2012 Fiscal Year Research-status Report
脊椎脊髄外科における新世代三次元造形技術の複合的応用
Project/Area Number |
24791539
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 充 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00456873)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脊椎手術 / 三次元実体模型 / 手術支援 / コンピュータ支援外科 / 画像処理 |
Research Abstract |
本研究ではフルカラーや金属材料、混合材料による三次元造形といった最新の高速プロトタイピング技術を脊椎脊髄外科分野で複合的に応用し次のような開発を進めている。①複雑な脊椎脊髄手術における効率的な三次元画像データ評価および術中の画像情報サーベイランスを可能にする高情報量三次元実体模型、②簡便で安全な骨切除、椎弓根螺子挿入を可能にする脊椎脊髄手術用三次元テンプレート、③若手医師手術トレーニング用モデル疾患高精度三次元実体模型。平成24年度はこれら以外にも、三次元実体模型の造形を行っている企業との共同研究により、三次元実体模型の造形に適した形状データの作成、臨床使用に適した造形材料の選別などを行い、より実用性を高めた三次元実体模型作成技術の開発を進めた。 平成24年度は具体的には以下の成果を達成した。 <課題①>高度脊柱変形例、再手術例、解剖学的特異症例などの複雑な手術症例において、骨のみならず硬膜管、神経根、血管、腫瘍などの軟部組織の三次元情報も盛り込んだ三次元実体模型を作成した。具体的には高度脊柱変形例5例、再手術例2例、解剖学的特異例1例、脊椎腫瘍例1例である。(合計9例)。 <課題②>患者のCT画像データから効率的に骨形状データを抽出する方法、さらに得られた骨形状データに正確に適合するカスタムテンプレートを設計するアルゴリズム、そして設計したテンプレートを正確に造形する技術を開発し臨床応用を行った。具体的には脊柱変形症例10例において、ガイドテンプレート使用した脊柱再建手術を行いすべての手術で計画通りの椎弓根螺子挿入を行うことが出来た。 <課題③>頚椎症性脊髄症、腰部脊柱管狭窄症において、手術トレーニング用の三次元実体模型を開発した。作成した模型を用いて実際に若手医師の手術トレーニングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、各課題における三次元データの設計アルゴリズムの確立と、実体模型の造形、臨床や教育における有用性の確認を行った。さらに、三次元実体模型の造形を行っている企業との共同研究も新たに開始し、三次元実体模型の造形に適した形状データの作成、臨床使用に適した造形材料の選別などを行い、より実用性を高めた三次元実体模型作成技術の開発を進めた。 課題1(難症例の手術支援模型)では、目標症例数(5例)を上回る、9例について手術支援模型を作成した。具体的には高度脊柱変形例5例、再手術例2例、解剖学的特異例1例、脊椎腫瘍例1例の計9例である。これらの難症例における術前画像より、骨のみならず硬膜管、神経根、血管、腫瘍などの軟部組織の三次元情報も盛り込んだ三次元実体模型を作成した。手術の際にその有用性を評価した。 課題2(手術用テンプレート)についても、目標症例数(5例)を上回る、10例について手術用テンプレートを作成し手術を行った。主に脊柱変形(側弯症など)において、椎弓根螺子挿入用テンプレートを作成して、実際に手術でこれを使用した椎弓根螺子挿入を行った。術後評価で99%近い螺子が正確に挿入されていることを確認した。 課題3(教育用模型)についても、頚椎症性脊髄症、腰椎すべり症、腰椎分離症、について教育用模型を作成し、若手医師の教育での使用を開始した。解剖学的複雑さから手術技術の獲得が困難な脊椎手術において、若手医師の教育のためには非常に有用であることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、平成24年度と同様に臨床例を積み重ねながら三次元造形用設計アルゴリズムの最適化を進め、データ作成法のプロトコル化を行う。プロトコル化により本研究成果の汎用性を確保し、最終的には未承認医療機器としての高度医療の申請を目指す。手術トレーニング用三次元模型については、ラインナップを充実されるとともに三次元造形を行う企業との共同研究も進め、使用材料の最適化などにも取り組む。 三次元造形技術の普及のにおけるの障壁の一つとしてコストの問題がある。しかし本技術はもともと医療以外の工業分野での応用から始まっており、技術の進歩と平行してコストの低下も急速に進んでいる。本研究はこのような工業分野における技術革新の恩恵をスムーズに医療分野に還元させる橋渡しの役割も担っている。そのため、平成24年度には三次元造形企業との共同研究も開始した。今後はこの研究体制をさらに充実させ、脊椎脊髄分野での各課題に適した造形技術の開発を行うとともに、低コストな造形材料の臨床応用などを進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、三次元造形企業との共同研究が進み、造形についての協力が得られたため,研究費として計上していたた造形費がほとんど発生しなかった。そのため、H25年度への繰越として758,287円が発生した。一方、近年のCT、MRIなどの患者画像取得技術の進歩はめざましく、膨大な画像データの取り扱いが必要になっている。それにともない、三次元実体模型の造形データの作成には多くのメモリ、処理能力の高いCPUやGPUが必要となっており当教室が保有するワークステーションでは造形データの作成に支障を来すようになってきている。そのため、H25年度には、繰り越し金とH25年度分の助成金110万円を合わせて新規にワークステーションの購入と三次元画像処理ソフトの更新を行う予定である。 消耗品の大部分は、ワークステーション用消耗品や、三次元プリンター用消耗品、三次元造形コストに充当される。 また、本研究では、各研究者、協力企業との連携・情報収集が不可欠であることから、旅費を計上し、活発な意見交換と綿密な打ち合わせを行う予定である。次年度からは、得られた成果を国内外に情報発信する目的での旅費や国際誌への論文投稿にともなう英文校正費用や投稿費用を計上している。
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