2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791217
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
杉本 流 長崎大学, 大学病院, 助教 (80404276)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 臨床精神科学 / 臨床遺伝学 / 分子遺伝学 |
Research Abstract |
家系内で複数の精神疾患を有する家系に対象を絞り、その家系内だけの希少変異を同定することで疾患の原因遺伝子を同定しようと計画した。われわれは対象家系を10家系収集する予定であったが、その後に全エキソン解析をすることを考えると、予算上、対象家系を大幅に減じる必要性が出てきた。よって、われわれはより特殊な表現型が一致している家系にのみ対象を絞り、サンプルを収集することを試みた。これらサンプルを用いた全エキソン解析で、家系内の希少変異、そして疾患の原因遺伝子を同定出来ると考えている。 これまで統合失調症において、数多の疾患感受性遺伝子が報告されているが、このように多くの候補遺伝子が同定されるのは疾患集団の表現型が不均一か、または、より根幹の症状だけに絞って疾患集団を同一化させていることに原因があったのではないかと考え、より希少な表現型が一致する家系で全エキソン解析を行うことは、これまでにない画期的な方法であると考えている。 近年、ハンチントン病のような遺伝的神経疾患が、幻覚や妄想などの精神症状を併発するという報告が散見されており、われわれも偶然ではあるが、サンプル収集の際に同様の事象を経験した(T. Nakano et al., 2013)。よって、収集したサンプルがそのような神経疾患ではないかを除外する目的で、プライマーを作成し、事前に研究参加者からの了承を得て、PCR法及び直接シーケンス法にてハンチントン病ではないことを確認した。現時点では、収集した家系はハンチントン病でないことが確認され、これから全エキソン解析に移行する予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画と比較し、やや遅れていると言わざるを得ない一番の原因は、適当なサンプルを収集することに想定外に時間を要したことが挙げられる。限られた予算の中で完全に目標に到達しようとすると、極めてまれな表現型を有する家系に絞る必要があり、この条件に該当する家系を探すことに時間を要した。また、当初から予測していたことであったが、病院に入院、または通院している罹患者であれば協力を要請しやすい状況にあるが、検体採取時に病院に通院していない罹患者や、健常な非罹患者の検体収集は困難を極めた。しかしながら、既に必要なサンプルは入手しており、当初の計画からは遅れてはいるものの、具体的な実験に移る態勢は整っている。前述の通り、まず著明な遺伝的神経疾患(ハンチントン病)を除外する目的でプライマーを作成し、ハンチントン病ではないことを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在収集しているサンプル(DNA)を精製、濃度調整したうえで、全エキソン解析を実施する予定である。この作業自体はそれほど時間を要さないものと思われる。一家系を解析するのに、長くて一ヵ月程度と想定している。問題は、この解析で得られたデータから有用なものを吟味、抽出していく作業であるが、ここに多くの時間をとられるものと想定している。まずは、得られたデータが確実なものか、全エキソン解析とは別の方法、ここでは直接シーケンス法やメルティングカーブ法を用いて行っていく。 この際、全エキソン解析に用いなかった同じ家系の罹患者、非罹患者をすべて使用しての確認を行う。これまでの経験上、全エキソン解析では、heterozygousに限っていえば個人を解析すると一人当たり数百個(およそ400個)の多型登録のない非同義的一塩基置換が同定されることが推定され、サンプルを一人増やして比較するとそれが約半分になる。今回はそれを踏まえて同一家系内で多くの検体を収集したので、ある程度まで候補遺伝子を絞れると期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全エキソン解析は高価なため、なるべく少数のサンプルで行いたいが、前述のように候補が広く残ってしまう可能性があることが経験上分かったため、少なくとも同一家系内の3名もしくは4名で行いたい。この全エキソン解析にかかるSureSelect Human All Exon Kitや試薬類を購入する費用として研究費のほとんどを計上している。それでも候補は一つに絞れないことが予想されるため、同一家系内の他サンプルを用いた直接シーケンスやメルティングカーブ法にかかる試薬購入費用として、その残りを使用する予定である。
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