2012 Fiscal Year Research-status Report
EBA患者100例の臨床像と自己抗体の抗原エピトープの関連性の検討
Project/Area Number |
24791185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
大島 明奈 久留米大学, 医学部, 助教 (80569369)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自己免疫性水疱症 / ELISA法 / 蛍光抗体法 / 免疫ブロット法 / 分子疫学解析 / 臨床統計解析 |
Research Abstract |
1.過去15年間で国内外の多数の医療施設より自己免疫水疱症が疑われる症例の血清を渉猟し当科症例を加え後天性表皮水疱症と診断した130名を検討した。血清学的には、1M食塩水剥離ヒト皮膚切片のIIF(split skin IIF)で真皮側にIgG沈着、免疫ブロット法で290kDaの7型コラーゲンを後天性表皮水疱症と診断した。 2.発症年齢は4歳~94歳(平均56.02歳)、10代以下は6例(4.6%)、男女比は1:1.02と性差はなかった。古典型EBAと炎症型EBAの比率は1;2とされるが、自験例はほぼ同数で、粘膜病変は半数とされるが75%が粘膜病変を有していた。 3.粘膜類天疱瘡は口腔粘膜のみの粘膜病変を有するが、標的抗原は7型コラーゲンも含めラミニン332やBP180 NC16a・C末端領域など多様である。今回の診断では粘膜病変のみの12例(12%)は粘膜類天疱瘡とすることもできるが、血清学的にEBAとも捉えられ、粘膜類天疱瘡型EBAとした。海外でも粘膜類天疱瘡型EBAの報告はあるが、今後粘膜類天疱瘡に分類されていくであろう。 4.EBAは抗p-200類天疱瘡や抗ラミニン332型粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡等の自己免疫性水疱性疾患と合併する報告が散見され、複数自己抗原検出例にもあったが、特異的な臨床症状はなかった。免疫ブロットで28例に290kDa以外の200kDa蛋白、ラミニン332、BP180NC16aなど複数の自己抗原が検出された。抗7型コラーゲン抗体のELISA法の感度は93.8%、特異度は98.1%との既報告と比較して、自験例のELISA法の感度は89.9%と免疫ブロットより僅かに感度が高かった。 5.ステロイド内服と併用療法が大半で重症度と治療法の関連はなかったが、治療後の症状軽快と共にELISA値が低下し病勢評価や治療効果判定に有用であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.症例の渉猟数が100例を超え、これまでの臨床統計解析を上回る症例数の患者の血清学的診断結果を集めることができた。また、世界各国から幅広い年代の患者と、口腔粘膜を始め様々な粘膜病変を有する患者についても分子疫学解析を行うことができた。 2.病因抗原の種類と組織分布の結果と臨床像の関連性については、明らかな所見は見いだせなかったが、さらにエンボプラキンやデスモコリン、7型コラーゲンのNC1/2ドメインの免疫ブロットや、これらに対する抗体を用いた、免疫電顕の結果を解析対象にした結果と、臨床上や病型との相互関連性について、さらに今後解析を進めていくことが必要と考えられる。 3.症例数が多く、その情報収集に多くの時間を費やした。詳細な統計解析などについて、未解決な点もあるが、計画以上の数の症例に対し、今後さらに様々な側面からみた検討や、免疫・血清学的検査や、分子生物学的実験的手法による解析も行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.当初の計画に従い、7型コラーゲンのNC1ドメインに対する抗体陽性の症例の患者血清50例以上を集め、免疫ブロット法、ELISA,ELISPOTなどの免疫学的解析法を駆使して、コラーゲン分子上の詳細なエピトープマッピングを行い、ホットスポットの有無や、複数のホットスポットがあれば臨床像と相互に関連性があるかどうかについて検討する。 2.当初は、リコンビナント蛋白にてNC1のフラグメントを2つずつ含むものをつくり、ELISA, 免疫ブロット、ELISPOTを行う計画であったが、さらに詳細にエピトープ配列を明らかにするために、三次元構造やホットスポットをコンピュータシュミレーションし、抗体のターゲットとなるエピトープを多数[3800種類]のペプチドを作成してペプチドマイクロアレイ上で解析し、エピトープの機能の解明や治療への応用などもできるような研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.NC1ドメイン内のフラグメントのリコンビナント蛋白は、海外の研究者から無償提供され、作製の費用が必要なくなった。従って、リコンビナント蛋白発現や精製のための24年度予算の大半を25年度に繰り越し、上記のマイクロアレイを行うことを計画している。 2.本年度分の研究費と次年度分の研究費を併せて、ペプチドマイクロアレイなど最新の解析技術を用いて、抗体価の高い患者血清についての詳細な解析を進めていく予定である。
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