2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791531
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
安藤 隆 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10377492)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 骨・軟部腫瘍学 / mTOR |
Research Abstract |
骨肉腫は造血系腫瘍を除いた原発性骨悪性腫瘍の中では最も頻度が高く、また遠隔転移をきたしやすく予後不良である。手術療法の進歩、系統的化学療法の導入により60%以上の生存率となっているが、さらなる改善を目指し骨肉腫のための新規抗癌剤の研究が重要である。 本研究において、我々はmTORの骨肉腫における働きを研究し、新規分子標的製剤としての可能性を探る点で大きな意義があると考えている。 その研究計画として、平成24年度は骨肉腫細胞を使用しIn vitroの実験を、平成25年度はマウスの骨肉腫肺転移モデルを使用しIn vivoの実験を予定していた。まず、マウスの骨肉腫細胞株を2種、ヒト骨肉腫細胞株を4種準備し、それぞれにmTOR阻害薬(Rapamycin)を濃度、時間を変化させ作用をみた。WST assayにて増殖抑制を評価し、結果としては濃度、時間依存的にRapamycinによる細胞増殖抑制を確認した。次にannexin Vと7AADを用いたFACSにてアポトーシス、ネクローシスの評価を行った。結果としては濃度依存的にアポトーシスする細胞の割合は増加しているが、細胞株によってはアポトーシスの形態は少なく直接的にネクローシスへ向かうものも確認された。WB assayにてmTOR複合体のの標的分子である、4EBP1、S6K1、AKT、SGK、PKCaのリン酸化をみた。これらのうち、mTORC1に関与する分子の多くは無刺激においてもリン酸化されており、これらがRapamycinによって阻害されることを確認した。 平成25年度は以上の結果を踏まえて、In vitroの実験に取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実験計画としては主に骨肉腫細胞株を使用し、In vitroの実験を予定していた。 マウスの骨肉腫細胞株を2種、ヒト骨肉腫細胞株を4種準備し、それぞれにmTOR阻害薬(Rapamycin)を濃度、時間を変化させ作用をみた。交付申請書に記載した具体的な実験計画としては以下のとおりであり、1)骨肉腫細胞を培養し、mTOR 発現の検討する。①骨肉腫細胞を培養し、mRNA レベルでのmTOR の発現をPCR 法で定量した。②タンパクレベルでのmTOR の発現をWB 法で定量した。2)骨肉腫細胞におけるmTOR の局在を調べる。①チャンバースライドで骨肉腫細胞を培養し、抗mTOR 抗体を用いた免疫染色法によってmTOR の細胞質内、核内、細胞表面の局在比率を確認している。②ヒト骨肉腫手術検体(生検時および切除時)を用いて、腫瘍組織における局在を免疫染色法および蛍光抗体法にて確認する予定であったが、本年度に適応症例がなく過去の保存検体が使用可能であるか検討中である。3)mTOR 複合体のの標的分子(4EBP1,S6K1 AKT, SGK, PKCa)のリン酸化を確認する。①標的分子のリン酸化をリン酸化抗体を用いてWB 法により定量した。また、これらのうち、mTORC1に関与する分子の多くは無刺激においてもリン酸化されており、これらがRapamycinによって阻害されることを確認した。4)mTOR および標的分子と、骨肉腫細胞の増殖関係を検討する。①濃度、時間依存的にRapamycinによる細胞増殖抑制をWST assayにて確認した。②annexin Vと7AADを用いたFACSにてアポトーシス、ネクローシスの評価を行った。 以上の計画と実験の推移によりおおむね順調に推移している考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はマウスの骨肉腫肺転移モデルを使用しIn vivoの実験を予定している。 平成24年度の研究において、使用した骨肉腫細胞株の中で、細胞増殖抑制およびアポトーシスがmTOR阻害薬(Rapamycin)によって有意に引き起こされたものを使用し、マウスへ移植し担癌マウスを制作し、mTOR阻害薬を投与し、マウスの全生存期間(カプラン・マイヤー曲線を統計学処理)、腫瘍の増殖抑制効果(TUNEL法)、転移予防効果(転移巣の病理組織学的手法)を検討することが目的となる。 実験計画としては、1)高肺転移マウス骨肉腫細胞株(LM8)をC3Hマウスに移植する完全マウス型骨肉腫肺転移モデルおよび、ヒト骨肉腫細胞(143B)をヌードマウスに移植するヒト骨肉腫型肺転移モデルとして2種類の骨肉腫担癌モデルマウスを作製する。2)この担癌マウスモデルにmTOR阻害薬をいくつかの投与方法(経口、経静脈、腹腔内)また、投与期間(1回/週、3回/週)で投与し、マウスの全生存期間(Kaplan-Meier法にて統計学的処理)、腫瘍の増殖抑制効果(大きさの検討、病理による壊死率の検討、TUNEL法で組織内のアポトーシスの確認)、転移予防効果(肺その他の臓器の解剖)を検討する。 平成24年度のIn vitroの結果と、平成25年度のIn vivoの結果を合わせて骨肉腫におけるmTORの働きの一部を解明し、その阻害薬の治療標的分子としての可能性を示したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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