2012 Fiscal Year Research-status Report
分子生物学的手法を用いた乳癌テーラーメード高精度放射線治療の実現に向けた研究
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24791259
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木下 留美子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70507582)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線腫瘍学 / 乳房温存療法 / 陽子線治療 |
Research Abstract |
1988年1月から2008年12月の20年間に北海道大学病院第一外科で乳房温存術を施行し、温存乳房に対し術後照射を行った約400症例の中で、局所再発を来した20症例中19例について、手術時の検体から、未染色標本を切り出し、HER2,EGFR,AMAP1,GEP100の免疫染色を行った。各々の免疫染色標本を2人の病理専門医が独立して評価しスコア化を行った。年齢、リンパ節転移の有無といった従来局所再発と関係があると考えられてきた臨床データと再発時期の相関関係及び免疫染色の結果と再発時期の相関関係について統計解析を行った。 初期解析の結果を第54回米国放射線腫瘍学会(2012年10月28ー31日 ボストン)で示説展示発表を行った。更に統計解析を加えた結果、AMAP1とGEP100がともに発現していると早期に再発する事が示された。一方、従来、局所再発のリスク因子として知られてきた年齢、手術時の断端状況は再発時期と有意な関係は認められなかった。現在この結果を英文学術誌に投稿中である。 これまでMamma Print等の遺伝子解析によって遠隔転移のリスク因子が明らかになってきたが、局所因子のマーカーは確立されていなかった。今回、AMAP1とGEP100の発現が早期再発に関わる事が示されたことによって、これらのマーカーが局所再発そのものに関わっている可能性が示唆された。局所再発そのものに関連がある事が示されると治療前に局所再発リスクの診断が可能となり、治療法に影響を与える可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再発例について免疫組織標本の作成・評価更に解析は終了し、早期再発因子の特定が出来た。この結果を学術論文に投稿中であり、再発例については予定通り進行している。 非再発例については免疫染色の解析に時間がかかり、解析にいたっておらず、遅れている。 全体としてみるとやや遅れているという自己評価となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、再発リスクに応じた適切な照射野・線量分割を考案する。具体的には局所再発リスクの低い症例に対しては手術床に絞った照射野を作成する。この場合従来のX線治療の場合、照射野を限局させる為には多方向からのBeamを使用し、線量集中度を高めてきたが、周囲の肺や心臓といった正常組織への低線量の被曝が問題となってきた。平成26年春に当院で導入予定の陽子線治療は、停止する直前にエネルギーの大半を放出する為、ターゲットに対して効率良く線量を集中させる事が可能であり、正常組織の被曝低減が期待される。ファントムを用いた線量分布図作成、実際の症例に対する線量分布図作成を行い、ターゲットや肺・心臓といった正常組織の線量を評価し、適切な照射方法・線量分割を考案する。再発リスクの高い症例に対しては,乳房のみでなく周囲リンパ節領域を含めた照射野を検討する。形状が複雑で体表面からの距離が様々であるため、従来のX線や電子線ではつなぎ目が出来る等十分な線量投与が難しい照射野であるが、陽子線治療を用いる事で、周囲組織への被曝の低減とターゲットへの十分な線量投与を目指す。 非再発例の解析については引き続き継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費のうち試薬の購入が研究の進み具合に応じて25年度にずれ込んだこと、円高で旅費が予定よりも安く済んだことがあげられる。 試薬の購入、論文投稿費用にあてる。
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Research Products
(1 results)