2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791564
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須佐 美知郎 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90327560)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨軟部肉腫 |
Research Abstract |
本研究の目的は原発性悪性骨・軟部腫瘍の病態解明とそれにもとづく分子標的診断・治療開発のための基礎的情報をえることである。shRNAスクリーニングを用いた約700種のキナーゼの網羅的解析を行うことによりそれぞれの肉腫の病態をより明確にし、新しい診断・治療法の開発や現在の治療の大きな障壁となっている抗がん剤薬剤耐性の克服等、それぞれの肉腫に対する最適な治療法を確立することを最終目的とした。 はじめに細胞株の準備を開始した。骨軟部肉腫は悪性腫瘍全体の中で相対的に症例数が少なく,組織型が多様であるという特徴を有する.このため,各々の肉腫症例数は極めて限られており,肉腫研究を行う上で大きな障害となっている.このことから希少症例の肉腫細胞株を樹立することは,肉腫の生物学的研究を行う上で有力な手段となる.本研究期間中に代表的な疾患である骨肉腫、Ewing肉腫、滑膜肉腫等の細胞株を樹立予定であるが、現在骨肉腫とEwing肉腫細胞株についてはすでに入手済みであり、引き続き手術検体より採取した各種肉腫組織から細胞株樹立を試みている。現在新たにundifferentiated pleomorphic sarcoma(UPS88)及びmyxoid chondrosarcoma(#142)の細胞株の樹立に成功し、近日中に発表予定であり、同時に各種細胞株の各種薬剤耐性モデルを作成中である。これら細胞株を用いて、lentiviral人キナーゼshRNA libraryを用い、腫瘍の増殖抑制作用のあるキナーゼを今後同定する。期間内に各種細胞株においてスクリーニングは完結するものと考えられ、順次各々のキナーゼに対し、validationを施行していく。さらにin-vitroの実験結果をもとに、各肉腫の動物モデルを作成し、同定されたキナーゼの抑制による腫瘍への効果を検討することを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この度申請した期間内に代表的な疾患である骨肉腫、Ewing肉腫、悪性線維性組織球症、滑膜肉腫等の細胞株を入手あるいは樹立し、lentiviral人キナーゼshRNA libraryを用い、腫瘍の増殖抑制作用のあるキナーゼを同定することを予定していた。これまでに試験的に抗がん剤感受性骨肉腫および薬剤耐性骨肉腫を用いてスクリーニングを1回施行した。結果、5種類の有望なキナーゼが発見され、そのうちの2種において各種validationを施行し、それらは既に報告済である。現段階では骨肉腫とEwing肉腫細胞株を入手し、手術検体より採取した各種肉腫組織から細胞株樹立を試みている。国内外で未だ細胞株が存在しないものもあり、これらの細胞株樹立に現在着手しているが、当初予定しいた10種には到達していない。また当初期間内に各種細胞株においてスクリーニングは完結するものと考えられたが、現段階では新たな有望なキナーゼの発見にはいたっておらず、今後は順次各々のキナーゼに対し、validationを施行していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、滑膜肉腫等の腫瘍細胞株を現在作成中である。今後はこれらの腫瘍細胞を用いて、Lentiviral human kinase shRNA libraryを使用し各種細胞株に対して673種類のキナーゼの検証を行う。各種キナーゼshRNAにおいて5種のsequenceを用い、有意に細胞増殖を抑制するキナーゼにつき順次validationを施行していく。それぞれの細胞株に対し、その各々のキナーゼが対照正常組織と比べて高発現していることをまず確認する。また手術検体からも同様に対象キナーゼの発現の有無を確認する。それぞれのキナーゼの抑制にはsiRNAを用いておこなう。siRNA導入による抑制効果はウエスタンブロッティング法および蛍光免疫染色法を用いて確認する。各2種類のsiRNAを用いて、各種細胞株へのキナーゼ抑制効果に伴う細胞増殖能への影響をMTS試験により検討する。またそれぞれの肉腫においてキナーゼの発現と予後における関連をtissue microarrayを用いて可能なかぎり検証していく。キナーゼ阻害に伴うシグナル伝達系への影響をウエスタンブロッティング法を用いて検索する予定である。肉腫モデルに関して、入手あるいは新たに樹立した骨肉腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫細胞株はヌードマウスの大腿骨内へ、滑膜肉腫、悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫等の原発性悪性軟部肉腫の細胞株はマウス背部皮下へ接種予定である。同定されたキナーゼは肉腫マウスモデルの尾静脈より投与し、腫瘍増殖・腫瘍転移能に対する影響を評価する。投与後は各臓器の組織切片を作成し、腫瘍組織及び各臓器への影響を解析し、また肉腫モデルの血液検査と連動させることにより、副作用の有無等を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き細胞株の樹立、購入を予定している。次年度では人キナーゼshRNA libraryを用いて新たなキナーゼの同定、またそれぞれのキナーゼをsiRNAを用いることによって抑制し、順次validationを行っていく。各過程において、すでに保有している備品は用いる。既存の抗体やsiRNAを用いるが、既存の抗体が入手不可能な際は作成に関して委託を予定している。選択されたキナーゼ蛋白質が発生した骨軟部腫瘍組織で実際に発現しているか、引き続き解析を行う。免疫組織化学検査、ウェスタンブロッティング法などを用いる。またtissue microarrayをそれぞれの肉腫について手術時切除組織より作成する。これらの解析に際しては、試薬ならびに抗体などの購入が追加で必要となる可能性がある。各種shRNA、siRNA法を用いて解析対象の蛋白発現を低下させ、細胞増殖、細胞形態の変化、および細胞機能の変化を観察する予定である。 未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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