2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791587
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
石田 高志 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (60531952)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 疼痛の発生・増強機構 |
Research Abstract |
細胞外記録により骨髄内刺激に応答する脊髄後角ニューロンの存在が明らかとなった。骨髄内刺激に応答するニューロンは、侵害刺激に応答するWide-Dynamic Range ニューロンもしくはHigh-Threshold ニューロンであり皮膚にも受容野を持つことが明らかとなった。また、骨髄内刺激に応答するLow-Threshold ニューロンは今回の実験では記録されず、骨髄内の神経は侵害刺激を特異的に伝達している可能性が示唆された。骨髄刺激に応答する脊髄後角ニューロンはモルヒネを脊髄投与することで刺激に対する反応が低下し、ナロキソンを投与することで反応が戻ることが明らかとなった。このことからも、骨髄内の神経が痛みを受容し脊髄後角に伝達していることが分かった。 大腿骨にバルーンを挿入したモデルラットを用いた行動薬理学的評価では、骨髄内のバルーン拡張に伴い、痛み行動を取ることが明らかとなった。また、これらの行動はモルヒネをくも膜下投与することで抑制されナロキソンを投与することでモルヒネの作用が拮抗された。以上の結果からも骨髄内刺激により痛みを知覚することが行動薬理学的にも明らかとなった。 この結果は、骨髄からの痛みで当該皮膚に関連痛が起こり、骨折手術後の創部痛を増強する可能性を示唆している。本研究の結果は、今後、骨転移性がん痛や整形外科手術後痛、関節炎・骨髄炎の痛みの機序を解明するための重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で骨髄から脊髄後角に入力するニューロンの電気生理学的特性が明らかとなった。また、行動生理学的にも骨髄内のニューロンが侵害刺激を受容していることが明らかとなっている。これらから、骨折や悪性腫瘍の骨転移などにおける痛みに骨髄内の神経が侵害刺激を受容している可能性が示唆され、骨痛の痛みのメカニズムの一部が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、同様のモデルを用いて、AMPAレセプタ拮抗薬、NMDAレセプタ拮抗薬、オピオイドなどを脊髄に投与し,骨髄内刺激による脊髄後角V層ニューロンの興奮がどのレセプタの活性化により惹起されているかについて検討を行う予定である。同様に、行動薬理学的にもAMPAレセプタ拮抗薬、NMDAレセプタ拮抗薬、オピオイドなどを脊髄くも膜下に持続投与による骨髄内刺激に対する応答性の評価を行う。 また、神経トレーサーを用いて骨髄や皮膚からのニューロン投射の解析やモデルラットにおける脊髄でのリン酸化ERKの定量及び、c-fos mRNAとリン酸化ERKの免疫染色を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が行えたため、次年度使用額が生じた。また、当初計画では神経トレーサーを用いた解析を行う予定であったが、研究の進捗状況により次年度実施することとなったため、次年度使用額が生じた。 次年度は骨髄刺激に応答するニューロンの薬理学的特性を明らかにするため、実験動物、薬理学実験試薬(AMPAレセプタ拮抗薬、NMDAレセプタ拮抗薬)、生化学実験試薬、細胞標的関連試薬に使用する。
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