2012 Fiscal Year Research-status Report
可溶性IL-33受容体の大腸がん転移抑制効果と予後予測因子としての有用性の検討
Project/Area Number |
24791422
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
秋元 美穂 島根大学, 医学部, 助教 (60437556)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 転移抑制 |
Research Abstract |
研究実施計画に即し、マウス大腸がん由来のNM11細胞(低転移性、sST2高発現)とLuM1細胞(高転移性、sST2低発現)、ヒト大腸がん由来のSW480細胞(低転移性、sST2高発現)とSW620細胞(高転移性、sST2低発現)を用いたin vivoの実験を進めた。これまでに、①大腸がん細胞におけるsST2の発現が血管新生および自然転移に及ぼす影響、②がん細胞由来sST2 の血中への遊離と転移に及ぼす影響、③sST2-Fc融合タンパク質の生体内強制発現による転移抑制効果について検討し、以下の3点を明らかにした。 ①マウスおよびヒトの大腸がん細胞におけるsST2の発現はin vivoにおいて大腸がんの自然転移を抑制する: sST2をノックダウンまたは過剰発現したマウスおよびヒトの大腸がん細胞を同系のマウスあるいはヌードマウスの背部皮下に移植した結果、sST2高発現の腫瘍では血管新生および肺転移が抑制された。 ②血中の遊離sST2は遠隔腫瘍の転移を抑制する: sST2 高発現細胞をマウス皮下に移植すると、腫瘍体積の増大に伴って血中sST2レベルが上昇した。またsST2 高発現細胞を移植した場合、反対側に移植した高転移性腫瘍の血管新生および肺転移が抑制された。 ③マウスsST2-Fc融合タンパク質の生体内強制発現はマウス大腸がんの転移抑制に有効である: マウスsST2-Fc融合タンパク質の発現プラスミドを作製し、高転移性のマウス大腸がん担がんマウスにおいてハイドロダイナミクス法で生体内強制発現させた。7日毎にプラスミドを尾静脈投与し、血中sST2レベルを維持することで、腫瘍血管新生および肺転移が抑制された。 これらの結果は、sST2がマウスおよびヒトの大腸がんの転移抑制に効果的であることを示し、転移抑制剤としてのリコンビナントsST2の有用性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に即して研究を進め、大腸がん細胞におけるsST2の発現が血管新生および自然転移に及ぼす影響、がん細胞由来sST2 の血中への遊離と転移に及ぼす影響について検討し、目標の成果を達成することができた。24年度の研究計画として挙げていたsST2 発現による遊走能・浸潤能抑制の機序の検討についても現在進行中であり、特に計画の大幅な遅れはない。また、25年度の計画としていたsST2-Fc融合タンパク質の生体内強制発現による転移抑制効果の検討についても24年度中に成果を示すことができた。 したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に基づき、以下の3点について研究を進める。 ①sST2 発現に伴う大腸がん細胞の遊走能・浸潤能の抑制機構の解明:これまでのin vitroの実験で、大腸がん細胞ではsST2の発現に伴う遊走能・浸潤能の低下が認められており、その機序について現在解析中である。大腸がん細胞でIL-33/ ST2Lオートクライン機構が成立し、遊走能・浸潤能が制御されている場合は、sST2がこれを阻害する可能性がある。そこで、大腸がん細胞でオートクライン機構が成立するか否か、遊走能・浸潤能を制御するか否かを検討する。また、IL-33は核内因子として種々の遺伝子の発現を制御するので、細胞内でsST2がIL-33依存性の遺伝子発現制御に影響を及ぼす可能性についても検討する。 ②ヒトリコンビナントsST2による転移抑制効果の検討: sST2-Fc融合タンパク質の生体内強制発現はマウス大腸がんの転移抑制に有効であることが確認されたので、転移抑制剤としての応用も視野に入れ、ヒトリコンビナントsST2の転移抑制効果について検討する。数種類のヒトリコンビナントsST2発現プラスミドを作製し、HEK293T細胞にトランスフェクションして目的のタンパク質を精製する。高転移性のヒト大腸がん担がんヌードマウスにヒトリコンビナントsST2を投与する。血中での到達濃度や転移抑制効果を評価し、最も有効かつ効果的なヒトリコンビナントsST2を検討する。 ③sST2 の大腸がん予後予測因子としての応用の検討:大腸がん患者の血清サンプル中のsST2 濃度を測定し、臨床データとの相関を検討する。また、既存の大腸がんパラフィン包埋組織標本をsST2 特異的な抗体で免疫染色し、sST2 の発現レベルと原発巣のステージおよび転移の有無との相関を調べる。これによりsST2が大腸がん予後予測因子として有用であるかどうかを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)