2012 Fiscal Year Research-status Report
SCF/KITシグナル伝達系を介した前立腺の収縮および増殖機構の解明
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24791659
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
井村 誠 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (00551269)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | KIT陽性細胞 |
Research Abstract |
ヒトおよび実験動物の前立腺におけるKIT陽性細胞・c-kit・SCF発現を確認するために正常ヒト前立腺細胞を培養し、蛋白およびRNAを抽出しPCR、Western blotting、RT-PCRを行った。被膜下前立腺摘除術および膀胱・前立腺全摘除術を施行した際に得られたヒト前立腺組織から、同様に蛋白およびRNAを抽出した。それらの検体からKITおよびKITリガンドであるStem Cell Factor(SCF)の発現を確認した。 前立腺自動運動に対するKIT陽性細胞の役割を検討するために、モルモットの前立腺を摘出し、等尺収縮法を用い前立腺の自動運動を確認した。自発収縮の有無を確認し、基線が安定したところで頻度および張力の観察を十分に行った後、KITに対する抑制因子であるメシル酸イマチニブを投与したところ、自発収縮の振幅が濃度依存的に抑制された。 前立腺における細胞増殖機構を解明するために、ヒト前立腺の培養細胞Prostate Stromal Cellsを培養し、KITに対する抑制因子であるメシル酸イマチニブおよびKITリガンドであるStem Cell Factor(SCF)を作用させ、MTT assayにより細胞増殖能の変化を検討し、Western blotting法により、KIT下流蛋白であるJAK2およびSTAT1の発現変化を解析した。KITリガンドはヒト前立腺培養細胞の細胞増殖能およびJAK2・STAT1の発現を亢進させた。一方、 KIT抑制因子はこれらを抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は以下の4項目を計画していた。①ヒト前立腺におけるKIT陽性細胞・c-kit・SCF発現の確認②前立腺自動運動に対するKIT陽性細胞の役割を検討③前立腺肥大症モデルラットの作成④前立腺における細胞増殖機構の解明。 ①については、ヒト前立腺においてKITおよびKITリガンドであるStem Cell Factor(SCF)の発現を確認することができ目的を達成できた。②についても、前立腺の自動運動を確認し、KITに対する抑制因子を投与することにより、自発収縮の振幅が濃度依存的に抑制されることを確認することができ目的を達成できた。③については十分にモデルラットを作成することができなかった。25年度に研究を推進したいと考えている。④については、KITリガンドによりヒト前立腺培養細胞の細胞増殖能およびJAK2・STAT1の発現を亢進することが確認できた。一方、 KIT抑制因子によりこれらを抑制することが確認できた。④についても目的を達成することができた。以上より本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでの上皮肥大優位の前立腺肥大症モデル動物ではなく、私達が独自に開発したヒト前立腺肥大症に病理学的に非常に類似した間質肥大優位のモデルラットを作成し、用いることとする。妊娠20日目の雌SDラットから胎仔を採取。雄のみを選定し、顕微鏡下に胎仔の泌尿生殖洞を摘除。10%fetal bovine serum入りのRPMI1670溶液中で泌尿生殖洞を十分に洗浄したのち、7週齢の雄SDラットの前立腺腹側被膜下に顕微鏡下に移植することにより、前立腺肥大症モデルラットを作成。以下の研究に用いる。 ヒト正常前立腺と前立腺肥大症におけるKIT陽性細胞およびSCFの発現を比較するために、ヒト正常前立腺と前立腺肥大症の免疫組織染色を行い、KIT陽性間質細胞数/間質細胞数を比較する。また分子生物学的解析(RT-PCR、Western blotting)を用いることにより、ヒト正常前立腺と前立腺肥大症におけるKITおよびSCFの発現を比較する。 モデル動物の前立腺におけるKIT抑制因子およびKITリガンドの影響を検討するために、作成した前立腺肥大症モデルラットにメシル酸イマチニブおよびSCFを連日投与し、前立腺重量の変化・組織学的変化を投与前後で比較検討する。また、前立腺肥大症モデルラットを用い、コントロール群、メシル酸イマチニブ投与群そしてSCF投与群を設定し、各群間で排尿記録のパターン、KIT陽性細胞の分布、平滑筋機能などを比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【消耗品費】消耗品として実験動物を購入する費用が必要である。試薬類は、主にいわゆる分子生物学的解析(PCR、RT-PCR、ウエスタンブロット、免疫組織染色など)を行う際に使用する試薬のことを指す。他には前立腺の培養細胞および培養液の購入も必要となる。 【国内外旅費】学会発表については、日本泌尿器科学会総会、日本排尿機能学会、日本生理学学会、日本平滑筋学会等の国内学会やAmerican Urological Association annual meeting、International Continence Society等の国際学会に参加して、適宜研究成果を発表していく予定である。これらの学会発表に際し必要な旅費、滞在費および学会参加費の一部が必要である。 【謝 金】本研究を施行するに当たって、おもに実験動物管理または分子生物学的解析を行う研究助手を雇うため、一定の謝金が必要となる。研究助手は本補助金が認められた際に、状況に応じては別に雇う可能性もある。 【その他】上記学会のために英文添削料や研究発表のための論文投稿料が必要である。また、実験動物の飼育費が必要となる。
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