについてはこれまでよく知られていないため、検討を行った。その結果、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(Huvec)では、ヒスタミン、Lipopolysaccharideによる刺激によってTissue Factorの発現が認められること、さらに、ヒスタミン、Lipopolysaccharide両者による同時刺激によって相乗的にTissue Factorの発現が起こることを見出した。さらに、ヒスタミンによるTissue Factorの発現は、ヒスタミンH1受容体拮抗薬での処理によって抑制されることがわかった。一方で、ヒスタミンH2受容体遮断薬では抑制されないことも示された。これらのことから、ヒスタミンH1受容体を介した反応であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蕁麻疹の患者では凝固ポテンシャルが上昇しており、ヒスタミン、lipopolysaccharide (LPS)刺激により末梢血単核球におけるTissue Factorの発現亢進がみられることが確認された。また、抗ヒスタミン薬の添加によりその発現が抑制されることが示唆された。しかし、Tissue Factor発現に影響を与える因子に関する検討はまだ十分尽くされたとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きHuvec におけるTissue Factor発現に影響を与える因子について検討する。まずは蕁麻疹増悪因子として知られる感染症やアスピリンによる影響をin vitroで再現することを試みる。IL-1、IL-6、TNF-αなど感染症罹患時に上昇しうるサイトカインやLipopolysaccharide、アスピリンをHuvecに添加し、Tissue factor亢進がみられるか否かを確認する。また、Huvecをマイクロビーズ上に培養して慢性患者血漿と混合し、さらに上述した蕁麻疹増悪因子を存在させることで凝固反応開始の閾値が変化(低下)することを検証する。さらに蕁麻疹増悪因子により処理したHuvecを健常人由来血漿と共にインキュベートし、トロンビン生成試験により凝固ポテンシャルの変化がみられるかを検討する。LPSがHuvec表面にTFの発現を誘導するカスケードを知るため、各種TLR拮抗薬でHuvecを処理し、TF発現に及ぼす影響を検討する。 in vivoの系としては、BALB/cマウスにヒスタミン、あるいはLPSを投与して皮膚組織中のTissue Factor発現、及びその発現細胞を確認する。その際、あらかじめ抗ヒスタミン薬などの阻害薬を投与する前処置を施すことで、メディエーター投与によるTissue Factor発現の亢進を抑制できるかどうかも検討する。また、慢性蕁麻疹患者の他、各種炎症性疾患におけるヒト末梢血単球のTissue Factor発現をTACS解析し、蕁麻疹に特異的な病態を解析する。期限内に時間的余裕がある場合は末梢血好塩基球から遊離されるTissue Factor発現誘導因子を精製、同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、研究室に既存の機器及び試薬を用いて研究を進めることができた。次年度は、上記計画を実施するためさらに各種サイトカインの購入が必要となる(30万円)。またFACS解析の頻度増加が見込まれ、そのため今年度以上に多くの抗体試薬が必要である(50万円)。末梢血単核球におけるTissue Factor発現状況を検討するためには、FACS解析に加えて磁気細胞分離装置(オートマックス)による単球の分離が必要であり、単球分離のための磁気ビーズ付き特異的抗体カラムを購入する(70万円)。トロンビン生成試験のための測定装置は既に所属研究室に現有のものを使用する予定であるが、次年度はその測定試薬(45万円)を購入する。また、次年度は末梢血好塩基球より遊離されるTissue Factor発現誘導因子を精製、解析するため、ゲル濾過カラム、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、および逆相カラム(80万円)を購入し、組み合わせて活性物質を精製する。この他、研究成果を発表するために学会出張旅費(国内5万円、英国20万円)、英語論文校正費用(10万円)を計上する。
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