2012 Fiscal Year Research-status Report
神経因性疼痛発症における軸索輸送の位置づけと神経保護に関する基礎的研究
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24791624
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
磯中 理沙 北里大学, 医学部, 助教 (50550547)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 軸索輸送 |
Research Abstract |
神経因性疼痛は中枢あるいは末梢神経の障害によって起こり、その痛みは患者のQOLを著しく低下させる。そのため、神経因性疼痛の緩和薬が果たす役割は大きい。本研究は、局所麻酔に起因する末梢神経障害をいかに防ぐことができるか、すなわち局所麻酔薬による神経因性疼痛を緩和するメカニズムの解明を目的としている。 当該年度は研究計画に則し、神経因性疼痛緩和薬の代表例として整形外科、麻酔科 (ペインクリニック) 領域の治療に用いられているノイロトロピンを用いて以下の実験を遂行した。 マウスの感覚神経細胞を培養し、実験に供した。ビデオ増感顕微鏡を用いて薬物投与前(コントロール)およびノイロトロピン処置後の神経線維内の軸索輸送をリアルタイムで観察、解析した。また、薬物投与前後の軸索径を測定、比較した。 これらの実験により、ノイロトロピンは神経線維内の粒子の輸送を減少させることを明らかにした。また、薬物投与による軸索径への影響はないことからノイロトロピンの神経細胞への毒性の低さを示した。 当該年度における研究結果は、ノイロトロピンが感覚神経細胞に及ぼす影響について明らかにした国内外初の知見となった。また、ノイロトロピンの適応症の一つである帯状疱疹後神経痛の原因となるヘルペスウィルスは軸索輸送を介して感染することが知られており、本研究結果はノイロトロピンによる神経疼痛緩和のメカニズムの解明の一端を担う結果となりえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度における研究計画に即し、本研究代表者は神経因性疼痛緩和薬の代表例であるノイロトロピンを用いて培養感覚神経細胞の軸索輸送への影響を観察する実験を遂行した。本研究結果については国内外の学会(日本生理学会、米国神経科学会議)にて発表し、国際学術誌に投稿するに至った。また、次年度以降の研究計画に記した細胞レベルでのリドカインとノイロトロピンの混合投与の実験、および同大学医学部麻酔科竹浪講師らと共同して実施するクモ膜下腔にカテーテルを留置したラットをモデル系とする個体レベルでの実験の予備実験を開始した。これらの点については当初の計画以上に進展していると考える。 しかし、共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内微細構造の観察については、学内共用機器を使用するため、研究進行速度が緩徐になったことから検討がまだ不十分であると考える。また、ノイロトロピン以外の神経因性疼痛緩和薬の実験が行えていないことから、当初の計画にやや遅れが生じている部分もあるといえる。 これらを総合すると、研究項目により進捗状況に差はあるが、本研究全体を通すとおおむね計画通りであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度と同様の手法でリドカインとノイロトロピンの混合薬が神経細胞に与える影響を調べ、リドカイン単独処置の結果と比較し、ノイロトロピンの神経保護効果について検討する。また、共焦点レーザー顕微鏡を用いた微細構造の観察およびノイロトロピン以外の神経因性疼痛緩和薬の影響に関しても引き続き検討する。 さらに、同大学医学部麻酔科竹浪講師らと共同し、ラットのくも膜下腔に留置したカテーテルを用いてノイロトロピンを投与し、神経機能評価(運動機能検査テスト、痛覚閾値テスト)および電子顕微鏡による組織標本の観察を行ない、個体レベルでの検討を開始する。 本研究で得られたデータを解析し、成果を国内外の学会および国際学術誌に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度と同様の実験手法をとるため、消耗品は、ビデオ増感顕微鏡の記録ビデオであるベータカム記録テープ、実験用試薬、水銀ランプ等に使用予定である。実験用試薬は、細胞培養液、ノイロトロピンおよびリドカイン等の薬物、神経細胞の微細構造の生体染色および組織化学染色に用いる抗体等を含む。また、本研究代表者は国際的視野で研究内容の検討、討論を行うため、米国神経科学会議での研究成果の発表を希望する。神経因性疼痛に対するノイロトロピンの効果は現在米国でも調査中であるため、米国での発表は研究内容を吟味するには有意義とあると考えられる。そのため、学会発表および参加のため5泊6日の外国旅費に必要な経費としても使用予定である。その他の経費としては研究成果の国際学術誌への投稿料等への使用を予定している。
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