2012 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性大腸菌in vivo感染モデルでのPK-PDに基づいた抗菌薬投与法の検証
Project/Area Number |
24791651
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
和田 耕一郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (20423337)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 尿路感染症 / 大腸菌 / 薬剤耐性 / ESBL産生菌 / 抗菌薬 / 治療法 / 薬物動態/薬力学 / マウス感染モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は尿路感染症由来の薬剤耐性大腸菌に関して臨床的・基礎的・分子疫学的研究を遂行するとともに免疫不全マウスにおける重症感染症モデルを含むin vivoの実験系を用いてキノロン薬を中心とした各種抗菌薬の抗菌効果を検証し、PK-PD(薬物動態/薬力学)理論に基づいた解析を行うことである。平成24年度は問題となっている尿路感染症由来大腸菌に関するデータ収集のための臨床研究をデザインし、岡山大学倫理委員会で承認された。これらの臨床研究は尿路感染症患者の病態と臨床背景を解析し、得られた大腸菌株の基礎的解析を行うために不可欠なステップといえる。特に、我々が緑膿菌バイオフィルム実験系で検討してきたホスホマイシンとキノロン系薬との併用効果に関しては、大腸菌(臨床分離株)での評価も重要であり、抗菌薬の投与設計法を確立するための基盤が整いつつあるといえる。 平成24年度に実施した実験研究において、尿路感染症由来大腸菌の分子疫学的検討を行うためのMLST(multilocus sequence typing)解析法を確立した。2008年~2012年に岡山大学泌尿器科において分離されたESBL産生大腸菌のうち26株について解析を行った結果、ST131型が16株(61.5%)あり、国際的な流行株であった。その他、ST38型が4株、ST405型が2株、ST648型が2株、ST73型が1株、ST191型が1株であった。一方で、in vivo実験では市販の自己発光株(キャリパージャパン株式会社)を用いて、大腸菌マウス大腿部感染モデルでのリアルタイムイメージング装置(IVIS Lumina)の応用性について検討した。その結果、8~10時間の急性感染症モデルにおいて抗菌効果が検証できると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、臨床研究の立ち上げに多くの時間を費やしたため、実験研究は予備実験の段階で留まることとなった。 臨床的検討に関しては、以下の研究課題が岡山大学倫理委員会で承認され、すでに開始している。① 便中のフルオロキノロン耐性大腸菌を検出する簡易培地に関する研究‐前立腺生検に適用し急性前立腺炎の発生率低下に寄与するか‐(岡山大学倫理委員会受付番号:1290)② 成人急性単純性膀胱炎におけるセフジトレン ピボキシルの臨床効果と投与日数の検討(岡山大学倫理委員会受付番号:1383)③ ビアペネムの泌尿器科領域における薬物動態/薬力学(Pharmacokinetics / Pharmacodynamics;PK/PD)に関する研究(高齢者・腎機能低下例も含めた検討)(岡山大学倫理委員会受付番号:1287)④ 抗菌薬の精巣上体,精巣組織に対する移行性の検討 (岡山大学倫理委員会受付番号:1409) 上記の研究課題は臨床分離株の収集、抗菌薬の投与法に関する臨床データの収集、PK/PDに即した抗菌薬投与法の臨床的解析、大腸菌が原因菌として最も多い精巣上体炎に頻用される抗菌薬の体内動態の解析を目的としており、本研究課題に即した臨床研究といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に岡山大学倫理委員会で承認された臨床研究は平成25年度も継続する。目標症例数(上記 ①200例、②120例、③21例、④25例)に到達した場合、臨床背景や臨床分離株の基礎的解析(尿路感染症由来大腸菌株の薬剤感受性、バイオフィルム形成能など)によって得られた知見をまとめて学会発表や論文化を行う。 分子疫学的検討は、ESBL産生株やキノロン耐性株を用いて、平成24年度に確立した大腸菌のMLST解析を実施する。また、ESBL産生株の耐性遺伝子タイピングも実施する。特徴的な菌株(薬剤耐性大腸菌)については、in vitroバイオフィルム実験系(フローセルシステム)において、バイオフィルム形成過程ならびに形成能を検討する。in vivo実験は、① マウス腎盂腎炎モデルの確立後、薬効評価に着手する。② マウス大腿部感染モデルでの薬効評価を開始する。③ マウス膀胱異物モデルの確立後、薬効評価に着手する。 上記の臨床研究は基礎研究によって得られた知見に裏付けられるような目線で推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度研究計画調書(平成23年度11月提出)において、平成24年度の設備備品費として計上していたライトサイクラーナノ(ロシュ・ダイアグノスティックス)は1,460千円(定価)であり、平成24年度の助成金額(交付予定額)1,600千円のうちの90%を超える価格であった。従って、平成24年4月の交付申請書の提出の際に研究計画の見直しを行い、設備備品費(ライトサイクラーナノ)は計上しなかった。この設備備品費は平成24~26年度に消耗品費や機器使用料等に使用することとし、平成25~26年度に繰越すことにした。 平成25年度の消耗品費として、細菌培養培地類、プラスチック・ガラス器具類、分子生物学的実験に必要な酵素・キット類、一般試薬類、マウスなどを購入する。また、研究費は研究成果発表のための学会や研究会への出張旅費に使用する。その他、学内共同実験室の機器使用料金、動物資源部門利用料金の支払いなどにあてる。
|