2013 Fiscal Year Research-status Report
アルコール依存症治療薬の可能性としてのNK1受容体拮抗薬が報酬機能に及ぼす効果
Project/Area Number |
24791237
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
池田 裕美子 日本医科大学, 医学部, 助教 (10386154)
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Keywords | アルコール依存症 / NK1受容体拮抗薬 |
Research Abstract |
アルコール依存症は深刻な社会問題であるが、その病態機序がまだ明らかになっておらず、根本的な治療法が確立されていない。近年、サブスタンスPの受容体であるタキキニンNK1受容体に対する拮抗薬が、アルコール依存症患者の飲酒渇望を抑制すると報告されており、アルコール依存症の新しい治療薬として期待されている。本研究では、脳内ドパミン系で調節される報酬機能がアルコール依存症患者で障害されていることに着目し、機能的核磁気共鳴画像(fMRI)および陽電子断層画像(PET)検査によって、健常者およびアルコール依存症患者を対象にNK1受容体拮抗薬の報酬機能に対する効果およびドパミンの動態変化を調べる。昨年度は、健常成人を対象にプラセボおよびNK1受容体拮抗薬服用後にfMRI検査を行い、報酬課題遂行時の脳活動を調べた。プラセボ服用と比較すると、NK1受容体拮抗薬服用により報酬予測時の側坐核の活動が有意に減少していた。今年度は、健常者と比較してアルコール依存症患者で有意に脳活動が異なる領域を検出する予定であったが、患者のリクルートが困難であったため、患者の代わりにアルコール依存症の高リスク群である多量飲酒者を対象とし、さらに対照を少量飲酒者に変更して検査を開始した。未服薬において、少量飲酒者と比較して多量飲酒者の報酬予測時における側坐核の脳活動は増加している傾向がみられた。過去の研究では、側坐核における報酬予測時の脳活動とドパミン放出量が相関していることが報告されているため、本研究の結果より多量飲酒者の側坐核におけるドパミン放出量が増加している可能性がある。本研究の結果より、アルコールの過剰使用による側坐核の興奮が、アルコール依存への形成に関与する可能性が示唆された。今後、NK1受容体拮抗薬の服薬実験を行い、多量飲酒者の報酬機能に対する薬物の効果およびその効果に伴うドパミンの影響について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被験者および課題の条件検討に時間を費やしたため。多量飲酒者および飲酒量以外の条件が一致した少量飲酒者のリクルートは順調であるため、今後は計画通りに研究が進行すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、未服薬における少量飲酒者および多量飲酒者の報酬課題遂行時の脳活動を調べているが、まだ少数例であり、例数を集めているところである。多量飲酒者の依存症状にばらつきがみられることから、症状と脳活動変化および薬物による影響との関連性を調べることで、アルコール依存への形成過程における報酬回路機能が明らかになる可能性があると考えられる。
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