2012 Fiscal Year Research-status Report
ピクテスぺングラー反応により導入した短寿命PETペプチドプローブの合成と評価
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24791357
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
破入 正行 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (80435552)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | PET / ピクテスペングラー反応 / 遠隔合成装置 / オリゴペプチド |
Research Abstract |
今年度は炭素11ホルムアルデヒドを用いたピクテスペングラー反応によって標識化されたTrp誘導体および標識部位としてTrp塩酸塩を含むオリゴペプチドの合成と標識反応、そして標識化したペプチドを用いた胆癌マウスによる評価を行った。 炭素11ホルムアルデヒドはすでに報告されている方法を用いて調製を行い、種々のTrp塩酸塩誘導体との間のピクテスペングラー反応を検討した。芳香環部位に電子供与基を有するTrp誘導体は標識反応が進行したのに対して電子吸引基を有するTrp誘導体は標識反応が全く進行しなかった。エチルエステル、アミドおよびN-メチル基を有するTrp誘導体は中程度の収率で標識反応が進行することも併せて確認した。以上の結果、Trp塩酸塩を含むオリゴペプチドへの標識反応が可能であることが示された。次に標識反応のモデルペプチドとして、環状RGDペプチドの一つcyclo(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Lys)を用いた。Lys側鎖のアミノ基にTrpを導入したcyclo(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Lys[Trp])塩酸塩を合成した。次に標識反応を手合成にて検討を行い、標識されたペプチドcyclo(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Lys[(1-11C)Tpi])を得ることに成功した。さらに遠隔合成装置を用いた合成検討を行ったところ、合成時間の平均が35分、合成終了時の収率が5.9 ± 1.9% (n=4)、比放射能が85.7 ± 9.4 GBq/μmolであった。また、膵がん細胞の一つであるBxPC3細胞を用いた胆癌マウスでのPET撮像を行ったところ、標識ペプチドは癌細胞に集積したことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) [11C]ホルムアルデヒドを用いたピクテスペングラー反応による標識反応 種々のTrp塩酸塩誘導体をもちいた[11C]ホルムアルデヒドとの間のピクテスペングラー反応による標識反応は芳香環の電子密度が反応の進行に重要であることを明らかにした。またTrp塩酸塩を含むペプチドはTrp-Asp-Gly-Glu-Ala、cyclo(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Lys[Trp])、Trp-Lys-Thr-Leu-Leu-Pro-Thr-Pro-Gly-Glyの3種類を合成し、標識反応を行った。いずれのペプチドも標識反応に成功した。またアミノ酸側鎖の官能基は無保護でも標識反応が進行することも明らかとなった。膵がん細胞の一つであるBxPC3細胞およびMIAPaca2を用いた胆癌マウスでのPET撮像をcyclo(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Lys[(1-11C)Tpi])で行ったところ、ペプチドはBxPC3細胞への集積したのに対してMIAPaca2細胞への集積はほとんどしないことを確認した。この差異は細胞膜上のインテグリンの発現量の違いに起因する考えられる。 (2) 4-[18F]ベンズアルデヒドを用いたピクテスペングラー反応による標識反応 Trpと4-[18F]ベンズアルデヒドを用いたピクテスペングラー反応を検討した。[18F]ベンズアルデヒドの合成はF-F交換反応および4-ニトロベンズアルデヒドを用いて調製した。結果として、Trpとの間のピクテスペングラー反応は進行しなかった。これは芳香族アルデヒドとアミンの間でイミン形成をするが、そのイミンが安定であるためそれ以上反応が進行しないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) [11C]ホルムアルデヒドを用いたピクテスペングラー反応による標識反応 モデルペプチドである環状RGDペプチドの標識に成功し、癌細胞への集積も確認された。さらに違う種類の環状RGDおよび環状RADを標識して生体内での挙動を明らかにする。また標識するペプチドとして新たにN末端およびC末端にTrp塩酸塩を含むiRGDペプチド(Cys-Arg-Gly-Asp-Lys-Gly-Pro-Asp-Cys-NH2)の合成、標識反応およびPET撮像を検討する。iRGDペプチドの取り込み機序はまだ明らかになっておらず、この標識方法を用いて生体内での挙動を明らかにする。 (2) [18F]を有するアルデヒドを用いたピクテスペングラー反応による標識反応 報告されている[18F]アセトアルデヒドの製法を行いTrp塩酸塩誘導体との間のピクテスペングラー反応を検討する。またブロモアセトアセタールを用いた[18F]標識反応、ついで酸加水分解によるアルデヒド生成反応を用いた方法も併せて検討を行う。これらの検討を行うことで遠隔装置に最適な[18F]アセトアルデヒドの調製方法を見出す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回、消耗品が予想より使用していないもかかわらず研究が円滑に進めた。今年度はより難しいペプチド合成のためより純度がよい試薬を購入するのに使用する。また成果報告を海外で行う。
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