2013 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNA解析に基づく急性大動脈解離の発症機序に関する検討
Project/Area Number |
24791469
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
木村 直行 自治医科大学, 医学部, 助教 (20382898)
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Keywords | 急性大動脈解離 / マイクロRNA |
Research Abstract |
急性大動脈解離は、大動脈壁が外層と内層に解離する重篤な循環器疾患で、その発生機序は、十分に解明されていない。microRNA(miRNA)は、細胞内に存在する長さ20~25塩基ほどの1本鎖のnon coding RNA で、複数の蛋白質と複合体を形成し、標的となるメッセンジャーRNA(mRNA)に作用し翻訳を抑制する。microRNAの急性大動脈解離の病態への関与を究明する本研究では、発病のメカニズムを、臨床検体を使用し、遺伝子・分子レベルでの解析で明らかにすることを目的とする。 当施設倫理委員会での研究承認後、平成25年度7月から実際の急性A型大動脈解離手術実施症例の上行大動脈検体の採取を開始した。急性A型大動脈解離は術前に血圧低下や臓器潅流不全などを呈する症例も多いため、手術前に検体採取に関しての十分な説明ができず、同意書が得られない症例も存在するが、これまでのところ、合計14例の急性A型解離手術施行症例から上行大動脈壁を採取できた。これらの検体は現在、凍結保存中であり、一部の凍結検体からのRNA抽出を開始している。また、急性A型解離群のコントロールとして、移植ドナーの上行大動脈検体を合計9例から採取しており、6月に米国Stanford大学から輸送予定である。さらに、別のコントロール群として、非解離性胸部大動脈瘤の14症例から上行大動脈検体を採取しており、凍結保存中である。移植ドナーの平均年齢は38才(22才~56才)と若く、急性A型解離群の平均年齢は64才(43才~83才)であるため、両群間の年齢補正を要するが、60才以下の症例が現在5例いるため、移植ドナーとマッチングでき次第、網羅的遺伝子発現解析実験を実施し、これに基づいたReal-time PCRを開始する予定である。本研究プロジェクトを今年度中に遂行し、早期に論文投稿を行うことを目標としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
急性A型大動脈解離に対する手術は年間30例ほどあるが、術前状態が悪い症例も多いため、採取の遅滞を生じている。また、Stanford大学での移植検体採取がやはり当初の予定から遅れたこともあり、MTA締結が今年3月となったことも研究計画遅滞の原因と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、急性A型解離14症例から検体を採取しているので、今後も着実にこれを継続し、目標とする20例まで増やす。また、Stanford大学での倫理委員会の承認とMTAの締結も済み、6月に移植ドナー由来の9検体が移動予定である(輸送会社に連絡済)。 平成26年度は、平成25年度に実施予定であった実験を行う予定である。具体的には、組織からマイクロRNAを抽出し、下記の実験を行う。 (1)RNAシークエンス法によるマイクロRNAプロファイル評価:次世代RNAシークエンス法による網羅的遺伝子解析を予定しているが、予算等の事情から実施困難と判断とされた場合には、代替案としてmicroarray法の使用も検討している。その後、Bioinformatic分析を行い、新規バイオマーカーとなりうる可能性のあるマイクロRNAを同定する。(2)Real-time PCR法による急性大動脈解離病変部でのmiRNA発現レベルの測定:(1)で同定されたマイクロRNAをReal-timePCR法で測定し、上記プロファイル評価の妥当性を検証する。(3)凍結保存した組織サンプルを使用し、ELISA、Western blottingによる蛋白質レベルでの発現の確認も合わせて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
急性A型大動脈解離に対する手術は年間30例ほどあるが、術前状態が悪い症例も多いため、採取の遅滞を生じている。また、Stanford大学での移植検体採取がやはり当初の予定から遅れたこともあり、MTA締結が今年3月となったことも研究計画遅滞の原因と判断するため。 ①8lanes HiSeq run:1,000,000¥ ②miRNA抽出キット:400,000¥ ③Real-time PCR試薬:400,000¥④Bioinformatics解析経費:200,000¥⑤ELISAキット:200,000¥⑥Western blottingキット:170,000¥⑧移植ドナー上行大動脈検体輸送費:300,000¥
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