2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791562
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
細金 直文 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 助教 (10365306)
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Keywords | 椎間板変性 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
H25年度は昨年度に引き続き、閉経モデルラットの椎間板の解析を行った。閉経に伴い椎間板は変性するものの、その変化はさほど強くないことが判明したため、変性を引き起こす外的ストレスとして創外固定器による尾部圧迫を行った。これを併用することで閉経後の椎間板変性をより強く起こすことを検討したが、安定して均一な圧迫力をかける手法の確立が非常に困難であった。 また、早期老化モデルマウスの椎間板組織変化を検討するため、老化による変性を生じる原因の一つである酸化ストレスに着目しSOD-1のノックアウトマウスを入手した。本ノックアウトマウスと野生型マウスの椎間板組織を検討したところ明らかな差異は認められなかった。 そこで、実験系をin vivoからin vitroに変更し更なる検討を行った。Wistar系ラットから椎間板組織を採取し酵素処理により線維輪細胞を採取し実験に用いた。特に酸化ストレスが変性に及ぼす影響に着目し研究を行った。その結果、過酸化水素水(H2O2)で酸化ストレスを与えた場合、またより生体内の反応に近いと思われるgamma-glutamylcysteine synthetaseの阻害剤であるBSO(buthionine sulfoximine)で酸化ストレスを与えた場合、いずれも濃度依存性にTNF-α、MMP-3などの炎症性サイトカインの上昇やaggrecanなどの細胞外基質の減少がrealtime PCRを用いて遺伝子発現レベルで確認ができた。またこれらは抗酸化剤であるN-acetyl-L-cysteine (NAC)でレスキューできることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの結果で卵巣摘出による閉経モデルラットでは椎間板における表現型が弱く、これを際立たせる目的で行った尾部圧迫モデルも均一な圧迫力を加えるのは非常に難しく、安定した結果を出すことが困難であった。また酸化ストレスに着目して入手した早期老化モデルマウスでも明らかな椎間板変性所見を得られていないことから、in vivoのみではこれらの解析はやや困難であると判断し、平成25年度からはin vitroへと実験手法を変更した。この点が研究の達成度がやや遅れている理由である。 In vitroの実験系では酸化ストレスであるH2O2添加やBSO添加で炎症性サイトカインや細胞外基質の遺伝子変動が確認できたことから少なくともin vitroにおいては酸化ストレスによる椎間板細胞の反応は確認できており、実験系の確立は成功したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度から開始したin vitroの手法を用いて今後も酸化ストレスに着目した椎間板変性のメカニズム解明に関する研究を推進していく予定である。H202やBSO添加による酸化ストレスでmRNAレベルでの炎症性サイトカインの発現増加や細胞外基質の発現低下などが検出できたため、今後はその下流のシグナルを検討する予定である。軟骨細胞に於いては酸化ストレスのシグナル伝達物質としてp38 MAPK等が既に報告されているため、線維輪細胞でもこれらのMAPKが関与しているか、阻害剤などを使用し検証する予定である。また、尾部圧迫による椎間板変性モデルの作出は困難であったことから、椎間板に針による穿刺を加えた変性モデルを使用してこれらの酸化ストレスと変性との関連をin vivoでも検証を行う予定である。 また実際に手術等で採取した変性の進んだヒト椎間板組織を用いてTNF-αやIL-1などの炎症性サイトカインの発現、酸化ストレスの指標となるニトロチロシンの存在等を検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年10月に慶應義塾大学病院から防衛医科大学校に異動になり、助成金移管の手続きや、移動に伴う研究環境の変化により平成25年度後半の使用額が減少したことが理由と考えられる。 引き続き研究を推進する一方で、各種学会等において研究成果を一部発表予定であり、その旅費等にも活用する予定である。
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