2012 Fiscal Year Research-status Report
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24791159
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
難波 大輔 愛媛大学, 上級研究員センター, 講師 (10380255)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 角化幹細胞 |
Research Abstract |
表皮角化細胞の性質を理解し、その増殖・分化および遊走を制御することは、表皮の恒常性維持や創傷治癒に対する新たな治療法の開発、さらに培養表皮シートを用いた再生医療など、皮膚科学領域のみならず幹細胞生物学・再生医療研究にも直結している。本年度、我々は、ヒト表皮角化幹細胞と、一過的にのみ増殖する細胞=transient amplifying細胞(TA細胞)とで、アクチン繊維の配向性が異なることを見出した。このアクチン繊維の配向性は、上皮成長因子(Epidermal Griwth Factor = EGF)に対する角化幹細胞とTA細胞の応答性を規定しており、角化細胞コロニーの成長を直接的に制御していることが明らかとなった。さらに、角化幹細胞とTA細胞のアクチン繊維配向性は、Rac1と呼ばれるタンパク質の活性によって制御させており、Rac1の活性を人為的に抑制すると、角化幹細胞のアクチン繊維の配向やEGFに対する応答性が、TA細胞用に変化することが明らかとなった。またRNA干渉の手法を用いてRac1タンパク質の発現量を減少させた結果、Rac1タンパク質の活性は角化幹細胞の維持にも必須であることが明らかとなった。以上の結果から、角化幹細胞特異的に観察されるアクチン繊維の配向が、EGFに対する細胞応答性のみならず、角化幹細胞の幹細胞特性そのものの維持にも必須であることが明らかとなった。この性質に介入することで、角化幹細胞の増殖・分化を人為的に制御できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ヒト表皮角化幹細胞の増殖性を、細胞内張力に干渉することで、人為的に制御することを目的としている。本年度の成果は、上記の目的を達成するために必須であり、今後の本研究の妥当性を強く支持するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実際に角化幹細胞の細胞内張力制御機構に直接的に干渉し、角化幹細胞の増殖・分化がどのように変化するかを明らかにし、その際に細胞内のシグナル伝達経路や増殖に関与する転写制御因子が如何に制御されているかを明確にする。また、蛍光イメージングの手法を用いて、角化幹細胞とTA細胞で、実際にアクチン繊維や発生する張力がどのようなものであるかを細胞が生きた状態で観察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主に角化細胞培養に関する消耗品や、生細胞の蛍光イメージングに関する物品等に研究費を用いる。また本年度の研究成果の成果発表や論文発表にも研究費を使用する。
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