2013 Fiscal Year Research-status Report
一塩基多型を利用した新たな膵癌予測因子の開発とテーラーメード治療への応用
Project/Area Number |
24791406
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 豪 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30467287)
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Keywords | 一塩基多型 / 膵癌 / IPMN / VEGF |
Research Abstract |
本研究においては、膵癌及び膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)症例における血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の一塩基多型(SNP)として、「C-460T」と「G+405C」のそれぞれを調査することにより、膵腫瘍の発癌における影響だけでなく、臨床病理学的因子・予後との相関を解析するものである。 これまでに、膵癌細胞株と膵良性腫瘍細胞株を使用してVEGF SNPを測定し、引き続き、教室における膵癌ならびにIPMN症例の臨床検体を用いて研究を進めた。108例の膵癌症例、169例のIPMN症例の「C-460T」と「G+405C」VEGF SNPをそれぞれ測定し、生存成績、臨床病理学的因子との相関、また、IPMN症例においては悪性化との相関を統計学的に解析した。 その結果、IPMN症例においては、VEGF +405C/Cは+405G/Gと比較して、IPMC(悪性化症例)に有意に多く認められ(オッズ比: 2.7、P = 0.04)、+405Cアレルは+405Gアレルと比較して、IPMNの悪性化と有意に相関していた(P=0.05)。分枝膵管型IPMNにおいては、VEGF +405C/CはIPMCにおいて有意に多く認められた(CC vs. GG; オッズ比: 4.0, P = 0.03、CC vs. CG+GG; オッズ比: 3.3、P = 0.04)。胃型においては、VEGF +405C/Cはより多く認められる傾向であった(CC vs. GG; オッズ比: 3.0、P = 0.07)。VEGF +405G/CのSNP statusにより生存期間中央値を検討すると、VEGF +405C/C: 27.9ヶ月、GC: 17.5ヶ月、GG: 23.3ヶ月であり、群間には有意差を認めなかった。また、膵癌症例においても有意な差は認められなかった。 今後、細胞株の培養液中のVEGF濃度、さらに、膵癌及びIPMN症例における血中VEGF濃度の測定を行うことにより、さらなる機能解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、教室における108例の膵癌症例、169例のIPMN症例のVEGF SNPとして「C-460T」と「G+405C」をそれぞれ測定し、生存成績、臨床病理学的因子、悪性化への影響との相関を統計学的に解析した。その結果、IPMN症例においては「405C」のVEGF遺伝子多型を有する症例は有意に悪性化症例に多く認められることが判明した。また、IPMN症例における亜分類として、分枝膵管型IPMNや胃型IPMN症例においては、「405C」の頻度が有意に高いことが分かった。 これらの結果に関しては、現在、論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、VEGF SNPとしての「G+405C」がIPMN症例の発癌に関与していることが判明したが、今後は機能解析が必要であると考えている。 まずは、IPMN及び膵癌細胞株を用い、これらの細胞株の「G+405C」VEGF SNPを測定する。その後、培養液中のVEGF濃度をELIZA法にて測定し、VEGF SNPとの相関を明らかにする。さらに、教室における膵癌及びIPMN症例を用い、これらの症例の血中VEGF濃度の測定をELIZA法にて同様に行うことにより、VEGF SNPとの相関を統計学的に解析するだけでなく、臨床病理学的因子・予後との相関を解析する。 以上の実験により、本研究の目的は達成されると思われる。従って、これまでの研究結果を再度解析し、統括することにより、最終的には学会発表、論文報告をしていく予定である。
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