2013 Fiscal Year Research-status Report
敗血症性急性肺傷害に対するHDAC阻害剤の効果に関する研究
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24791586
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
青木 優太 富山大学, 大学病院, 助教 (10621667)
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Keywords | 敗血症 / ヒストン脱アセチル酵素 / 急性肺傷害 |
Research Abstract |
エピジェネティックスとはDNA塩基配列の違いによらない遺伝子発現の多様性を生み出す機構であり、その一つにヒストンのアセチル化がある。敗血症に起因する炎症とアポトーシスにおけるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の役割を明らかにし、新規HDAC阻害剤CG200745の敗血症に対する有用性について検討した。 雄性BALB/cマウスに盲腸結紮穿孔(CLP)を施し敗血症マウスを作成、CG200745投与群はCLP施行の3時間前に10 mg/kgを腹腔内投与した。敗血症マウスにおけるHDACレベル、組織学的変化、炎症性サイトカイン・ケモカインの発現、アポトーシス関連分子の発現について検討し、CG200745投与群と比較した。 HDAC1, 2, 3は敗血症マウスで有意に減少し、アセチル化ヒストンH3, H4は有意に増加した。敗血症マウスで肺および脾臓組織は炎症病理像を呈し、投薬群でも同等であった。敗血症マウス肺組織中のTNFαとIL-1β、MCP-1のmRNAも著明に上昇して投薬・非投薬群間で差がなく、血清中でも同様であった。 一方、肺と脾臓組織のTUNEL陽性細胞は敗血症マウスで著明に増加し、投薬群で有意に減少した。cleaved caspase 3、cleaved PARPも投薬群で有意に減少し、投薬群でアポトーシスの抑制が認められた。 敗血症においてエピジェネティックな制御を受ける遺伝子が存在し、CG200745は敗血症において炎症には影響を与えずアポトーシスのみを抑制するという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CG200745は、敗血症における炎症には影響を与えなかったが、アポトーシスに注目し研究を進めたことで、想定される結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症の病態では炎症とアポトーシスは、互いがその発症に必須ではない可能性が示唆された。今後は、CG200745と同様にHDAC阻害剤であるバルプロ酸について検討を行う。 また、HDAC阻害剤と抗炎症薬との併用により、敗血症による多臓器不全の治療に有用となる可能性を探っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験試薬、動物の費用は十分に使用したが、当初予定していた実験装置の購入を控えたため。 本年度の消耗品費をふまえて次年度はあらたな実験装置の購入などを予定する。 平成26年度の研究費限度額は、計831千円(平成26年度分 700千円+繰り越し分 131千円)となる。 したがって、消耗品費で600千円(実験用動物 150千円、実験試薬 200千円、実験器具 150千円、情報処理機器 100千円)、旅費で231千円(資料収集旅費 150千円、研究打ち合わせ旅費 81千円)、すなわち831千円使用する予定である。
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