2012 Fiscal Year Research-status Report
うつ病におけるSSRI治療効果の解明に向けた脳内セロトニン放出量のPET測定
Project/Area Number |
24791250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
生駒 洋子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 主任研究員 (60339687)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 放射線 |
Research Abstract |
うつ病の治療に有効とされているSSRIの作用機序として、前シナプスからのセロトニン放出量の増加が示唆されている。PETを用いた脳機能イメージングでは、前シナプスからの神経伝達物質放出量の増減を、後シナプス受容体の放射性リガンド結合能の変化として捉えることができる。そこで本研究では、精度の高いセロトニン放出量のPET測定法を確立することを目的とする。 平成24年度は、前シナプスからの神経伝達物質放出量の増減によって起こる後シナプス受容体の放射性リガンド結合量の変化を、PETで測定するための定量解析法を考案し、シミュレーションを行って、その妥当性を評価した。まず、前シナプスから放出された神経伝達物質と、投与された放射性リガンドとの競合を組み入れた受容体結合の数学モデル式を算出した。次に、神経伝達物質放出量と受容体結合能変化の関係を調べるためのシミュレーションソフトを作製し、実測の神経伝達物質放出量の変化を模擬したシミュレーションを行った。その結果、神経伝達物質の放出量の増加に伴って受容体結合能が減少し、PET時間放射能曲線から算出された受容体結合能の変化量は、PET測定中に放出された神経伝達物質の積分値と相関することが分かった。 本シミュレーション手法を用いることで、次年度以降に行われるセロトニン測定用放射性リガンドを用いた実際のPET測定において、セロトニン放出量と受容体結合能変化の関係を調べることができ、PETを用いたセロトニン放出量の測定法の確立に役立つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、PETによるセロトニン放出量測定のための定量解析法を考案し、シミュレーションを行って、提案手法の有用性を評価することを予定していた。現在までに、定量解析法の考案、シミュレーションに必要なソフトウェアの作製までは完了しており、実測データが揃えば、セロトニン放出による受容体結合能の変化を評価することが可能である。次年度以降の実測データの収集に向け、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、まず、PET画像の解析において定量精度劣化の大きな要因となっている検査中の頭部の動きを、測定後の画像処理によって補正する手法を確立する。次に、セロトニン受容体測定用のPETリガンドを小動物に投与し、提案手法を用いて、セロトニン受容体結合能の定量を行う。さらに、測定データを基にシミュレーションを行い、セロトニン放出量変化の測定精度を検討し、セロトニン放出量のPET測定法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は、数値計算用、画像処理用ソフトウェアおよびハードウェアの購入を予定していたが、平成24年度はシミュレーションのみを行い、実測データの収集は行わなかったため、これらのソフトウェアおよびハードウェアの必要性は低かった。次年度において、最新版の数値計算用ソフトウェアおよびハードウェアの購入に充てる予定である。
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