2012 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍微小環境におけるIL-17/IL-21axisの解明と新規免疫療法の開発
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24791446
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
飯田 武 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (30453187)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 癌 |
Research Abstract |
腫瘍組織において腫瘍局所に存在する樹状細胞がIL-23を強く発現しており、これによりTh17よりIL-17の産生が促進され、炎症が惹起され、好中球浸潤、腫瘍血管新生およびMMP9の高発現をもたらし、同時にCD8+ T細胞の浸潤を著明に抑制するというものであった。IL-23はIL-23 receptorを有する Th17に作用し、IL-17を介して炎症反応を惹起する重要なサイトカインである。ところが最近、Th0からTh17への分化にはIL-6, TGF-βのみでは不十分でありIL-21のinitiationが必須であることが明らかにされた。従って腫瘍局所におけるIL-21の制御が腫瘍抗原ワクチンによる免疫療法を成功させる鍵となるものと考えられる。今回、胃癌114例を対象に腹腔洗浄液中におけるIL-17 mRNAの発現を定量的に評価した。IL-17 mRNAの発現は腹膜播種陽性例において陰性例より有意に高発現であった。また、IL-17 mRNAは腫瘍の深達度が増すにつれ高発現であった。治癒切除症例における単変量解析ではリンパ節転移陽性、腫瘍浸潤陽性、脈管浸潤陽性、腫瘍径ならびにIL-17 mRNA高発現が予後不良因子であった。多変量解析では腫瘍径ならびにIL-17 mRNA高発現が独立予後不良因子であった。StageII,III症例ではIL-17 mRNA高発現群は低発現群より有意に予後良好であった。またT2, T3, T4症例での解析においてIL-17 mRNA高発現群は低発現群より有意に予後良好であった。以上、今年度の研究成果として胃癌腹腔洗浄液中のIL-17mRNAは腫瘍の増殖・進展に伴い高発現であり。また、進行胃癌患者においてその高発現群は予後良好であり、その臨床的意義として腹腔内環境における抗腫瘍免疫として作用が示唆される結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IL-21により分化・誘導されるIL-17は従来よりその発現局在、種や癌腫によって腫瘍増殖に働くとの報告と抗腫瘍効果をもたらすとの相反する報告がなされて来た。これまでの我々はヒト胃癌腫瘍局所でのIL-17発現は好中球浸潤、血管新生を増生することで腫瘍増殖をもたらすとの研究結果が得られていたが、上記背景あることより、腹腔内環境でのIL-17発現とその臨床病理学的因子または予後との関連について検証中であるため当初の研究計画よりやや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
手術により摘出した胃癌腫瘍組織より約5mm角の組織を採取。Microdissection法により腫瘍組織と正常組織からそれぞれmRNAを抽出。LightCyclerを用いた定量的RT-PCR法にてIL-17mRNA, IL-21mRNA,IL-23mRNAおよびTGF-βmRNAの発現を定量的に検討する。その際、腫瘍組織および正常組織における発現量を比較検討する。またその発現量と臨床病理学的因子との関連も検討する。2) 病理組織および蛍光免疫組織学的検討によりCD8+T細胞、CD4+T細胞、DC、NK細胞,好中球MMP9の腫瘍組織における分布および細胞数を検討する。さらにCD34発現を指標として腫瘍新生血管,CD66bを指標として好中球浸潤を検討する。この際、画像解析ソフトを用いて浸潤細胞数を定量的かつ客観的に評価する。2. ヒト胃癌組織における免疫担当細胞の機能解析手術により摘出した胃癌腫瘍組織より約1cm角の組織を採取.酵素処理の後,ステンレスメッシュを通過させ単細胞化する.これを100%, 70%Ficoll-Hypaqueを用いた不連続密度勾配法によりリンパ球と腫瘍細胞を分離する。単細胞化したリンパ球をMACSを用いてCD4+T細胞を分離する。1) 分離したCD4+T細胞をirradiation処理した腫瘍細胞と10:1の比率にて7日間混合培養した後腫瘍細胞を添加再刺激4時間後にIL-17,IL-21, IL-23, TGF-β, IFN-γの産生をELISPOT assay法を用いて検討する。同様に定量的RT-PCR法でも検討する。2) 腫瘍細胞におけるTGF-βの産生を定量的RT-PCR法およびELISA法で検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養試薬・器具物品としてCollagenase(Sigma), DAaseI(Sigma).遺伝子操作用試薬.酵素としてRneasy Mini Kit(QIAGEN),AMV Reverse Transcriptase(Promega),LightCycler primer,probe(日本遺伝子研究所).免疫研究試薬としてCD4マイクロビーズ(Miltenyi Biotec),IL-21 staining set(eBioscience).免疫組織化学染色試薬・抗体として抗IL-17抗体(Santa Curuze),抗IL-21抗体(Santa Curuze),抗IL-23抗体(Santa Curuze),抗CD66b抗体(Santa Curuze),抗CD34抗体(Santa Curuze),免疫組織染色2次抗体(DAKO)に費用を要す.
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