2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝環境相互作用の観点からうつ病の生物学的因子を同定する妊産婦ゲノムコホート研究
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24791210
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
國本 正子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30350135)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 産後うつ病 / DNAメチル化 / 遺伝環境相互作用 |
Research Abstract |
うつ病の遺伝環境相互作用を分子レベルから説明できる答えは未だ提示されていない結果、生物学的な病態を反映した診断検査法がなく、病因・病態に基づく治療戦略を立てることが困難である。したがって、上記の観点から、うつ病に関わる生物学的因子を明らかにし、有効な治療および予防の具体的戦略に繋がる情報を得ることは喫緊の課題である。本課題は、遺伝環境相互作用の観点から、共通の環境因の負荷のもとで抑うつ群および非抑うつ群の確認が可能な、妊産婦コホートの末梢血を出発点としたゲノムコホート研究を行い、産後うつ病の病因・病態に関与する生物学的因子を同定することを目的とする。 平成24年度は、名古屋大学倫理委員会の承認事項に則り、20歳以上の妊産婦を対象とした前向きコホート研究を実施し、1)ELISA法による出産前後における内分泌学的因子の濃度変化測定、2)LINE-1(long interspersed nuclear element) プロモーター領域のメチル化状態の解析によるゲノム不安定化の調査を行い、内分泌学的な変化やゲノム全体のメチル化レベル、およびそれらと妊産婦の気分変動との関連を検証した。 その結果、1)妊娠末期から産後5日目において数種の血中物質が有意に増減することを確認した。そのうちあるストレス関連物質に関して、妊娠期に非抑うつ的であった妊産婦群を対象にした場合のみ、妊娠末期の濃度と気分変動との関連がみられたことから、産褥期の気分変動については妊娠中の精神状態も含めて検討し、産後のマタニティブルーズやうつ病と妊娠中からの継続したうつ状態との混在を防ぐ必要があることが判明した。2)妊娠中と出産後ではゲノム全体のメチル化レベルに有意差があることが判明し、同一被験者における出産前後の経時的なメチル化解析の重要性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、炎症性サイトカインやコルチコステロン、各種ホルモンなどをはじめとする血中物質の濃度変化の解析、および、LINE-1プロモーター領域のメチル化状態解析を行い、内分泌学的な変化やゲノム全体のメチル化レベルと、うつ病との関連を明らかにすることを目標とし、研究を開始した。これらの計画は概ね達成されたことから、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、脳構造の可塑的変化に寄与する可能性のある遺伝子を対象としたゲノムのメチル化状態の解析を行い、うつ病との関連を検証する。具体的には、血液から抽出したゲノムに関して、各種神経成長因子の遺伝子を対象としたゲノムのメチル化状態の解析を行い、抑うつ群と非抑うつ群間で比較する。メチル化の解析はBisulfite pyrosequencing法により行う。まず、プロモーター領域CpG islandの解析から取り組む。解析に際し、QIAGENのPyroMark CpG Assaysを利用し、各遺伝子に最適なアッセイデザインを入手する。この方法により、各遺伝子に対応したデザイン済みのアッセイツールをウェブサイトで入手できるため、解析開始までの時間を短縮することができ、成功率の高いパイロシーケンス解析が可能である。また、必要に応じて、QIAGEN PyroMark Assay Designソフトを使用し、カスタムプライマーを設計し、解析に用いる。平成24年度の結果と合わせ、抑うつ群と非抑うつ群間でメチル化状態に違いの見られる遺伝子を同定する。 以上の戦略により、うつ病に関連する、内分泌学的な変化、ゲノム全体のメチル化レベルの変動、脳構造の可塑的変化に寄与する可能性のある遺伝子のメチル化状態を明らかにする。その結果から、うつ病の病因・病態に関与する生物学的因子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、Bisulfite pyrosequencing法によるメチル化解析に関して、ビオチン標識化プライマー、DNAのバイサルファイト変換試薬、PCR試薬、パイロシーケンス用の試薬、バッファー等の試薬が必要である。またこれらの解析に使用するチップやチューブ、解析用プレートなどのプラスチック器具が必要である。そのため、消耗品の購入費用が大きな割合を占める。また、情報収集や研究成果を発表するための学会参加費用、英文論文の校閲費や投稿費用などにも使用する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Differential effects of diazepam, tandospirone, and paroxetine on plasma brain-derived neurotrophic factor level under mental stress.2012
Author(s)
Tamaji A, Iwamoto K, Kawamura Y, Takahashi M, Ebe K, Kawano N, Kunimoto S, Aleksic B, Noda Y, Ozaki N
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Journal Title
Human Psychopharmacology: Clinical and Experimental
Volume: 27
Pages: 329-333
DOI
Peer Reviewed
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