2013 Fiscal Year Research-status Report
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24791453
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新宮 康栄 北海道大学, 大学病院, 医員 (30617064)
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Keywords | 心房細動 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
1.研究成果:本研究の目的は心筋のインスリン抵抗性と術後心房細動との関連を明らかにすることである。H25年度前半では臨床研究の前段階としてラットを用いた心筋インスリン抵抗性の評価方法に関するパイロット実験を実施した。培養細胞を用いてインスリン負荷を行い関連蛋白の発現で評価をこころみたが成功しなかった。したがって不整脈に関連する細胞内カルシウム動態蛋白とそれと密接な関係にある解糖系の活性を評価する方針に変更した。 H25年11月から年度末までに手術患者9名をエントリーした。術後に心房細動を発症したのは5例であった。以前の報告から心筋興奮―収縮連関の遅延が術後心房細動に関連していると予測したが、エントリー患者では有意差を認めていない。また術後心房細動と糖尿病の有無と血中の遊離脂肪酸濃度にも差を認めていない(若干術後心房細動群でHOMA-Rで示されるインスリン抵抗性が高い傾向はあり)。一方で心エコーにおける左室拡張機能が術後心房細動患者で有意に低下していた。 同期間の手術患者で慢性心房細動患者5例と上記エントリー患者9例との比較においては、全身インスリン抵抗性、膵β細胞機能に差はなかったが慢性心房細動患者において有意に血中の遊離脂肪酸濃度が高値を示した。心筋のエネルギー器質の変化と慢性心房細動の関連が示唆された。 2.意義:術後心房細動の予測因子である心房の心筋興奮―収縮連関は予測に反して有意差をこれまで認めていないが、左心室の拡張機能が術後の心房細動に関与している可能性がある。拡張機能は心筋のエネルギー(ATP)産生の減少の影響を収縮機能よりも受けやすいとされている。拡張機能に関与する細胞内カルシウム動態蛋白と細胞内ATPを今後検討する必要があることがわかった点で本年度の研究の意義があったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに学内の倫理委員会の承認を得て患者の説明と同意、エントリーを行えている点では順調に進展していると考える。しかしながら、ラットでの心筋細胞を用いたインスリン抵抗性の評価が不成功となり違う指標で評価せざるを得なくなった点、当初術後心房細動予測因子として心房の心筋興奮―収縮連関の延長をもとに計画を立てていたがこの指標にこれまでの症例で有意差を認めていない点では計画通りではないため、達成度を「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初術後心房細動予測因子として心房の心筋興奮―収縮連関の延長をもとに計画を立てていたがこの指標にこれまでの症例で有意差を認めていない。一方でこれまでエントリーした少数例(9例)ですでに左室拡張機能(左房収縮波の増高)に群間で有意差を認めている。次年度はこの「左室拡張機能」「左房収縮波」に注目してこれに関与する細胞内カルシウム動態蛋白と細胞内ATPを今後検討する予定とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基礎実験をふまえた上で臨床研究における抗体や試薬の購入を考えていたが、基礎実験に当初の計画よりも時間を要したために物品の年度内購入ができなかったから。 抗体、試薬の選定は終了しており次年度分に繰り越した助成金をこれらに充てる予定。
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