2012 Fiscal Year Research-status Report
アルコール依存症治療薬の可能性としてのNK1受容体拮抗薬が報酬機能に及ぼす効果
Project/Area Number |
24791237
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
池田 裕美子 日本医科大学, 医学部, 助教 (10386154)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルコール依存症 / NK1受容体拮抗薬 |
Research Abstract |
アルコール依存症は深刻な社会問題であるが、その病態機序がまだ明らかになっておらず、根本的な治療法が確立されていない。近年、サブスタンスPの受容体であるニューロキニン1 (NK1) 受容体に対する拮抗薬が、アルコール依存症患者の飲酒渇望を抑制すると報告されており、アルコール依存症の新しい治療薬として期待されている。本研究では、脳内ドパミン系で調節される報酬機能がアルコール依存症患者で障害されていることに着目し、機能的核磁気共鳴画像(fMRI)および陽電子断層撮像(PET)検査によって、健常者およびアルコール依存症患者を対象にNK1受容体拮抗薬の報酬機能に対する効果およびドパミンの動態変化を調べる。本年度は、健常成人を対象にプラセボおよびNK1受容体拮抗薬服用後fMRI検査を行い、報酬課題遂行時の脳活動を調べた。報酬課題は、monetary incentive delay課題を用いた。この課題は、報酬予測時における側坐核の脳活動増加を特徴とする。プラセボ服用では、報酬予測時に側坐核の活動増加が見られ、対照データとして用いるのに妥当な結果を得た。NK1受容体拮抗薬服用では、報酬予測時における側坐核の活動増加が見られなかった。プラセボ服用と比較すると、NK1受容体拮抗薬服用により有意に側坐核の活動が減少していた。過去のfMRI研究では、報酬刺激呈示時における側坐核の脳活動が、少量飲酒者に比べて多量飲酒者で亢進していることが報告されている。アルコールの乱用により、報酬回路の異常興奮が持続し、報酬回路の病的な可塑的変化が依存を形成することが考えられている。本研究の結果より、アルコール依存症でみられる脳活動の亢進を抑制することが予想され、NK1受容体拮抗薬が報酬機能に作用するアルコール依存症治療薬としての可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、fMRIを用いてNK1受容体拮抗薬の報酬機能に対する効果を測定する手法を確立し、健常者におけるデータを得ることができた。この手法と同じプロトコール用いて、患者を対象にした検査を行うことが可能だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
健常者で確立したfMRI検査を用いて、今年度はアルコール依存症患者を対象にして検査を行う。健常者と比較して患者で有意に脳活動が異なる領域を検出する。また、患者で検出された脳活動に対するNK1受容体拮抗薬の効果を捉える。 本研究はアルコール依存症患者を対象するため、被験者のリクルートがうまく進まない状況が考えられる。患者のリクルートが進まない場合、健常者の中から多量飲酒者群を設定して検査を行う。多量飲酒者はアルコール依存症のハイリスク群であり、発症前におけるドパミン神経系の報酬機能について検討することができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品では、被験者が服用する薬物、MRI検査および採血時に使用する検査用品、MRIデータを保存するデータメディアに使用する。 謝金として、検査に参加した被験者に対して負担軽減費を支払う。 旅費では、成果発表を行う国内外の学会費用に使用する。
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