2012 Fiscal Year Research-status Report
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24791177
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
馬渕 智生 東海大学, 医学部, 准教授 (30408059)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 乾癬 / γδ T細胞 |
Research Abstract |
乾癬は、慢性かつ難治性の経過をたどる皮膚疾患である。乾癬の病変部ではその病態形成、維持において、IL-17、IL-22が重要な役割を担っているが、ヒトの乾癬病変部におけるγδ T細胞の働きはほとんど解明いない。 乾癬モデルマウスのひとつに、IL-23をマウスの耳に皮内注射することで、病理組織学的に乾癬に類似した炎症反応を再現した実験系がある。研究代表者らはこの実験系を用いて、IL-23刺激の反応のごく初期の段階で、CCR6を発現し、IL-17、IL-22を産生、分泌するγδ T細胞が増加し、IL-23による乾癬様の炎症反応誘発において重要な役割を担っていることを報告した(Mabuchi et al. J Immunol. 187: 5026-5031, 2011)。CCR6はケモカインレセプターの1つであるが、そのリガンドはCCL20のみであること、そしてIL-22によって刺激された角化細胞は異常分化するとともに、早期からCCL20を産生、発現することが知られている(Hedrick et al. J Clin Invest 119: 2317-2329, 2009.)。研究代表者らは上記の実験系に抗CCL20抗体を加えることで乾癬様の炎症反応を有意に抑制することに成功し、新たに報告した(Mabuchi et al. J Invest Dermatol. 133: 164-171, 2013)。 この結果から、いまだ根治療法が存在しない乾癬治療において、新規の治療薬、治療法の発見が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスとヒトではγδ T細胞のサブセットが大きく異なっており、当初の予想通り、サブセットの同定に難渋している。また、研究代表者らのマウスを用いた実験系では、γδ T細胞はIL-23刺激の反応のごく初期の段階で発現しているため、病期の選択に苦慮している。
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Strategy for Future Research Activity |
東海大学医学部付属病院皮膚科外来に通院している乾癬患者から、乾癬病変部皮膚組織を採取する。 組織の一部は、ホルマリン固定、パラフィン包埋後、組織切片を作成、抗γδ TCR抗体で免疫化学染色を行い、γδ T細胞の発現、分布、そのサブセットを検討する。同時に、IL-22、IL-17などのサイトカイン、CCR6やCCL20などのケモカインやケモカインレセプターに対する抗体による免疫化学染色を行い、γδ T細胞の乾癬の病態形成、維持における働きを検討する。染色された細胞の観察は、光学顕微鏡のほかコンフォーカル顕微鏡を用いて観察、顕微鏡に接続してあるカメラを用いて撮影する。その後、写真・画像解析ファイルを用いて解析する。 また、組織の一部は、トリプシンやジスパーゼなどの酵素を用いて表皮と真皮を剥離、表皮細胞と真皮細胞をそれぞれ採取する。各細胞を抗γδ TCR抗体およびVγ鎖、Vδ鎖の異なるγδ T細胞のサブセットに対する抗体で染色、フローサイトメトリーを行い、γδ T細胞の発現、分布、そのサブセットを検討する。同時に、免疫化学染色と同様に各種のサイトカイン、ケモカイン、ケモカインレセプターの発現を観察する。細胞の染色結果は解析ソフトを用いて解析する。 さらに、別の組織の一部は、同様の手法で表皮細胞と真皮細胞を採取、RNA抽出キットを用いてRNAを抽出する。RT-PCRシステムにより、γδ TCRのほか、上記のサイトカイン、ケモカイン、ケモカインレセプターに対応するプライマーセットと反応させ、その産生物を検討する。これらのプライマーセットは設計ソフトウェアを使用して設計後、試薬会社に委託して作成されたものを購入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
病理組織の作成、免疫化学染色、写真撮影、フローサイトメトリー、Real-Time PCRシステムは、東海大学医学部の共同利用研究施設で既に保有している設備、機器を有料で使用する。必要な試薬の購入費。 研究成果を英文学術雑誌に投稿する際の校閲料。
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