2012 Fiscal Year Research-status Report
臨床検体を用いた顕微質量分析法による消化器癌特異的代謝機構の可視化と解析
Project/Area Number |
24791395
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 真之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30573414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メタボローム解析 / 質量分析イメージング |
Research Abstract |
がん細胞における糖の取りこみ増加を利用したFDG-PETが開発され、臨床上極めて有用な検査として知られているように、がん細胞の生存において、エネルギー代謝機構の変化は極めて重要である。本研究は、ヒト肝細胞癌・胆管細胞癌の臨床検体組織に対して、新たに開発されたマトリックス支援レーザー脱離イオン法顕微質量分析イメージング(MALDI-IMS)を用いて新たな組織臨床病理検査への応用、新薬の開発といった臨床的意義の探求を目的としている。 分析化学と組織形態学の融合による画期的なアプローチであるMALDI-IMSは、生体組織切片を溶解物化することなく、空間情報を保持したまま質量分析を行い、得られたスペクトル群から任意のイオン強度の分布を画像化することが可能である。これにより、検出対象分子に対する抗体やプローブ物質がなくても、局所分布様態を把握できる。 当教室では、患者の同意を得てから肝腫瘍の臨床検体を採取し、全例凍結保存を行っている。共同研究者である医化学教室は、質量顕微鏡法における空間特異的情報検出ソフトの開発に携わっており、豊富な顕微質量分析イメージングのデータベース、解析のノウハウを所有しているため、主にがん部、非がん部の代謝中間体の比較検討イメージングを初めに行い、がん代謝リプログラミングの動態を検証している。今年度は胆管細胞癌の検体に加え、NASHの肝細胞癌検体を得ることもでき、遺伝子発現、タンパク発現の検討を行い、がんの増殖、浸潤、転移、EMT、幹細胞性等と、代謝リプログラミングの結果の比較検討を進めている。そして、臨床的意義を検証して新たなバイオマーカー、画像診断検査プローブ、病理組織診断法の候補分子や新規治療戦略の分子標的候補の画期的な探索をめざしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
医化学教室で検体を扱う故にウィルスが背景肝となっている検体は採取できないため、胆管細胞癌やNASHの肝細胞癌の検体を収集しており、患者から同意の得られた症例のみをサンプルとしているため、ややサンプル数が足りない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の計画内容を継続し、臨床検体の数を増やす。さらに代謝リプログラミングと遺伝子・タンパク発現との関連性の強固な証拠、再現性、普遍性を検証する。 得られた知見の臨床応用も検討している。がん特異的代謝中間体とがん診断、悪性度を評価し、新たな診断的バイオマーカーや治療標的となる代謝経路を検索する。バイオマーカー候補となる代謝物に対して、腫瘍組織だけでなく血液、尿などの体液中の濃度を測定しバイオマーカー候補を探索する。治療標的分子の候補については、既知の抗がん剤の代謝経路への影響、ならびに遺伝子発現と代謝リプログラミングの関連性から導かれる新規分子治療標的としての可能性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費に関しては当研究室所有の物品を使用したため、当該年度の使用額はなく、また、旅費に関しても、当該研究費から使用しなかったため、繰越額が生じた。次年度引き続き研究を行うにあたって、本研究に必要な物品費、国内外の学会発表のための旅費、共同研究者との通信費などが必要であると考えられる。
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Research Products
(5 results)