2012 Fiscal Year Research-status Report
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24791447
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
福田 和正 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50348786)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | cancer stem cell |
Research Abstract |
本研究は, 食道癌における癌幹細胞(CSC)の分離及び機能解析を行い, 予後因子ならびに標的分子等のバイオマーカーの探索を目的としている. 食道癌患者の血清中における成分を分析した結果, 健常人と比較して血中のフィブリノーゲン(FNG)値が高いことが示唆された. さらに, 血中FNG高値(>359mg/dl)の食道癌症例では, 術後再発率が高い傾向にあることが示唆された. また, Zhengらの報告では, 悪性リンパ腫においてFNGと癌細胞に発現しているインテグリン分子の関係性が指摘されている. このCTCは癌幹細胞との関連性が示唆されており, 本研究では, 食道癌細胞株(TE1, TE4, TE5, TE6, TE8, TE9, TE10, TE11, TE14, TE15)を用いてCSCの分離に用いるマーカー分子の候補としてインテグリンβ3およびEpCAMの解析を用いて行った. フローサイトメトリーによる解析の結果, EpCAMの発現は, 実験に用いた10株全てにおいて確認された. インテグリンβ3については, TE8のみで検出された. 食道癌患者の血液サンプル中における炎症性サイトカインを解析した結果, IL-1β, IL-6, IL-8が高値で検出された. ELISA法により食道癌細胞株の培養上清中のサイトカインを解析した結果, IL-1βは1株のみで検出された. IL-6は, TE1およびTE6以外の細胞株において0.22~21.3 (pg/mL)の測定値で検出された. IL-8については, TE1以外の細胞株で検出され測定値は, 最大で4.00 (ng/mL)であった. EpCAMおよびインテグリンβ3の発現強度と炎症性サイトカインの産生量との相関性は認められなかったが, インテグリンβ3陽性細胞であるTE8において高い値にあることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は, 食道癌患者の病態解析を中心としたアプローチにより癌幹細胞の分離および同定のための候補分子の解析を行った. 当初予定した計画に対して, 達成度は60%程度である. 達成度は低くあるが, 臨床データにもとづく候補分子の選別は重要なプロセスである. 標的細胞に対する各評価系はすでに確立されており, 順次解析を実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
癌幹細胞の増殖・分化様式の解析において, EGF, FGF, PDGF等の成長因子及びLIF等を添加した無血清培地による培養のもと、分離した癌幹細胞(CSC)の未分化な状態を維持させる状態を確立する. この条件下培養したCSCを各分化誘導因子の添加およひMatrigelを用いた3D培養により分化能・増殖形態を評価する. 自己複製能の解析では, Sphere formation Assayにより自己複製能の評価 を行う. 癌の浸潤, 転移に関わるEMT能の解析では, 分離した細胞集団について細胞走化性測定装置を用いて細胞の遊走、浸潤能を評価する. NOGマウス移植モデルによる造腫瘍能の解析では, 分取した癌幹細胞集団をNOGマウス皮下へ移植し, 腫瘍形成能を評価する. また, 形成された腫瘍組織について免疫組織化学法及びPCRにより癌幹細胞マーカーの発現の局在ならひに定量を行う. 抗癌剤感受性評価とその抵抗性メカニズムの解析では, 食道癌領域て主に使用されている抗癌剤である5FU, シスプラチン, ドセタキセルについて癌幹細胞と非癌幹細胞における薬剤の感受性についてWST8法により評価を行う. メタボローム解析では, 低分子の代謝産物を解析するための方法として, われわれはLC/TOF/MS質量分析機器を用いて解析を行う. 癌幹細胞のエネルギー代謝様式がどのようなものなのか評価することは, 生物学的特性を理解する上で重要な解析であり, 更に, 新規標的分子及ひ機能性プローブ分子の探索にも寄与できることが期待される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度直接経費の使用計画は, 以下の項目ごとに予算を計画している. 生化学実験試薬:500,000円, 細胞培養試薬:100,000円, 実験用動物:200,000円 遺伝子解析用試薬:150,000円, メタボローム解析:300,000円, 消耗品;50,000円
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