2012 Fiscal Year Research-status Report
アミロイドイメージングによる認知症診療への早期診断応用と費用対効果に関する研究
Project/Area Number |
24791363
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
伊藤 公輝 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 病院放射線診療部, 医師 (40602074)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 該当なし |
Research Abstract |
平成24前年度では約70症例でPiB PETが施行できた。これらのデータの結果から、本研究の母集団のPiB PET陽性率を40-50%と算出した。また、一般的な臨床の診断基準であるNINCD-ADRAD(1984)でprobable ADと診断された患者の約3分の1の症例でPiB PETが陰性であった。現行までの報告と当院の患者群が認知症患者及び軽度認知機能障害患者で占められていることを考慮し、PiBの感度を100%と暫定的に見積もると、probable ADと診断された約30%の症例ではNINCD-ADRAD(1984)にて診断できていない可能性が示唆された。また、NINCD-ADRAD(1984)でnonADとされた患者の約3分の2の症例はPiB陰性であり、アルツハイマー型認知症が否定できた。この結果より日常診療での診断基準と研究的なPiB PETを使用した診断基準では約20-30%程度の乖離が存在する可能性がある。この数値は近年、欧米などより報告されている臨床の診断変化率(約30%)とほぼ同等である。これまでの結果から、本邦でのPiB PETの臨床に与える認知症診断へのインパクトは欧米とそれとほぼ同等の可能性が示唆される。 研究当初の問題点として、患者リクルートが不定期であり、診療側(日常診療検査との兼ね合いや担当医の変更)や患者、代諾者などの要因(特に検査日程の都合)により症例の無作為化や選抜が当初の予想より難しくなっていた。このため、臨床側や患者の要求に即して、MRI、SPECTに引き続きPETを行うプロトールを変更した。この変更により、無作為化は困難になったが、より日常診療に即した実践的な研究内容となったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24前年度では約70症例でPiB PETが施行できた。平成24年度の症例においてPiB PETによる有害事象は認めなかった。目標症例数は100例であるため症例の到達度は約70%である。実際の解析から論文投稿等までを勘案すると、現行では目標達成まで約40-50%程度と見積もられる。現時点の解析結果においては、先に述べたとおりPiB PETに関しては有用性が示唆されている。 今回、本年度で予定数より多くの症例を集めることができた。しかしながら、研究開始時の問題点として、患者リクルートが不定期であり、2年以内の研究終了が困難であると考えられた。この診療側(日常診療検査との兼ね合いや担当医の変更)や患者、代諾者などの要因(特に検査日程の都合)に対し現実的な対応を行い、プロトコールを一部変更した。 この変更により無作為化を中止し、臨床側や患者の要求に即して除外項目の一部を緩和することとした。また、検査の順番をMRI、SPECTに引き続きPETを行う様に変更を行った。これら患者や臨床側の実現可能性を高めるため無作為化は困難になったが、より本邦の日常診療に即した実践的な研究になったと考えられる。結果的に、現在まで多くの被験者を集めることができている。 また、PiB PETの症例報告を一報、国際雑誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では症例を約100例まで増やし、更なるエビデンスの蓄積をはかる。今後はPiB PET陰性患者においてアルツハイマー病を除外できるという長所を生かし、今回陰性だった症例に関する臨床診断とPiB PETの乖離の原因を調査する。また今回の患者群において、その後の薬剤使用の変更や日常生活のADLの予測などに重要な情報を与える可能性があり、臨床判断の変更や経過観察を行う。また、PiBを施行した事による診療への影響を治療担当医より聞き取り、PiBの具体的な有用性、並びに問題点の発生を代表者会議にて集約する。また、同時並行で臨床への影響と有用性に関する論文化を行う。そして、本研究の最終的な目標である費用に関する検討のため、前年の保険診療に係った費用とPiB PETを加えることによって省略できうる検査を、研究協力者と検討する。 PiB PETの安全性に関しては、これまでの報告などから問題ないと考えられる。平成24年度終了の時点で被験者に有害事象が起きていないことが確認されており、安全性の評価も確かめられたと考えられる。しかしながら、引き続き研究代表者とリクルートを行う研究協力者とで連絡会を開き、予期せぬ有害事象の確認を一定数の症例毎に検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現状では臨床研究保険などに関する出費などが大半であり、物品費は当初想定されたより少ない金額での運用が見込まれる。今年度はデータ収集に徹したため、人件費や旅費に関する出費は当初の予想より下回った。しかしながら、雑紙などの投稿による英文校正などでの出費が多く、また昨今の円安などの影響もあり、海外から購入できる材料費や雑誌掲載料などの値上がりが予想される。 また、データ管理に関して既存の解析用PCやハードディスクを既存の物品で使用していたが、ソフトウェアのバージョンアップによる更新やメモリ容量が足りなくなってきたため次年度に新たな購入が必要となる。このため、解析用PCや海外購入物品、論文投稿にかかる費用の増加が見込まれ、今年度繰り越し分も含め物品費にかける費用の増加が見込まれる。 この他、データが蓄積してきたため、データ整理及び心理検査補充のため、研究補助員および臨床心理士を雇い入れる。これら研究補助員の雇用費用には、本年度繰り越し分を合わせた人件費を充てる予定である。
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Research Products
(1 results)