2012 Fiscal Year Research-status Report
乳癌におけるゲノム不安定性を利用した新規診断法・治療法の開発
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24791382
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
及川 将弘 長崎大学, 産学官連携戦略本部, 助教 (90612416)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 乳癌 / ゲノム不安定性 / アレイCGH / 乳腺腫瘍 / 診断 |
Research Abstract |
本年度は試料の収集が想定以上に進み、来年度で予定していた2), 3)の研究項目についても前倒しして行うことにした。 1) HR陽性/HER2陰性乳癌の臨床病理学的検討を行い、その特徴を全国学会で報告した。また、多数のFFPE標本からDNAを抽出してアレイCGH解析を行なう過程で、アレイCGH解析における品質予測因子を同定した。全国学会・国際学会にて発表し、成果は学術雑誌に掲載予定である。この知見により、困難とされるFFPE標本を用いたaCGHについての品質管理が可能となり、膨大なアーカイブを活用可能となる。 2)GINを指標にした乳腺腫瘍の新規診断法(FNAC-aCGH法)についての検討を行った(前向き観察研究)。FNAC-aCGHにおけるプロファイルと主腫瘍からのものの比較では、コピー数一致領域は平均 97.0% (100-93.1%) と高率であった。また、悪性腫瘍は良性腫瘍と比べてコピー数変化領域が有意に大きく、高いGINを示した(13.0% vs 3.4%, P=0.005)。成果は全国学会にて報告し、学術雑誌に投稿中である。本手法により、診断困難な乳腺腫瘍においても非侵襲的な良悪性鑑別の可能性が示唆された。 3)Subtypeの異なる乳癌細胞株(MCF7, MDA-MB436, MDA-MB468)においてGINをターゲットとした合成致死を評価すべく、OlaparibとGimeracilの相乗効果を検討した。GINの高いMDA-MB436 (TN, BRCA1 mut+)ではOlaparibのみで増殖抑制を認め、MDA-MB468 (TN, p53 mut+)では併用において増殖抑制を認めた。MCF7では併用においても増殖抑制は認めなかった。今回の結果より、GINを標的とした治療法を開発すれば、副作用が少なく、癌にのみ効果のある治療となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全体的に、想定以上の進捗状況である。外来および手術症例の増加により試料の収集が予想以上に進んだこと、研究費の前倒しによりマイクロアレイ等の実験器具を揃えることができたことが原因に挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) HR陽性/HER陰性乳癌における再発リスクとGINの関係をアレイCGHにより定量化してきたが、多数サンプルでこの検討を行うことはリソース的に難しく、臨床応用への障害となる。よって、GINの定量解析において、アレイCGHに替わる、より安価・簡便なsurrogate markerの探索を行う予定である。 2) 既に予定の20症例についての検討が終了し、成果を学術雑誌に投稿中である。 3) 乳癌細胞株をサブタイプ別に分類し、本年度使用した3つの株以外の細胞株についての検討を行いたい。また、乳癌細胞株をヌードマウスに移植し、PARP阻害剤または/およびGimeracilを腹腔内投与する。マウスの生存、腫瘍径、腫瘍重量、肺転移個数等を調べることにより、DNA修復酵素阻害剤のin vivoでの乳癌増殖抑制効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1) GINのsurrogateとして我々が注目しているmarkerは、Ki67とTP53の共発現である。Ki67は増殖期に入っている細胞の核に発現する増殖マーカーであり、TP53はゲノムの安定性維持に係る癌抑制遺伝子 p53の産物である。この二つのタンパクが同一細胞で共発現している場合、ゲノムの安定性維持機構の破綻が明らかであり、その細胞のGINは高いと考えられる。アレイCGH解析を行った症例について、Ki67/TP53の蛍光二重染色との相関を明らかにし、surrogate markerとしての可能性を探る。よって、蛍光免染に関する器材が必要となる。 2) 英文校正、雑誌掲載に関する費用が必要となる。 3) 細胞培養に関する器材と動物実験に関する器材に使用予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 乳癌FFPE標本を用いたアレイCGH解析の精度管理2012
Author(s)
及川 将弘(長崎大学 大学院腫瘍外科), 中尾 健次郎, 柴田 健一郎, 松本 恵, 矢野 洋, 木下 直江, 安倍 邦子, 林 徳真吉, 蔵重 智美, 三浦 史郎, 中島 正洋, 永安 武
Organizer
第20回日本乳癌学会総会
Place of Presentation
熊本市
Year and Date
20120628-20120630
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