2012 Fiscal Year Research-status Report
表皮におけるAhRの新規標的遺伝子の探索および皮膚病態との関連性の解明
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24791162
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古賀 沙緒里 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80590249)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 皮膚生理学 / ダイオキシン |
Research Abstract |
本年度は,油症患者血清において有意に変動しているケモカインのうち,ダイオキシン受容体である Aryl hydrocarbon Receptor (AhR) の活性化により直接的に変動するものがあるか検討することを目的とした. はじめに,各AhRリガンドで実際に発現変動するケモカインおよびサイトカインの探索を行った.AhRリガンドとして,6-formylindolo[3,2-b]carbazole (FICZ) (内因性のリガンド) および benzo[a]pyrene (BaP) (外因性のリガンド) を用いた.ヒト表皮細胞株であるHaCaT細胞を用いて検討した結果,CCL5/RNATESというケモカインが,AhRの活性化に伴い有意に減少することが明らかになった.CCL5は炎症部位にT細胞や好酸球などを遊走させる役割を担っている.このCCL5の減少はmRNAおよびタンパク質レベルで認められた.さらに,正常ヒト表皮角化細胞およびマウス皮膚初代培養細胞においても,AhRリガンドにより有意なCCL5の減少が見られた.そこで,このCCL5の減少がAhR依存的か明らかにするために,AhR siRNAを用いた検討を行った.その結果,AhRリガンドによるCCL5の減少が,AhR siRNAによって消失することが示された.したがって,CCL5の減少はAhR依存的に認められていることが示唆された. 以上の結果より,本年度は表皮細胞において,CCL5がAhRの活性化に伴い発現減少することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,ダイオキシン受容体であるAhRを介した標的遺伝子の発現変動を理解し,その遺伝子の変動がどのような病態と関連するのか明らかにすることである.以前に我々は,ダイオキシン類による慢性毒性の可能性が示唆されているアレルギー疾患に着目し,油症患者の血清中サイトカインおよびケモカイン濃度を測定した.その結果,アトピー性皮膚炎患者や接触性皮膚炎患者で高値を示すことが知られているケモカインの一部が,油症患者において有意に減少していることを明らかにした.そこで,これらのケモカインのうち,実際にAhRを介して変動するものを探索した結果,内因性リガンドおよび外因性リガンドの両方で,CCL5を有意に減少させることが明らかになった.したがって,本研究の目的であるAhRの新規標的遺伝子の同定に至ったことは大きい.今後は,CCL5の減少がどのような生物学的意義を持つのか,明らかにしていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,CCL5の減少がどのような生物学的意義を持つのか,明らかにすることを目的とした.以前の報告において,Th1由来の炎症性サイトカイン (TNF-alpha, IFN-gamma) の刺激により,表皮細胞からCCL5の発現が誘導されることが示されている.そこで,これらの炎症性サイトカインによって誘導されたCCL5を,AhRリガンドが減少させることができるか検討する予定である.さらに,in vivoの検討により,AhRリガンドが皮膚を始め,生体にどのような影響を与えるのか検討する.はじめに,皮下にAhRリガンドを注入し,そこに遊走される免疫細胞を同定する予定である.具体的にはFACSを用いて,表皮,真皮,リンパ節にそれぞれ遊走された細胞群を明らかにする.最終的に,CCL5の減少が生体にどのような影響をもたらすのか示したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用は,主に消耗品費が大半を占めると予想される.核酸およびタンパク質の評価に関連する試薬に経費が必要となり,ELISAやFACS関連抗体,細胞培養関連試薬などに使用する予定である.
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