2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト間葉系幹細胞注入による乳房再建法の実現化に向けた基礎的エビデンスの創出
Project/Area Number |
24791392
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
関 朋子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70528900)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 乳房再建 / 細胞移植 / 生体医工学 |
Research Abstract |
本研究目的はヒト間葉系幹細胞を用い、生着基盤として生体吸収性ハイドロジェルを加えること、更にマウスの乳房原基とされるMammary Fat Padの部分切除という具体性の高いモデルを使用することによって、細胞移植の安全性・注入後の動態を明らかにし、新しい幹細胞移植による乳房再建法を具現化する基礎的エビデンスの創出を目指すものである。 平成24年度研究計画として「生体吸収性ハイドロジェルを用いたヒト間葉系幹細胞の培養と移植条件の最適化」のため、移植後生体内で局所に安定して幹細胞を生着させるため、京都大学田畑教授から提供された主にゼラチンで作成され約2週間で生体内に吸収される性質を持つハイドロジェルに、間葉系幹細胞を固着させ、評価を行ってきた。具体的には病理組織学的評価・電子顕微鏡、及び遺伝子発現によって、ハイドロジェル内で間葉系幹細胞が安定して固着していることを2週間まで経時的に確認した。次に、細胞移植後に間葉系幹細胞の一部が脂肪細胞へ分化誘導されるかどうか、遺伝子解析および免疫組織学的解析によって評価を行った。これらの結果から、細胞がジェル内部に生着し、安定して乳腺欠損部への移植が可能であること、また少なくとも2週間以上は安定して生体内で生存することが示された。しかしながらヒト細胞を移植するために、免疫抑制マウスを用いたことが原因と考えられる組織反応の遅延から、ハイドロジェルの生体内での吸収が不良で、1ヶ月を経ても吸収されずに乳腺欠損部に残ってしまうため、予定した評価が一部困難となり、細胞の有無によって明確な差を示すことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で示したように、間葉系幹細胞をハイドロジェルと共に免疫不全マウスモデルに移植した場合の1ヶ月に渡る長期的な評価は、病理組織学的、遺伝子解析によって行うことができた。当初計画の生体内での細胞の分化傾向についても脂肪関連遺伝子の解析によって一部行った。しかしながら、約1週間で生体内吸収を受けるはずのハイドロジェルが、生体内で1ヶ月経過しても残存しており、細胞を用いる意義を評価を妨げる原因となってしまい、当初予定した細胞移植の効果の有無を評価すること、および生体内での分化誘導を解析することが不十分な結果となった。分化誘導に関しても、マウスモデルでヒト細胞を用いることで、移植細胞自体が周辺環境との相互関係を築きにくい状況であったと考えられる。これらのやや想定外の状況によって、手技的には予定としていた一連の実験がほぼ完遂できたにも関わらず、結果の創出には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画が遅れた原因となったハイドロジェルの吸収率の悪さと、ヒト細胞使用による弊害を是正するため、使用マウスと同じ由来のマウス間葉系幹細胞を用いて、免疫不全マウスを用いることなく細胞移植することで、マウスの生体反応を惹起し、ハイドロジェルの吸収と周辺環境との相互関係を賦活させる。細胞移植手技や解析はほぼ一連の操作として24年度に一度経験しているため、同様の手技を用いることで、モデルと細胞種の違いのみでスムーズな実験進行が可能と考えている。年度後半からは学会発表可能な結果を創出していきたい。そのためマウス細胞をヒト細胞に替わって購入する必要があり、またマウス自体も再度すべての実験系に十分な匹数を確保しなければならない。また抗体関連はヒト抗体と異なるマウス抗体が必要となるため、これらを購入しなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. マウス間葉系幹細胞の新たな購入、および細胞培養関連消耗品 2. 病理組織学的解析のための抗体関連試薬 3. 動物購入 4. 遺伝子解析関連試薬 にその多くを用い、年度後半には発表のための旅費・学会参加費に用いる予定である。 未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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