2012 Fiscal Year Research-status Report
患者自身の皮下で簡便に作成できる自己の結合組織からなる小口径代用血管の開発
Project/Area Number |
24791389
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
山南 将志 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (30438204)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生体内組織形成技術 / 小口径代用血管 / 組織工学 |
Research Abstract |
生体内組織形成技術を用いた小口径代用血管の開発を行った。実験動物皮下にシリコーン円柱基材を4週間埋入すると基材周囲に自己結合組織からなるカプセルが形成された。カプセル組織を摘出し、内部のシリコーン基材を抜去すると自己組織からなる結合組織管(BIOTUBE)が得られた。BIOTUBEを小口径代用血管として以下の動物移植実験を行った。 1)ラット腹部大動脈への移植実験:内径1.5mm、長さ15mmのBIOTUBEを作製し、ラット腹部大動脈へ移植した。血流を再開させるとBIOTUBEの拍動は良好で、瘤化を認めなかった。移植後1ヵ月後にMRIにてグラフト開存性を評価したが、良好に開存しており、BIOTUBEの瘤化や狭窄を認めなかった。現在最長で移植後9ヵ月経過しているが、ラットは生存しており、術後1年以上の長期経過を観察し、評価を行う予定である。 2)ラット腹部大動脈BIOTUBE移植後早期の組織学的変化の検討:ラット腹部大動脈に上記同様にBIOTUBEを移植した。術後4週後に摘出し組織学的変化を観察したところ、吻合部よりグラフト中央部に向かってエラスチンを含む血管中膜様組織が形成されており、グラフト全体の約8割がこの中膜様組織により裏打ちされていた。今後移植後6週、8週などの期間でも組織学的変化を評価する予定である。 3)ビーグル犬でのin situ大腿-膝窩動脈バイパス:内径3mm、長さ10cmのシリコーン円柱基材をビーグル鼡径部から膝窩部の皮下に埋入、1ヵ月後に基材の両端部分のみの剥離を行い、シリコーン円柱を抜去、BIOTUBEの大部分を皮下に残したまま、BIOTUBE両端をそれそれ大腿動脈、膝窩動脈に吻合するというin situ大腿-膝窩動脈バイパスを行った。現在移植後早期実験のみを行っているが、低侵襲手技としてのin situバイパスが可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BIOTUBEの長期移植動物モデルの作製することにより、BIOTUBEの開存性、組織学的変化などの評価を行うことを目標の一つとしているが、移植方法を工夫することにより、ラット腹部大動脈移植モデルの作製においてはほぼ確実に行えるようになった。移植後の開存性もMRIや超音波検査にて定期的に行っているが、開存性は極めて良好である。動物移植モデルが確実に作製できるようになったことにより、BIOTUBE移植後長期での組織学的変化や耐圧性変化などの評価も確実に行えることが期待できる。 また、臨床応用を目指した低侵襲バイパスの可能性を検討することも目標としており、これについてもビーグル犬を用いた実験でin situ大腿-膝窩動脈バイパスモデルを作製することに成功している。移植手技法の確立のため現在は移植後短期での評価のみを行っているが、移植手技が確立すれば移植後長期の評価も行っていく予定である。 しかし、「BIOTUBEの保存臓器としての応用の可能性」の検討についてはまだ施行できておらず、BIOTUBEを凍結や固定、乾燥などにより保存生体材料として使用し得るかどうかについての検討を25年度に行う予定である。 以上から研究目的の達成度についてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
BIOTUBE移植モデル作製がほぼ確実に行えるようになったことにより、今後も移植モデルをできるだけ行い、移植後のBIOTUBEの組織学的変化を経時的に行い、血管壁再構築が起こる過程を検討し、BIOTUBEの有用性を証明していく。 また、臨床応用に向けてのin situバイパスの手技を確立し、移植後長期モデルの作製を目指す。 さらに、BIOTUBEが保存生体材料としても使用可能かどうかの検討を行う。作製したBIOTUBEを凍結、固定、乾燥などの方法により数ヶ月保存した上で、自家移植または同種移植を行い保存臓器としての応用の可能性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
BIOTUBEの作製、移植実験に必要な動物実験施設や移植後の形態評価のための血管造影施設などはすでに整っており、主に実験動物の購入、飼育費用や動物実験時の麻酔薬などの薬品、血管縫合糸やガーゼ、シーツなどの手術消耗品の購入に研究費を使用する。 また、本研究の成果を国内外での学会で発表するための旅費にも研究費を使用する予定である。 研究代表者が病気のため平成24年12月より平成25年3月まで手術、入院加療および自宅療養を行った。このため一時的に研究を停止せざるを得ず、翌年度に繰り越す研究費を生じてしまったが、平成25年4月より再び研究に復帰予定であり上記のように研究費を使用する予定である。
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