2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子導入・培養半月板移植による半月板損傷の修復促進と半月板再生
Project/Area Number |
24791546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
古松 毅之 岡山大学, 大学病院, 助教 (20432651)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半月板 / 再生医療 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
半月板inner領域損傷が、outer領域損傷に比較し治療成績が不良である原因として、inner領域は非血行領域であり、endostatinなどの血管新生抑制因子が関与していると考えられる。今年度は、軟骨組織特異的に発現するとされる血管新生抑制因子ChM-Iの半月板における局在とその役割について検討した。 人工膝関節置換術時に、変性の少ない外側半月板を採取し、ChM-Iの局在を免疫組織学的に検討した。半月板をinner領域・outer領域に半割し、I/II/III型コラーゲン・ChM-I・endostatinの発現をRT-PCRにて評価した。培養液中へのChM-I分泌量をELISAにより定量した。ChM-Iを含む半月板培養上清(C-CM)と免疫沈降によりChM-Iを除去した培養上清(IP-CM)を用い、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVECs)の増殖活性に対する影響を検討した。 免疫染色によるChM-I染色強度は、inner領域においてouter領域有意に強かった。C-CMのChM-I濃度は、inner・outer領域器官培養上清でそれぞれ7.5・3.7 ng/mlであった。COL2A1の発現は、inner領域で検出されたが、outer領域では認めなかった。ChM-Iの遺伝子発現はinner領域、および無血清培養下のinner細胞で観察された。また、C-CMではHUVECsの細胞増殖活性が阻害されたものの、IP-CMではその抑制効果が減弱された。 ChM-I発現は、半月板inner領域および無血清培養下inner細胞において特徴的であった。また、培養上清中のChM-Iが、血管内皮細胞の増殖を抑制していることが明らかとなった。半月板inner領域にはChM-Iが豊富に存在するため、半月板損傷時の血管侵入が阻害され、inner領域損傷の治癒を妨げている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管新生抑制因子ChM-Iの発現は、inner細胞特異的に発現する転写因子であるSOX9に制御されている可能性があり、半月板細胞へのSOX9遺伝子導入で、ChM-I発現も増幅される可能性がある。今回の結果から、半月板inner領域損傷に対して、SOX9を遺伝子導入したinner細胞を利用する場合、outer領域からの血管侵入がさらに期待できない状況が予想される。つまり、新生血管網の構築を目的とした治療法には限界があると考えられ、inner領域損傷は軟骨損傷に対する治療と同様、inner細胞の軟骨細胞様形質をいかに活性化させるかがポイントとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
「3次元培養半月板の作製」 -Sox9遺伝子導入と伸張刺激負荷- 半月板inner領域は非血行領域であり、特殊な線維軟骨様ECM構造をもつとされる。しかし、outer領域におけるECM構造を含め、動物種間で大きな違いが存在することが確認されている8)。申請者も、ヒト半月板においてII型コラーゲンの沈着がinner領域に特徴的であることを確認しており業績3)(図5)、inner領域に特徴的なECM構造を再構築することが、非血行領域における半月板修復促進と半月板再生の鍵になるものと推測される。 半月板inner細胞を生体吸収性ペプチドゲルに包埋し、3次元培養する(2週間)。Sox9導入と伸張刺激負荷(4時間/日)により、II型コラーゲンをはじめとするECM構成成分の産生が増強するものと予想される。伸張刺激後のSox9・ECM構成成分の発現変化を、real-time PCR・Western blot・免疫染色により解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究計画が順調に進行したため、消耗品における研究費の使用量が見積もりよりも少なかった。そのため残額を、平成25年度に繰り越すが、生体吸収性ペプチドゲル等の消耗品購入費に割り当てたい。その他、培養細胞・PCR関連試薬として平成25年度の研究費を使用予定である。
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