2012 Fiscal Year Research-status Report
冠虚血危険因子による心筋コンディショニング阻害の分子機序とその制御
Project/Area Number |
24791600
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
東島 潮 長崎大学, 大学病院, 助教 (20380909)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プレコンディショニング |
Research Abstract |
麻酔薬であるプロポフォールは、心筋虚血プレコンディショニングを阻害する可能性が動物実験で報告されている。プロポフォールのミトコンドリアATP感受性カリウムチャネルを介するカリウムイオンの流れを阻害する機序、またはフリーラジカルスカベンジャーとしての性質がその機序として指摘されている。吸入麻酔薬であるセボフルレンの心筋保護効果はすでに人間で証明されており臨床応用されているが、近年は吸入麻酔薬による全身麻酔に代わり、プロポフォールによる全静脈麻酔による全身麻酔が増加傾向にある。その、短時間作用性により非常に調節性が良く、速やかな覚醒が得られるのが全静脈麻酔薬の長所である。心臓血管麻酔においてもよく使用される薬剤であるが、上記のとおりプロポフォールは心筋保護の観点からは抑制的に働く可能性がある。今回、本邦でも心臓血管手術周術期に使用される強心薬であるミルリノンと、欧州を中心に使用されているレボシメンダンの薬理学的プレコンディショニングがプロポフォール投与によって阻害されるかどうかを検討してみた。雄性ウイスターラットを用いて、コントロール群、ミルリノン投与群、ミルリノン+プロポフォール投与群、レボシメンダン群、レボシメンダン+プロポフォール投与群の5郡に分けて、それぞれ30分間の虚血刺激と120分間の再灌流時間を設けて、心筋梗塞サイズの比較検討を行っている。現在、実験進行中であり今後データがそろい次第解析に移行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、薬理学的プレコンディショニングにより心筋保護効果が期待できるレボシメンダン群に心筋保護効果が認められていないこと、またミルリノン群も心筋梗塞サイズの縮小傾向はあるものの、コントロール群と比較し有意差は出ていないことが実験の進行を遅らせている
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Strategy for Future Research Activity |
薬理学的プレコンディショニングが発揮されなかった原因を現在検討中である。薬剤の投与量、投与タイミング、実験手技、呼吸管理法、循環管理と様々な要因が絡んでく可能性があるので、一つ一つの要素を評価し、過去の報告に照らし合わせて期待される効果が得られるよう、実験プロトコール全体の修正を図っている。他の研究者とも議論し修正ポイントが確定次第、再度追加実験を行う予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
心筋プレコンディショニングの中でも、レイトプレコンディショニングに関与する因子としてシクロオキシゲナーゼ2が報告されてきた。われわれのグループではレボシメンダンによるポストコンディショニング、またセボフルレンによるプレコンディショニング、ポストコンディショニングによる心筋保護効果がシクロオキシゲナーゼ2阻害薬により阻害されることを報告してきた。今回は、レボシメンダンおよびミルリノンのプレコンディショニングにシクロオキシゲナーゼ2が関与するかどうかを検討する。今年度の研究費は、ウイスターラット、ミルリノン、レボシメンダン、実験に必要な糸、針、輸液、試薬類等に使用する予定である。また、小動物用の人工呼吸器の購入や、解析ソフトの購入なども検討中である。
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