2013 Fiscal Year Research-status Report
精子幹細胞活性による造精機能障害メカニズムの解明と不妊治療への応用
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24791660
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
神沢 英幸 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00551277)
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Keywords | 停留精巣 / 造精機能障害 / 精子幹細胞 / UTF1 |
Research Abstract |
先天性の造精機能障害では、胎生期から新生児期に見られる未分化精細胞からA型精原細胞への分化異常が重要である。実際に私たちはラット下降精巣での検討で、A型精原細胞への分化時期を確認した。本研究では以下の3項目から、A型精原細胞に分化する以前の時期から経時的・連続的に精巣組織の評価を行っている。 これまでに研究1:男性不妊症モデル動物における精細胞系分化と幹細胞活性の検討を行った。具体的には精子幹細胞(spermatogonial stem cell; SSC)の幹細胞活性と、それが精細胞分化に及ぼす影響を正常精巣ラットおよび停留精巣モデルラットを用いて検討した。その結果、ラットの正常精巣では、出生前後にSSC活性が最も高く、加齢に準じて活性が低下することを明らかにした。また精子形成に最も重要なA型精原細胞への分化の時期を明らかにし、造精に強く関与する精子幹細胞関連遺伝子として、UTF1(undifferentiated embryonic cell transcription factor 1)遺伝子が有用な指標であることを見出した。さらに停留精巣モデルラットにおけるUtf1発現の検討から、停留精巣ではSSC活性が低下していることを確認した。 また研究2:造精機能障害を制御する遺伝子群の検討も行った。具体的にはClonetech PCR-SelectTM cDNA Substraction Kitを使用しSSCで発現変化する遺伝子群を調べた。その結果、UTF1以外にもEEF1A1,TPT1などが精子形成に重要な遺伝子である可能性を見出した。 研究3:精子幹細胞の培養系確立については実験を進めているが、十分量の幹細胞採取に至らず、条件設定や培養方法の変更などを模索しつつ検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
停留精巣モデルラットの作成には、妊娠ラットに抗アンドロゲン剤であるフルタミドを腹腔内投与することが必要である。私たちの研究施設では妊娠ラットおよびフルタミドが安定して確保可能であり、投与手技についてもこれまで本モデルを用いた多くの実験を行ってきていることから、90%以上の停留精巣発症を認め、安定したモデル作成が可能となっている。また当施設では複数名が精巣病理組織に精通しており、結果判定の正確さが確保されている。さらに複数の研究助手が存在し、多くの手技が系統的・安定的に行われている。 精子幹細胞マーカーとしてのUTF1の有用性・再現性はblind下での複数名の研究者で確認し、それに基づいた研究を多方面に生かしている。 精巣への遺伝子導入は、精巣の細胞組成が多様である特徴から比較的難しいとされるが、リポフェクション法の習熟で細胞選択性の問題を克服しSSC特異的な評価が可能となっている。 培養系の確立については現時点で難渋しているが、学外の研究者ともディスカッションし新規の方法を模索中である。 以上のことより本実験は、現在まで概ね順調に経過していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究3:精子幹細胞の培養系の確立と造精機能を制御する遺伝子群カスケードの解明 精子幹細胞の培養系を確立することで、これまでの研究で発現量変化を認めた遺伝子群の機能解析を行い、造精機能障害の発症メカニズムを解明したいと考える。具体的には4週齢ラットから精巣を摘出、細胞を分散させる。I型コラーゲンコートした培養皿で継代培養すると、体細胞は培地に定着するため、浮遊液中にコラーゲンと結合しない精子形成細胞を得ることができる。この浮遊液をラミニンコートした培養皿で培養すると、ラミニンに接着した精子幹細胞が分離され、高率に精巣幹細胞を回収できる。これに各種細胞表面マーカー(α6-integrin、β1-integrin、c-kit、Oct4、Ngn3、Mvh、等)の発現解析で幹細胞かどうかを確認する。幼若期(出生前後~2週齢)の精巣でも同様の方法で幹細胞の分離培養を行う。当初はまず成体期もしくは幼若期の精巣からSSC培養系を確立することを考えていたが、SSC特異的に細胞回収することが困難であり、支持細胞の少ない胎生期の精巣から精祖細胞を分離してここから培養系を得ることを考えている。これらで抽出された遺伝子の発現をヒト不妊症精巣で検討し、造精機能障害の予測因子を明らかにする。
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[Presentation] Expediency of early orchiopexy for spermatogonial stem cell activity and apoptosis in cryptorchid testes.2013
Author(s)
Kamisawa Hideyuki, Mizuno Kentaro, Imura Makoto, Moritoki Yoshinobu, Nishio Hidenori, Nakane Akihiro, Kato Toshiki, Maruyama Tetsuji, Hayashi Yutaro, Kohri Kenjiro
Organizer
American Urological Association Annual Meeting 2013
Place of Presentation
San Diego Convention Center( San Diego, USA)
Year and Date
20130504-20130508