2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト食道癌におけるT-reg、Th17細胞の遊走・分化と病態進行の検討
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24791404
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
丸山 孝教 山梨大学, 医学工学総合研究部, 医学研究員 (30348221)
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Keywords | 食道癌 / 制御性T細胞 / Th17細胞 / 癌微小環境 / ケモカイン |
Research Abstract |
本研究の目標は食道癌腫瘍部におけるCD4陽性T細胞のサブセットであるTh1/Th2/T-reg/Th17の比率を、病期が進行するとT-regが増加し、Th17細胞は減少するという仮説とともに、それらの細胞が腫瘍周囲に存在するためには、ある種のケモカインが関与しているという仮説を基盤として、食道癌の微小環境におけるこれらの細胞の関与を明らかにし、その制御を試みるものである。そこで25年度は癌の微小環境という点に注目しT-regの動態について検討した。 研究代表者は、これまですでにいくつかの研究により、癌微小環境にT-regが存在することを明らかにしてきた。またT-regが酸化ストレスに対して通常のT細胞に比較して感受性が低い、すなわち酸化ストレスに抵抗性であることが、癌の免疫回避のひとつの機序ではないかという仮説を提唱してきた。今回、この仮説を証明することにした。そこで切除した食道癌の新鮮組織からT-regを分離し、フローサイトメトリー解析により、T-regの過酸化水素H(2)O(2)産生能と、アポトーシス誘導の程度を検討した。その結果、癌の進行ととともに腫瘍に浸潤するT-regの数は増加し、過酸化水素H(2)O(2)産生能も活性化した。またアポトーシスの程度は通常のT細胞に比較してより弱いものであった。興味深いことに過酸化水素H(2)O(2)産生量と通常のT細胞のアポトーシスの程度が相関したが、T-regのアポトーシスの程度とは相関しなかった。すなわちT-regが酸化ストレスに対して通常のT細胞に比較して感受性が低い、つまり酸化ストレスに抵抗性であることが明らかになった。この結果は癌微小環境における酸化ストレスの抑制が腫瘍免疫の成立に極めて重要であること示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果でも記述したが、食道癌組織からのT-regならびにTh17細胞の分離とその癌周囲微小環境での比率、その比率を測定するのに、申請時はPCRを用いて、Foxp3 m-RNAとRORγt m-RNAの良によって検討する予定にしていたが、フローサイトメトリーと免疫染色による測定が簡便で有用であることが明らかになったので、初期の研究は当初の計画以上に進捗した。そこで、ケモカインであるCCL17/CCL27を使用した、T-regの遊走を確認した。この結果はすでに胃癌で癌微小環境下にあるCCL17/CCL27と T-regの遊走ではなく集積の程度が相関していることから確実と考えていたが、ボイデンチェンバーを使用したchemotaxis chamber assay でのT-regの遊走の確認では、T-regの遊走はほとんど確認されなかった。これは今回報告者が検討したCCケモカイン以外のケモカイン、たとえば好中球を遊走させる活性を有し、血管新生作用を持つCXCケモカイン、細胞遊走活性を有すると同時に接着分子としても働いているCX3Cケモカインなどのケモカインの作用が不可欠であることも考えられた。そこでこれらのケモカインの必要性を検証しなければならず、多くの時間を要したため平成25年度の研究の進捗に影響を及ぼした。結果CCケモカインのみでT-reg ,Th17細胞の遊走はCCケモカインの濃度調整により確認することができた。一方、平成26年度の計画は平成25年度で得られた成果をより多数例で検討し、食道癌の臨床病理学的所見と対比するものであり、症例の集積が順調に進めば研究は順調に進捗してゆくと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、食道癌が予後不良である一因が、その特異な免疫回避機構にあるのではないかという発想から、CD4陽性T細胞サブセットである制御性T細胞(T-reg)とTh17細胞のバランスを検討し、Th17/T-reg比が高いほど予後が良いことを明らかにする。またT-regとTh17細胞を癌周囲微小環境に誘導してくるケモカインを同定し、その制御により癌の進行とともに低下するTh17/T-reg比を高く保とうというのがその目的である。前述したようにほぼ満足できる結果を得ており、論文として4編発表している。しかし、これまで検討した症例の数は、最も重要である本研究の成果が臨床にどのように結びつくのかという課題には少数である。すなわち成果が食道癌の臨床病理学的所見にどのように反映しうるのかという点である。そこで研究の進捗を図るために、平成26年度の切除検体も追加して検討することにした。ただ、このようなテーマは食道癌の進行度を含めた生物学的特性の検討以外に、臨床上極めて重要な3年、5年生存率、あるいはdisease free survivalなどの検討が重要であり、成果を得るまでに長期間を要する。そこでT-regがCCケモカインで遊走することが明らかとなっているため、Th17細胞の遊走を誘導するケモカインを、候補として考えられるMCP-1 (CCR2)、I-309 (CCR8)、RANTES(CCR1/3/5)などで検索する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、試薬、抗体等が定価より安価で購入できたため未使用金が生じた。 平成26年度の切除検体も追加して、CD4陽性T細胞サブセットである制御性T細胞(T-reg)とTh17細胞のバランスの検討およびT-regとTh17細胞を癌周囲微小環境に誘導してくるケモカインの同定を行う。 またTh17細胞の遊走を誘導するケモカインを検索する。 上記の検討に必要な抗体、試薬、薬剤および不足しているディスポーザブル用品を平成25年度の未使用金と合わせて購入予定である。
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Research Products
(2 results)