2012 Fiscal Year Research-status Report
腱細胞培養系の樹立と腱細胞分化における新規マイクロRNAの同定
Project/Area Number |
24791532
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊坪 敏郎 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (90467168)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腱細胞 / GDF8 / 筋芽細胞株 / 無血清培地 |
Research Abstract |
平成24年度は初年度の目的であるマウス未分化間葉系細胞株から腱細胞への分化を誘導する培養系を確立するための研究を行ってきた. まず,マウス未分化間葉系細胞株であるC3H10T1/2と筋芽細胞株であるC2C12を様々な条件下で培養し,さらに腱細胞の分化を誘導する事が報告されているGrowth differentiation factor(GDF)5, 6, 7, 8を培地に添加,腱細胞への分化の程度をリアルタイムPCRによる腱細胞特異的マーカーの定量により比較した. 当初,血清を加えた培養液を用いて実験を行っていたが,いずれの増殖因子においても腱細胞への分化を十分に誘導することができなかったため,もともと無血清条件での培養が可能である事が知られているC2C12に対象を絞り,無血清培地を用いた培養下に同様の実験を行った.すると血清を加えた培養条件と比較し,いずれの増殖因子においても腱細胞特異的マーカーの発現が増加し,特にGDF8による刺激では腱細胞への分化が著しく促進される事が確認された.さらにリアルタイムPCRならびに免疫染色により,GDF8は同条件下でC2C12の筋細胞への分化も抑制することが確認された. 腱細胞の分化に重要であると報告されているsmad8について経時的にその発現を測定したところ,GDF8添加直後からsmad8の発現は減少し,また,GDF8の直接のシグナル伝達分子であるsmad2, 3の発現も減少した. GDF8はsmad2, 3を活性化させ筋細胞の分化を抑制する事が既に知られていることから,腱細胞の初期の分化誘導にもこのシグナルが関連し,さらにsmad8も何らかの機序により間接的に分化をコントロールしている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無血清培地を用いた培養下でのGDF8によるC2C12の腱細胞への分化誘導の系については,これまでの一連の実験によりその再現性が確認されており,第一の目的である腱細胞培養系の確立は,ほぼ達成できたと考えている. しかし,本培養系でのGDF8によるsmad2, 3, 8のリン酸化の有無や,GDF8刺激下でのsmad2, 3, 8の抑制による腱細胞分化への影響については未だ確認ができていない.また,GDF8のシグナル蛋白としてはextracellular signal-regulated kinase 1/2 (Erk1/2)やp38 mitogen-activated protein kinase (MAPK)なども知られていることから,これらの腱細胞分化への関与についてもシグナルの選択的抑制等の手法により確認する必要がある. また,GDF8による分化誘導時の各種マーカーの蛋白レベルの定量についても,リアルタイムPCRや免疫染色で得られた結果を裏付ける実験として今後行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度から26年度にかけては,本培養系でのGDF8による腱細胞分化誘導に重要なシグナル経路の同定をまでをまず行い,得られた結果を日本整形外科学基礎学会ならびに米国のOrthopaedic Research Society(ORS)において発表、さらに英論文として国際学術雑誌に投稿する。 また,本培養系を用い腱細胞の分化に特異的なmiRNAのプロファイリングを行い,データベースによるmiRNAの標的部位の絞り込みと,リアルタイムPCRによる分化誘導前後でのmiRNAの定量を行う.続いて,検出されたmiRNAの抑制活性の測定と特異性の確認をレポーターアッセイにより行い,さらに,miRNAまたはその前駆体を細胞内に導入し標的遺伝子に対する抑制効果をリアルタイムPCRによる標的遺伝子及び分化マーカーの定量により確認する.また,miRNAに対する特異的インヒビターを細胞内へ導入することにより、標的遺伝子の発現、細胞の分化に与える影響を調べる. 以上,miRNAの検出から機能解析までのデータがまとまった段階で,日本整形外科学基礎学会ならびに米国のOrthopaedic Research Society(ORS)における発表、ならびに英論文作成の準備を行い,以後可能な範囲でノックアウトマウス作成に必要な実験を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培地,血清,抗生剤,PBS,培養用ディッシュなどの細胞培養関連器具,試薬に5万円.RNA抽出用試薬,cDNA合成用キット,各種プライマー,リアルタイムRCR用キット,免疫染色用各種抗体,免疫染色用各種試薬,免疫染色用器具,各種阻害剤,ウェスタンブロット用各種抗体,ウェスタンブロット用各種試薬,合成蛋白,各種チューブ類,各種ピペット類,各種チップ類などの生化学実験用器具,試薬に計35万円.miRNAマイクロアレイ委託費に50万円.合計90万円を使用予定.
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