2012 Fiscal Year Research-status Report
精子幹細胞活性による造精機能障害メカニズムの解明と不妊治療への応用
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24791660
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
神沢 英幸 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00551277)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 停留精巣 / 造精機能障害 / 精子幹細胞 / UTF1 |
Research Abstract |
先天性の造精機能障害では、胎生期から新生児期に見られる未分化精細胞からA型精原細胞への分化異常が重要である。実際に私たちはラット下降精巣での検討で、A型精原細胞への分化時期を確認した。本研究ではA型精原細胞に分化する以前の時期から経時的・連続的に精巣組織の評価を行っている。現在、結果が出ている下記の研究について報告する。 男性不妊症モデル動物における精細胞系分化と幹細胞活性の検討: 精子幹細胞(spermatogonial stem cell; SSC)の幹細胞活性と、それが精細胞分化に及ぼす影響を検討するため、正常精巣を有するラットと停留精巣モデルラットを用い、精巣病理組織とSSC活性の比較を行った。具体的には私たちが開発した停留精巣モデルラットを用いて、胎生期から成体期までの精巣を適宜経時的に採取し、HE染色を行った。SSC活性の評価を行うため種々の幹細胞マーカーの発現を定量RT-PCR、Western blotting、免疫染色を行った。その結果、まず正常精巣を有するラットでの胎生期から出生直後のSSC分化とSSC活性を検討し、出生前後にSSC活性が最も高く、加齢に準じて活性が低下することを明らかにした。また精子形成に最も重要なA型精原細胞への分化がラット生後9日に見られることを明らかにした。また造精に強く関与する精子幹細胞関連遺伝子として、UTF1(undifferentiated embryonic cell transcription factor 1)遺伝子が有用な指標であることを明らかにした。さらに停留精巣モデルラットでのUTF1の発現と局在を検討し、停留精巣でSSC活性が低下している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
停留精巣モデルラットの作成には、妊娠ラットに抗アンドロゲン剤であるフルタミドを腹腔内投与することが必要である。私たちの研究施設では妊娠ラットおよびフルタミドが安定して確保可能であり、投与手技についてもこれまで本モデルを用いた多くの実験を行ってきていることから、90%以上の停留精巣発症を認め、安定したモデル作成が可能となっている。 また当施設では複数名が精巣病理組織に精通しており、結果判定の正確さが確保されている。さらに複数の研究助手が存在し、多くの手技が系統的・安定的に行われている。 精子幹細胞マーカーとして検討しているUTF1の発現評価については、定量RT-PCR、Western blotting、免疫染色においても十分な再現性を持って評価が可能であったため、精子幹細胞活性の評価が容易に行うことができた。 以上のことより本実験は、現在まで概ね順調に経過していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
造精機能を制御する遺伝子群の検討: 精子幹細胞活性に関連するUTF1以外の遺伝子を探索するためPCR-Subtraction法による遺伝子群のスクリーニングを行う。未分化精細胞がA型精原細胞に分化する9日齢の停留精巣ラットの精巣から合成したdouble strand cDNAをtesterとし、正常精巣から合成したものをdriverとして用いる。分光光度計にて核酸濃度を測定・調節後、cDNAライブラリーを切断・断片化。ここにアダプターを付加し、PCRを行う。増幅されたtesterとdriverとをhybridizationさせ、hybridizeしなかったcDNAのみを抽出しtesterとdriver間の発現差のあるcDNAを得る。得られたcDNAのみを抽出し、subtracted cDNA libraryを得る。FACSなどでA型精原細胞のみを選択し結果を厳密なものとする。PCR-Subtraction法により造精機能障害で発現量が変化する遺伝子群を網羅的に解析し、抽出された遺伝子群のmRNAや蛋白質の発現を検討する。 精子幹細胞の培養系の確立と造精機能を制御する遺伝子群カスケードの解明: 精子幹細胞の培養系を確立することで、上記で発現量変化を認めた遺伝子群の機能解析を行い、造精機能障害の発症メカニズムを解明したいと考える。具体的には4週齢ラットから精巣を摘出、細胞を分散させる。I型コラーゲンコートした培養皿で継代培養すると、体細胞は培地に定着するため、浮遊液中にコラーゲンと結合しない精子形成細胞を得ることができる。この浮遊液をラミニンコートした培養皿で培養すると、ラミニンに接着した精子幹細胞が分離され、高率に精巣幹細胞を回収できる。これに各種細胞表面マーカーの発現解析で幹細胞かどうかを確認する。出生前後~2週齢の精巣でも同様の方法で幹細胞の分離培養を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
停留精巣モデルラットは引き続き検体採取が必要であるため、動物購入、薬物購入、飼育費、施設維持費が経費となる。 PCR-subtractionを行うため試薬および複数のサーマルサイクラーが必須である。候補遺伝子の絞り込みが進んだ場合には、より厳密な評価を行うためA型精原細胞のみの選択的採取が必要となる。そのためレーザーマイクロダイセクションやFACSなどのセルソーティングを予定している。本学共同研究施設の設備の併用を考えているが、設備維持やアップデートおよび試薬の調達などに研究費をあてる予定である。さらに候補遺伝子のクローニングにあたりベクターの作成やホモロジー検索にも費用を要する。 精子幹細胞の培養系確立のためには、まずA型精原細胞の高精度な単離が必要となり、多くのラット精巣検体を要する。また複数の精子幹細胞マーカーの発現検討も必要であり、多種類の抗体購入が見込まれる。 培養系の確立後は、候補遺伝子の発現量や局在の評価を行うため、in situ hybridizationなどの費用も必要となる。 これらから有用な結果が得られた場合は、ノックアウト動物やノックダウン動物による確認が必要とされ、その経費も見込まれる。
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Research Products
(10 results)