2012 Fiscal Year Research-status Report
小動物SPECT/CTを用いたヨウ素123標識ラクトソーム腫瘍イメージングの開発
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24791298
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 研輔 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90531997)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノキャリア / ミセル / SPECT / EPR効果 / 腫瘍イメージング / 転移モデル |
Research Abstract |
ラクトソームの放射性ヨウ素(I-131/I-123/I-125)標識については従来のAB型同様、SIBを用いる方法でA3B型ラクトソームの合成技術を確立した。粒子表面の親水鎖密度向上によりABC現象に伴うIgM産生の半減が確認できた。I-125標識A3B型ラクトソームを用いたBiodistributionでは血中半減期がAB型の16.5時間に対し4.3時間と短縮されたが、腫瘍集積量はAB型の約5%Dose/g対しA3B型は約1%Dose/gと減少していた。I-123標識A3B型ラクトソームを用いた大腿部皮下腫瘍マウスでの小動物SPECTイメージング実験では12時間後に良好な腫瘍描出を認め、18時間後に消褪した。しかし甲状腺や肝臓への集積亢進を認め、ラクトソームそのものの安定性に課題に残す結果となった。 このため核種を変えIn-111で標識するA3B型ラクトソームの合成を検討し、In-111吸着A3B型ラクトソームやIn-111-DOTA標識A3B型ラクトソームの合成方法を確立した。また大腿部皮下腫瘍マウスを用いた小動物SPECT/CTイメージング実験やBiodistributionを行った。In-111吸着A3B型ラクトソームでは腎排泄が早く、遊離したInイオンの影響が強く認められた。In-111-DOTA標識A3B型ラクトソームでは良好な腫瘍描出を認めたものの、肝臓、脾臓への強集積を認めた。この原因についてはまだ突き止められていない。 また、マウスに対するラクトソームの大量投与による毒性試験(2,000mg/kg(40mg/body))を行ったが、腹腔内投与、静脈投与ともに死亡例や有意な体重減少は認めなかった。 最後に各種腫瘍モデルの安定的な作成とともに、マウスに対して定期的な頻回採血によって血清を採取できる方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
A3B型ラクトソームはAB型ラクトソームに比べて小径で、より血中クリアランスや腫瘍への集積が早く、さらにはABC現象を半減させるという長所を有しているが、その体内安定性にやや問題があり、合成方法の確立に苦労した。また、腫瘍への集積はAB型に比べてやや弱いものであった。そこで比放射能や収率を高めるべく、In-111標識A3B型ラクトソームの合成を始めたが合成方法の確立に時間を費やした。 In-111吸着で安定した粒子作成に成功したため、これを用いた小動物SPECT/CT実験により研究が進むかに見えたが、遊離したIn-111の影響が強く、腫瘍イメージングには適さない結果となった。そこでIn-111-DOTA標識ラクトソームの合成に着手した。 さらには京都大学放射性同位元素総合センターの導入したての小動物SPECT/CT機に故障があり、その修理メンテナンスのために実験できない期間があったため、十分な回数の小動物SPECT/CT実験を行うことができず、本格的にできるようになったのは平成24年末からであった。但し現状では、In-111-DOTA標識のA3B型ラクトソームの小動物SPECT/CT実験がスムーズに行えており、平成25年度はさらに研究が進むものと期待される。 あと、平成25年1月より、京都大学のSPF動物実験施設において当該飼育室で他研究グループによるトリコモナス汚染があり、これにより実験内容と飼育できる数に制限が生じている。感染の危険性から長期飼育が難しくなっており、単回、あるいは2回投与によるABC現象実験は行えているものの、ABC現象回避を研究する頻回投与モデルでの実験においてはその中断を余儀なくされ、汚染問題の解決を待っている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはIn-111-DOTA標識A3B型ラクトソームを用いた小動物SPECT/CT実験にて、腫瘍描出能と生理学的分布を確認、評価する。一方でA3B型ラクトソームの合成技術やミセルそのものの安定化対策自体は徐々に改善されてきているため、In-111-DOTA標識でのイメージングが難しいようであればI-123標識A3B型ラクトソームに戻す可能性も検討していく。 いずれにせよ小動物SPECT/CT実験やBiodistributionを繰り返すことで、麻酔法やマウスの固定法、投与量、投与時間、画像収集時間等の条件をより最適化していく予定である。 次に、ABC現象については今後の臨床応用に向けて、頻回投与モデルによる実験の早期再開が望まれる。マウスに対して定期的な頻回採血によって血清を採取できる方法を確立したため、実験室の汚染問題が解決次第、早急に再開する予定である。頻回投与でありながらもABC現象の減弱により、急性炎症や腫瘍への集積強度が保たれることが確認できれば、ラクトソームの診断・治療プローブへの応用実現が現実味を帯びてくると思われる。 最後に、京大病院臨床研究総合センター(旧探索医療センター)の菅井講師と協力して、ABC現象の機序解明について共同研究を進めている、ABC現象には腹水中のB1a細胞の関与が示唆されており、今後もABC現象の機序解明やその回避抑制策について情報交換を進めていく予定である。その抑制法次第では、ABC現象を起こしやすいものの、より合成方法が容易で腫瘍への集積が強い、従来のAB型ラクトソームの応用も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
In-111-DOTA標識A3B型ラクトソーム等を用いた小動物SPECT/CT実験の回数を増やす必要があるため、これに使用するマウス、細胞培養、ラクトソーム薬剤、RI標識、SPECT/CTイメージング及びその解析に研究費を用いる予定である。また、平成24年度では頻回投与によるABC現象の再現実験が中断を余儀なくされたが、実験が再開でき次第、これを進めていく予定であり、より多くのマウスや細胞培養、ラクトソーム薬剤、各種実験器具が必要になることが予想される。これに対しても研究費を用いていく予定である。さらに、本研究の成果は適宜、学術論文として学術誌に投稿し公表する予定であり、それに対しても研究費の使用を検討している。
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