2012 Fiscal Year Research-status Report
不動化によるCRPS増悪機序の解明-損傷神経支配域を超えたNGF発現に着目して-
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24791537
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 美知郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90528829)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 複合性局所疼痛症候群 |
Research Abstract |
【研究の目的】整形外科日常診療において、複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者は外傷、感染、糖尿病、悪性腫瘍などによる末梢神経損傷後の症例でしばしば遭遇する。CRPS患者の難治性疼痛は最も重要な症状の一つであるが発生要因は十分に解明されていない。今回我々は動物モデルを用いて調査した。 【研究方法】Wister系雄ラットを用い、健常群(N群)、sham手術群(Sham群)、膝関節屈曲位内固定群(I群)、L5神経根を結紮切離したspinal nerve ligation(SNL)群(S群)、SNL+膝関節屈曲位内固定群(S+I群)を作成し、組織形態学的評価として後根神経節、坐骨神経、膝周囲筋の免疫染色を行い、各組織でreal time RT-PCRによるNGF mRNA発現変化、ELISA法によるNGFタンパク濃度測定を行った。 【結果】術後2週以降S群とS+I群で疼痛閾値が有意に低下していた。疼痛逃避行動が最も激しかった術後2週時点の各組織の免疫染色ではS+I群の膝関節周辺筋組織でNGF異所性発現が確認できた。膝関節周囲でも大腿側に強い発現が見られる傾向にあった。S+I群では各組織でNGF-mRNA発現、NGFタンパク濃度ともに増加していた。 【考察】本研究結果からNGFの発現量は疼痛反応の強さと関係があると考えられたが、結紮切離したL5神経根の支配領域以外にもNGFの発現が確認された。この所見はIASP(国際疼痛学会)のCRPS判定基準にもあるように、通常の神経障害性疼痛よりCRPS type2は症状が劇的であり、神経支配領域では説明のつかない疼痛を起こすという所見にも一致する。難治性疼痛の原因としてNGFは重要な因子のひとつと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析より、ラットCRPSモデルに膝関節固定を同時に行うことで、高度な拘縮、知覚過敏そして大腿四頭筋内にNGFの髙発現がみられた。近赤外線レーザー解析により筋節長の変化を定量的に評価したところ、NGFの発現と筋緊張との間に有意な相関は認めなかった。 NGF中和抗体による治療効果を分子生物学的手法、行動解析を現在行いデータを収集中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の不動化を加えた重傷CRPSモデルに対する抗NGF抗体の効果を分子生物学的、組織学的、行動学的及び脳機能学的に評価する。 特に分子生物学的解析においてはNGF以外にも BDNF, NT-3, NT-4、及びIL-1, IL-6, IL-10, PGE2などのサイトカイン、SP, CGRP, VIPを始めとする神経ペプチド、P2X, NK-1, Trk A, Trk B, NMDA, AMPAなどの受容体、Nav1.3, 1.7, 1.8, 1.9といった侵害受容に関与するナトリウムチャンネルをも対象とし、NGFと他の因子がどのように連動するかを確認する。 NGF中和抗体による治療効果を分子生物学的手法、行動解析、脳機能解析により評価することと、フラビン蛋白蛍光イメージング法を用いた脳機能イメージングにより中枢神経系の影響を評価する。特に、疼痛行動時の脳機能については感覚野の興奮だけで無く運動野の活動亢進が起こっていると推察しており、そこを捉えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験用動物及び試薬に使用予定。
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Research Products
(1 results)