2012 Fiscal Year Research-status Report
亜硝酸塩ポストコンディショニングによる心筋保護作用とその分子機序の解明
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24791607
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
平田 直之 札幌医科大学, 医学部, 助教 (00438045)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 周術期管理学 |
Research Abstract |
周術期の心筋虚血は生命予後に直結するため,心筋虚血及び再灌流障害をいかに制御するかは,周術期管理を行う麻酔科医の命題の一つである。本研究では,心筋保護作用が期待される亜硝酸塩を用いて,心筋保護作用の効果について,ラット心筋虚血モデルを用いて研究を行った。平成24年度は,心筋保護作用を有する亜硝酸塩の臨床用量について調査し,また心筋ミトコンドリアへ及ぼす影響について調査した。 Wistar ratを用い,麻酔下に冠動脈左前下行枝を結紮し,30分間継続した。結紮直前に異なる用量の亜硝酸塩(0, 48nM, 480nM, 4800nM)を投与し,虚血中の血行動態へ及ぼす影響を調査した。その結果,亜硝酸塩は,30分間の虚血による虚血領域(Area at risk)に対する影響はなかったが,480nMにおいて,虚血中の心室細動の発生率,及び不整脈の重症化が抑制された。480nMの亜硝酸塩は,心筋虚血誘発性不整脈を抑制することで心保護作用を有する可能性が示唆された。臨床用量として適正と考えられる同用量の亜硝酸塩を用いて,虚血再灌流傷害に対するポストコンディショニング作用を現在調査中である。 亜硝酸塩の心保護作用には心筋ミトコンドリアが深く関与していると考えられている。亜硝酸塩が心筋ミトコンドリアへ直接及ぼす影響を調査する目的で,単離ミトコンドリアを用いて研究を行った。大気下及び,低酸素環境下において,亜硝酸塩がミトコンドリア機能へ及ぼす影響を評価した。いずれの酸素環境においても,480nMの亜硝酸塩は心筋ミトコンドリアの酸化的リン酸化活性に影響を及ぼさなかったことから,心筋保護作用には,心筋ミトコンドリアは間接的に関与している可能性が示唆された。活性酸素種,一酸化窒素や一酸化窒素合成阻害薬の関与について調査を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜硝酸塩のポストコンディショニングによる心筋保護作用を調査する目的で本研究を開始した。虚血による梗塞領域の軽減を目的としていたが,抗不整脈薬としての効果がプレコンディショニングで認められた。また,効果的な用量と考えられた480nMは,血行動態へ及ぼす影響が極めて少なく,臨床的に有用である可能性が示唆された。 25年度は,ポストコンディショニング作用についての研究を継続して行く予定である。また,亜硝酸塩が心筋ミトコンドリアへ及ぼす影響が間接的と考えられたことから,活性酸素種や一酸化窒素の関与についても引き続き研究を継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
亜硝酸塩のポストコンディショニング心筋保護作用について研究を継続し,さらに吸入麻酔薬による心筋保護作用との関係,機序の相違について調査する。また分子機序として,活性酸素種,一酸化窒素と心筋ミトコンドリアの関係についても引き続き研究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に購入を予定していた循環動態解析ソフトは,既に保有している機器をバージョンアップさせることで代替が可能であった。結果,購入経費が削減できたため,25年度の研究で削減分を使用する予定である。 24年度に未使用であった経費と25年度予定経費は,実験動物,カテーテル等の消耗品,試薬の他,研究発表の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)