2013 Fiscal Year Research-status Report
骨・関節発生および骨代謝におけるTGFベータI型受容体の役割の解析
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24791574
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松延 知哉 九州大学, 大学病院, 助教 (20543416)
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Keywords | 骨格組織発生 |
Research Abstract |
近年、TGF-βシグナリングが骨格組織発生、ヒト骨系統疾患や、骨脆弱性により骨折を来しやすくなる骨粗鬆症、脊椎後縦靭帯骨化症の発症などに関与することが報告されている。疾患の病態解明には、正常な骨格組織発生におけるTGF-βシグナリングが果たす役割を解明することも重要である。 個体レベルで骨格組織発生を研究するにあたり、遺伝子改変マウスの作製は不可欠な手段となりつつあるが、TGF-βシグナリングに関しては、どの分子を標的にするかで、表現系が異なることが報告されている。その一つの理由として、TGF-βシグナリングが、複数のリガンドを利用し、細胞内シグナル伝達においては複数の下流伝達経路を用いることに起因すると考えられる。そこで、本研究代表者は、TGF-βシグナリングが、受容体を経由することに着目し、I型受容体ALK5の遺伝子改変マウスを作成し、骨格組織発生および骨代謝における役割の解明を目的とした。 本年度は、軟骨特異的(Col2-ALK5CKO)および未分化間葉系細胞特異的ALK5ノックアウトマウス(Dermo1-ALK5CKO)の解析を行った。胎生18.5日のμCTスキャナを用いた解析では、Col2-ALK5CKOおよびDermo1-ALK5CKOともに高度の脊柱変形が認められた。組織学的検査においては、胎生18.5日Col2-ALK5CKOおよびDermo1-ALK5CKOにおける椎体軟骨細胞の増殖能はコントロールマウスと比較し有意に低下しており、プロテオグリカン産生量も低下していた。以上の結果から、ALK5を介したTGF-βシグナリングは、脊柱発生において、軟骨細胞増殖・分化には関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、軟骨特異的および未分化間葉系細胞特異的ALK5コンディショナルノックアウトマウスを用いて解析を行った。平成24年度の研究により、ALK5を介したTGF-βシグナリングは、本遺伝子改変マウスにおいては四肢長管骨における軟骨細胞/軟骨形成には関与していないことが推察されていたが、脊椎椎体における軟骨細胞増殖・分化には関与していることが示唆された。脊椎椎体発生には、脊索から分泌される因子(SHHなど)が関与しているが、Dermo1-Creは脊索には発現していないことから、TGF-βシグナリングが直接的に椎体軟骨細胞増殖・分化に関与していると思われる。新たなる知見であり、研究は順調に進捗していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
Dermo1-ALK5CKOの骨形成異常のメカニズムの解明を引き続き継続する。本研究代表は、これまでにDermo1-ALK5CKOは四肢長管骨における骨芽細胞の増殖、分化が低下していることを発表している(Matsunobu T, et al. Dev Biol. 2009 Aug 15;332(2):325-38.)が、ノックアウトマウスにおいて定量的解析は施行していないため、H-E標本およびマイクロCTを用いて、骨形態計測を行う。Dermo1-ALK5CKOは、四肢長管骨の短縮が認められるが、軟骨細胞の増殖能は保たれているため、軟骨細胞の分化ならびに軟骨組織のremodelingの異常に着目して研究をすすめる。Dermo1-Creは、軟骨細胞・骨芽細胞共通前駆細胞で発現するため、より分化した骨芽細胞でのみ発現するような Col1a1-Creを用いた骨芽細胞特異的ALK5CKOを作成し、骨格形成異常ならびに骨代謝異常の有無を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨形態計測の解析はスムーズにすすんだが、軟骨分化マーカーに対する免疫組織染色、ホールマウントin situ hybridization(ISH)などの条件設定に難渋したため、試薬の消費が少なかった。 上記免疫染色、ISHの条件設定には一定の目処がついたため、試薬などの消耗品の購入に使用する予定である。
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