2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791609
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
箱崎 貴大 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (60595429)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 全身麻酔薬 / 亜酸化窒素 / 鎮痛作用 / 急性耐性 / カンナビノイド受容体 |
Research Abstract |
現在臨床使用されている全身麻酔薬の中には、連用投与によりその作用に対して耐性が形成されることが臨床上、動物実験双方で報告されているものがある。本研究の目的は、全身麻酔薬に対する耐性形成のメカニズムを神経化学的に解明することである。 全身麻酔薬である亜酸化窒素の鎮痛作用に対する急性耐性が形成されることが明らかなWistarラットを用いて、急性耐性形成に関与するといわれている細胞内情報伝達系のProtein‐kinase C(PKC)活性に影響を与えるカンナビノイドCB1受容体遺伝子の発現変化を検討した。雄性Wistarラットに75%亜酸化窒素を4時間吸入させた後、断頭して脳を取り出し、大脳皮質、小脳、海馬、線条体、脳幹の5部位に分けて、RT-PCR法を用いて、CB1受容体遺伝子の発現量を測定した。ごく短時間の全身麻酔薬セボフルラン吸入下に断頭したラットを対照として比較した結果、線条体におけるCB1受容体遺伝子の発現量が減少している傾向が認められた。 最近、PKC阻害薬を脳室内投与すると、マウスにおける亜酸化窒素の鎮痛作用に対する耐性形成が阻止されることが報告された。CB1受容体はPKCを活性化するGsタンパクに共役していることから、今回の結果は、線条体における変化が鎮痛作用とどのように関連しているかは不明であるが、亜酸化窒素の吸入によってCB1受容体が減少し、PKC活性や急性耐性形成に関与していることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初、静脈麻酔薬プロポフォールの鎮静作用に対する耐性形成モデルを作成し、亜酸化窒素と同様にCB1受容体の拮抗薬を投与して、耐性形成にCB1受容体の影響を検討する計画であったが、最近、PKC阻害薬を脳室内投与してマウスにおける亜酸化窒素の鎮痛作用に対する耐性形成が阻止されることが他施設より報告されたため、次年度の計画であったPKC活性の測定を前倒しで行うことを考えたが、準備に手間取り、その間に確立された手法を用いて行えるCB1受容体遺伝子の発現量測定を行った。 したがって、当初の計画は準備段階であり、遅れているといえるが、関連する成果をあげることができたため、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、亜酸化窒素によるCB1受容体遺伝子発現の減少を確実なものとし、さらにCB1受容体タンパク量の検討、当初の計画にあるPKC活性の検討を進めるとともに、当初の計画で遂行できなかった、静脈麻酔薬プロポフォールの鎮静作用に対する耐性形成モデルの作成、CB1受容体の拮抗薬投与による耐性形成への影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最近、PKC阻害薬を脳室内投与してマウスにおける亜酸化窒素の鎮痛作用に対する耐性形成が阻止されることが他施設より報告されたため、次年度の計画であったPKC活性の測定を前倒しで行うことを考えたために、次年度使用額が生じた。次年度は、当初の計画で遂行できなかった、静脈麻酔薬プロポフォールの鎮静作用に対する耐性形成モデルの作成、CB1受容体の拮抗薬投与による耐性形成への影響を検討するため、次年度使用額はラットや試薬の購入費として使用する。
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