2012 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化異常による精子形成障害と不妊治療に及ぼす影響
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24791638
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
杉本 和宏 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (70621837)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / メチル化 / 不妊症 / 精子 |
Research Abstract |
エピジェネティクス変化の中の一つDNAメチル化と不妊症、精子形成障害との関連性について論じた報告は非常に少ない。これに関し、我々はこれまでに精子形成に非常に重要であるとされるVASA遺伝子のT-DMR(組織特異的メチル化可変領域)に注目し、研究を進めてきた(J Hum Genet. 2009 Aug;54(8):450-6.)。 今回、我々はALF(TFIIA-α/β-like factor)遺伝子に注目して研究することを計画した。この遺伝子は、マウスにおける基礎実験でプロモーター領域のメチル化による遺伝子の発現制御が明らかにされており、TBP(TATA-binding protein) のDNAへの結合を安定化する機能を有する。マウスにおける実験で、ALF遺伝子は精子形成の中でも特に最終段階であるspermiogenesisに重要であるとされている。 不妊を主訴に来院し高度乏精子症、無精子症が認められた患者を対象とし、検査、治療のために精巣検査を行った。染色体異常、Y染色体長腕AZF領域の微小欠失を認める症例は除外した。精巣組織からtotal RNA、genomic DNAを採取した。目的遺伝子の発現解析(mRNA)には、Real-time RT-PCRを用いて定量化した。遺伝子特定領域のメチル化の解析には、MassARRAY-EpiTYPERによる定量的なメチル化解析を行った。最終的に、個々のサンプルの個々のCpGサイトのメチル化状態を定量化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標症例数50以上をこえる不妊症症例の精巣組織が入手可能になっている。 また、これらの精巣組織からtotal RNA、genomic DNAを採取することができ、一部の症例では定量的なメチル化解析を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究内容に該当する不妊症症例をさらに増やしながら、すでに採取されたtotal RNAの遺伝子発現をReal-time RT-PCRにて定量化し、genomic DNAのメチル化状態をMassARRAY-EpiTYPERにて定量化していく。 さらに、異常な高メチル化状態を呈する症例が存在すれば、そのような症例のメチル化状態と組織型との関係も考察する。 臨床的には、メチル化状態とTESEによる精子回収率との間の関係を分析していくことも目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
不妊症症例の精巣組織からtotal RNA、genomic DNAを採取するために要する薬品の購入に必要である。 また、平成24年度に購入予定であった、遺伝子の発現解析に用いているReal-time RT-PCR、またメチル化状態の定量化に用いているMassARRAY-EpiTYPERの薬品・物品について、次年度の研究にも必要であるため繰り越し分を使用する予定である。 研究結果を国内外の学会に発表し、さらに関連専門分野の国際雑誌に投稿する。
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