2012 Fiscal Year Research-status Report
メラノサイトの癌化過程に関わる細胞膜糖脂質及びその関連分子の同定と作用機構
Project/Area Number |
24791182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
宮田 麻衣子 中部大学, 生命健康科学部, 助手 (90397456)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メラノーマ / 糖転移酵素 |
Research Abstract |
H24年度は次の実績が得られた。 1) メラノーマ細胞と培養メラノサイトにおいて、定常状態におけるガングリオシドおよび糖転移酵素遺伝子の発現を解析した。メラノーマ細胞ではGD3が発現増強しているのに対し、培養メラノサイトではGD3の発現はほとんど認められず、GM3が主要なガングリオシドであった。糖転移酵素遺伝子の発現レベルは、メラノーマ細胞では培養メラノサイトと比較してGD3合成酵素遺伝子が非常に高く、GM1/GD1b合成酵素遺伝子は著しく低かった。メラノーマ細胞では、GD3合成酵素遺伝子の発現亢進およびGM1/GD1b合成酵素遺伝子の発現抑制によりGD3が蓄積していることが示唆された。ジシアリルガングリオシドは癌性形質増進に働き、モノシアリルガングリオシドは癌性形質抑制に作用するというこれまでの報告と一致した結果が得られた。 2) メラノーマ細胞と培養メラノサイトにおいて、内的要因としてサイトカイン(TNFα)により細胞を刺激した時のガングリオシドおよび糖転移酵素遺伝子の発現を解析した。培養メラノサイトでは、TNFα刺激によりGD3合成酵素遺伝子の発現が誘導され、GD3の発現が増強された。一方、メラノーマ細胞ではTNFα刺激によりGD3合成酵素遺伝子およびGD3の発現に変化は認められなかった。 3) メラノーマ細胞と培養メラノサイトにおいて、外的環境要因としてUV-B照射により細胞に負荷をかけた時のガングリオシドおよび糖転移酵素遺伝子の発現を解析した。メラノーマ細胞、培養メラノサイトのどちらにおいても、UV-B照射によるGD3およびGD3合成酵素遺伝子の発現誘導は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) メラノーマ細胞と培養メラノサイトにおいて、定常状態における糖転移酵素遺伝子の発現の差異を検出できた。2)培養メラノサイトにおいて、サイトカイン(TNFα)刺激によりGD3およびGD3合成酵素遺伝子の発現が誘導されることを示した。3) メラノーマ細胞と培養メラノサイトにおいて、環境要因(UV-B照射)負荷によりGD3およびGD3合成酵素遺伝子の発現は誘導されないことを示した。4)脂質ラフト組成の質量分析(MS)解析のために、LESA(Liquid Extraction Surface Analysis)を利用したTLC-MSによる糖脂質分析法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果をもとに、 1) メラノーマおよびメラノサイトに対して環境要因(過酸化水素、低酸素)により負荷をかけた場合、または成長因子やサイトカイン(HGF, EGF, TGFβ, TNFα , IFNγ)により刺激した場合における糖脂質合成系の変動を解析する。 2) メラノーマおよびメラノサイトにおいて定常状態と上記の環境要因による負荷および成長因子などの刺激による形質変化を解析する。 3) メラノーマおよびメラノサイトにおいて細胞から抽出した糖脂質および脂質のMS分析を行い、メラノーマ、メラノサイトの脂質構成の差異を明らかにする。 4) ヒトメラノーマ組織または正常組織(良性の母斑など)において糖脂質合成酵素遺伝子群の発現解析を行い、細胞レベルで得られた結果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の実験が順調に進展し、消耗品の購入額(消耗品費)が予定よりも少額で済んだ。したがって、H24年度の残金は次年度の研究を遂行するために使用する。特に、紫外線照射による影響についての解析を発展させる目的で、実験機器、消耗品に使用予定である。また、H25年度の研究費は主に物品費として使用する。
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