2012 Fiscal Year Research-status Report
Wntシグナル制御による骨肉腫細胞増殖抑制薬の可能性検証
Project/Area Number |
24791524
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 将吾 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (90529182)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 発生・分化 / 骨芽細胞 / 骨肉腫 / 薬理学 |
Research Abstract |
本申請研究では、骨肉腫細胞を骨芽細胞様分化を促進し、骨肉腫細胞の増殖を抑制することが近年報告されたWnt/Fzdシグナルが、骨肉腫治療における新規創薬標的となり得るか検証することとした。同様のシグナル経路が機能していると考えられる骨芽細胞と対比し、骨芽細胞分化シグナルの実態解明と骨細胞特異的な同定を狙い研究を遂行した。 はじめに正常骨芽細胞に対する解析を行った。マウス骨芽細胞由来細胞株MC3T3-E1細胞、および初代培養骨芽細胞におけるWnt/Fzの発現プロファイルをRT-PCRにて確認し、Wnt:13種類、Fzd:9種類の発現が認められた。発現が認められた分子関し、アデノウィルス発現系を構築し、その導入系によって適切に骨芽細胞分化への影響が評価可能か検討した。過去の報告と合致し、例えばWnt3aをMC3T3-E1細胞に導入した場合、骨形成マーカーであるALP活性の上昇が認められ、実験系の妥当性が検証された。次いで、アデノウィルス発現系を用いて各Wnt/Fzdの下流シグナルの検討を進めた。これまでに下流経路としてβ-catenin経路、JNK経路、Ca2+経路、cAMP経路が報告されており、これらの経路に与える影響をレポーターアッセイにより評価し、網羅的な活性化プロファイルを取得した。その結果、骨芽細胞分化が認めらたWnt3a導入系では、各シグナル経路の有意な変動は認められなかった。さらに、siRNAにより各Wnt、Fzdを発現抑制した検討においても、Wnt3a抑制下では骨芽細胞分化度は低下したが、下流4シグナル経路の有意な変動は認められなかった。以上の結果から、骨芽細胞や骨肉腫細胞においてWnt/Fzdシグナル下流で骨形成を制御しているシグナル経路は、未知シグナル経路が関与していることが示唆された。そこで、この未知経路の解明を優先し、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、既に報告されているWnt/Fzd下流シグナル経路に関する活性化の検出系の構築、さらに各細胞に発現が認められた分子に関する発現系の構築、および内在性に発現する分子の発現抑制系の確立を行い、各Wnt/Fzdにが有する下流活性化プロファイルの取得が計画されていた。既に報告されているWnt/Fzdシグナルの下流経路であるβ-catenin経路、JNK経路、Ca2+経路、cAMP経路のシグナル活性化評価系として、それぞれ、Tcf/lef、AP-1、NFAT、CREの各転写因子活性を検出するレポーターアッセイ系構築に成功した。また、各細胞に発現するWnt/Fzdの発現系としては、アデノウィルス発現系を構築し、解析に使用する細胞において充分に機能することが確かめられた。さらに、発現抑制に用いるsiRNAに関しては、すべての分子に関して、siRNA配列は確定し、mRNA発現量を大幅に低下させうる使用条件も確定している。これらの系を用い、MC3T3-E1細胞および、初代培養骨芽細胞において遺伝子導入時あるいは各分子発現抑制時の下流シグナル経路の活性化プロファイルの取得に成功している。 解析の結果、従来から想定されている知見とは異なり、骨芽細胞分化を制御するWnt/Fzdシグナルの下流経路は、上記4経路以外の経路が寄与している可能性が示唆された。そこで、当初、既報告4経路に関して骨芽細胞と骨肉腫細胞での活性化プロファイル対比を行う予定であったが、骨芽細胞分化を制御する下流経路の実態解明を行うことを優先し本研究を遂行している。当初計画と異なるが、骨芽細胞様細胞への分化を正確に評価するために不可避で有り、かつ、分子細胞生物学的にも重要な知見となることが期待されるため、本研究において遂行することが適切である。これらを考慮すると、本申請研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Wnt/Fzdシグナル下流において、骨芽細胞分化を担う経路の探索として、現在以下の方策を行っている。 1.様々なシグナル経路に対する阻害剤を用い、Wnt3aによる骨芽細胞分化活性化が抑制される経路の探索 2.骨芽細胞分、および、骨形成を惹起することが明らかとなっている別シグナル経路が、Wnt3aの下流で活性化プロファイルが変動するかの検証 (具体的には、SMAD、STAT、HIF、Runx2といったTGFβシグナルやmTORシグナル下流において活性化する転写因子に対するレポーターアッセイによる評価を行う) これらの検討を通じて、目的の下流経路が見出されると想定される。見出された下流経路が実際に機能しているかを、阻害剤処理や経路関連分子の発現抑制により検証する。骨芽細胞分化に関与する下流経路が同定された後、この経路の活性を評価可能な系を構築し、骨芽細胞、骨肉腫細胞を含め、網羅的な活性化プロファイルを取得する。骨肉腫において特異的に見出されるなWnt/Fzdの組み合わせによる下流活性化を見出し、どの分子を標的した場合に骨肉腫細胞特異的な骨芽細胞分化を誘導できるか同定する。最終的に、これらin vitroで得られた知見を、骨肉腫モデルマウスを用いて、同定されたシグナル経路の活性化を惹起した場合、あるいは、特定のWnt/Fzdを過剰発現または発現抑制した場合の骨形態変化や、骨肉腫の大きさ、骨肉腫細胞の細胞状態の変化(骨芽細胞様分化の有無)を表買うすることで、最終的に骨肉腫細胞を骨芽細胞様細胞に分化させることによる骨肉腫治療の可能性を生体レベルで検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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