2012 Fiscal Year Research-status Report
てんかんミュータント由来胚性幹細胞を用いた胎生期てんかん原生の解明と治療への応用
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24791230
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
大津 昌弘 杏林大学, 医学部, 助教 (20510019)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自然発症モデル動物 / ELマウス / てんかん原性獲得 / 胚性幹細胞 / 神経幹細胞 / 海馬神経細胞 / 神経発達異常 |
Research Abstract |
発作原性及び、てんかん原性獲得に関わる中枢神経系の初期発達過程の異常を解明するため、日本で樹立されたヒト側頭葉てんかんの自然発症モデル動物であるELマウスを用いた再現性の高い研究アプローチを突破口とすべく、本研究では以下について平成24年度取り組んできた。 <1.ELマウスから胚性幹細胞(ES 細胞)の樹立と樹立したES細胞の細胞生物学的性質の解析>これまでに、ELマウス由来胚盤胞からES細胞を複数細胞種を単離、培養に成功した。これらの細胞は、一般的なマウス系統であるC57BL/6由来ES細胞と比べて、ES細胞の細胞生物学的諸性質が異なる傾向があることも明らかになりつつある。現在、自己増殖能や多分化能などの性質に加えて、ES細胞マーカー発現の比較解析などの詳細な解析を行っており、本計画中に明らかに出来るものと考えている。 <2.ES細胞から終脳由来神経幹細胞、大脳皮質及び海馬神経細胞への選択的分化誘導>終脳由来神経系細胞の分化誘導法については、分化培養技術であるNeural Stem Sphere法(NSS法)を基に中枢神経系の発生領域特異的な神経幹細胞の調製を試みるとともに単離、樹立した神経幹細胞の培養法の至適条件を検討している。 これらのES細胞培養技術及び、神経系細胞への分化誘導技術は、ELマウスの発作及びてんかん原性獲得に関わる初期神経発達期の異常をin vitroで再現できる可能性を持つものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般的なマウス系統であるC57BL/6由来ES細胞と比べて、ELマウス由来ES細胞の細胞生物学的諸性質が異なることが現在までの結果から示されつつあり、このことが当初の計画で示した研究の進捗に影響したと言えるが、今後新たな知見が得られるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. てんかんミュータントELマウス由来ES細胞の細胞生物学的性質の解析 未分化ES細胞マーカー発現解析についてはアルカリフォスファターゼ活性や未分化ES細胞マーカー(Oct-3/4, Nanog, SSEA-1など)の発現を蛍光染色法等により確認する。また、核型解析は染色体分染法(Gバンド法)を用いて解析する。in vitro 分化能評価については、胚様体形成もしくは、三胚葉由来体細胞への選択的分化誘導法を用いて培養・誘導後、それぞれの細胞系譜に特有のマーカー発現をリアルタイムPCR法もしくは、蛍光染色法等により解析する。 2. 終脳由来大脳皮質及び海馬神経細胞を含む神経系細胞への分化誘導法、維持法の確立とこれら神経系細胞の機能解析及び、機能関連遺伝子の発現解析 神経発生に伴い、中枢神経系は前後軸及び背腹軸に沿って空間的な特異性を獲得するが、この領域特異化は種々の液性因子(Shh, BMPs, Wnts, FGFs, レチノイン酸等)の濃度勾配によって厳密に制御される。大脳皮質及び、海馬神経系細胞を得る為、通常のNSS法(中脳領域を高効率に誘導出来る)をこれらの液性因子を添加する等の改良を行い、終脳領域を効率よく誘導する条件を確立する。誘導した神経幹細胞から機能性神経細胞への分化・成熟化能の解析を分化・成熟化に伴うシナプス関連遺伝子群の遺伝子及びタンパク質レベルでの時間、空間的発現変化を指標に比較解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一般的なマウス系統であるC57BL/6由来ES細胞と比べて、ELマウス由来ES細胞の細胞生物学的諸性質が異なることが、当初の計画で示した研究の進捗に影響したと言えるが、現在の研究状況はおおよそ計画案に沿って進展している。
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