2012 Fiscal Year Research-status Report
上部尿路上皮癌におけるレニンアンギオテンシン系の制御を利用した新規治療の確立
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24791671
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60445244)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 尿路上皮癌 / 血管新生 / レニン・アンギオテンシン / ARB |
Research Abstract |
限局性上部尿路上皮癌は膀胱部分切除を含めた腎尿管全摘術が標準術式であるが、根治手術が施行された症例でも術後5年生存率は60-80%と不良であり、術後補助治療として確立した化学療法は存在しない。当教室ではRenin-angiotensin systemと泌尿器科癌に着目し、Angiotensin II receptor blocker (ARB)の血管新生阻害を介した抗腫瘍効果を報告してきた。本研究は上部尿路上皮癌Adjuvant治療における、ARBを利用した新規治療戦略の確立を目的とした。H24年度はAngII阻害剤(ACE阻害薬及びARB)の上部尿路上皮癌における臨床的有効性の検証のため、慶應義塾大学病院における上部尿路上皮癌データベースを基に、当教室関連施設の協力の下、上部尿路上皮癌の国内間多施設共同データベース作成を行った(11施設が参加)。登録症例は750例を超え、データベースを利用したAngII阻害剤(ACE阻害薬及びARB)の臨床的有効性の後ろ向き解析では、病理組織学的因子に加えAng II阻害薬の内服の有無が術後再発に関連する独立した危険因子であり、術後Adjuvant療法としてのAng II阻害薬の有効性が確認された。更に本データベースを用いた上部尿路上皮癌の予後解析においては、上部尿路上皮癌における予後予測マーカーとしてのC-reactive protein (CRP)の有用性、再発性上部尿路上皮癌のリスク分類が確認され、海外誌に掲載された。また類似研究として施行した表在性膀胱癌におけるAng II阻害薬の内服の有効性検討でも、Ang II阻害薬の内服患者における有意な術後膀胱内再発低下が確認され、表在性膀胱癌患者においてもAng II阻害薬内服の臨床的有用性が確認され、海外誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度はまず慶應義塾大学病院における上部尿路上皮癌データベースを基に、当教室関連施設の協力の下、上部尿路上皮癌の国内間多施設共同データベース作成を行った。最終的な参加施設は11施設となり、登録症例は750例を超え、世界的規模のデータベースが作成された。データベースを利用したAngII阻害剤(ACE阻害薬及びARB)の臨床的有効性の後ろ向き解析では、病理組織学的因子に加えAng II阻害薬の内服の有無が術後再発に関連する独立した危険因子であり、術後Adjuvant療法としてのAng II阻害薬の有効性が確認された。更に本データベースを用いた上部尿路上皮癌の予後解析においては、上部尿路上皮癌における予後予測マーカーとしてのC-reactive protein (CRP)の有用性、再発性上部尿路上皮癌のリスク分類が確認され、海外誌に掲載された。この他にも上部尿路上皮癌における再発形式の検討・尿細胞診陽性の臨床的意義等、本データベースによる上部尿路上皮癌の臨床研究を現在投稿中である。また類似研究として施行した表在性膀胱癌におけるAng II阻害薬の内服の有効性検討では(N=330)、Ang II阻害薬の内服群における有意な術後膀胱内再発低下が確認され、表在性膀胱癌患者においてもAng II阻害薬内服の臨床的有用性が確認され、海外誌に掲載された。以上より、H24年度の本研究におけるエフォートの多くは、データベース作成やその予後解析に費やされた。Ang II阻害薬の有効性証明に不可欠な基礎的検討は次年度に予定した。
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Strategy for Future Research Activity |
①尿路上皮癌細胞株への持続的なAng II阻害に伴うジェネティック・エピジェネティック変化解析:尿路上皮癌におけるAng II阻害薬の有用性を考慮する上で、持続的なAng II阻害薬投与の癌細胞に及ぼす変化を検討する。既に本研究の前段階としてヒト尿路上皮癌細胞3種(T24、5637、UMUC-3)に6カ月にわたりARB3種(Candesartan、Irbesartan、Telmisartan)を持続投与し、長期間Ang II持続阻害が行われた尿路上皮癌細胞株を準備した。これら細胞に対してマイクロアレイ解析を含めた網羅的解析を行うことにより、細胞内での持続的Ang II阻害による変化を解析する予定である。更にマウス膀胱癌同所性発がんモデルを用いて、膀胱癌発がん過程におけるAng II阻害薬持続の意義についても同様の手法を用いて解析予定である。 ②上部尿路上皮癌データベースを利用した摘出検体における免疫組織学的評価と臨床病理学的因子の比較:次に細胞内でのジェネティック・エピジェネティック変化の結果を踏まえ、作成したデータベースより患者情報を抽出、免疫組織学的評価を用いIn vitroにおける網羅解析のValidationを行う予定である。 ③上部尿路上皮癌患者へのAng II阻害薬(ARB)を用いた多施設比較臨床試験の計画:以上の基礎的・臨床的研究結果を踏まえ、共同研究施設間での多施設比較臨床試験を予定している。具体的には、上部尿路上皮癌患者に対して術後補助療法としてARB投与を行い、Ang II阻害剤の有用性を検討する予定である。既に類似の研究で、表在性膀胱癌のARBを用いた再発抑制効果の検討を国内多施設無作為比較臨床試験で開始しており、本研究も研究系が多くの部分で類似していることから、比較的円滑な研究導入が可能と思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①尿路上皮癌細胞株への持続的なAng II阻害に伴うジェネティック・エピジェネティック変化解析:Ang II阻害薬投与を行った膀胱癌細胞を用いて、マイクロアレイ解析による網羅的解析を含めたジェネティック・エピジェネティック変化の検討を行う。また免疫染色やウエスタンブロット法等を用いた蛋白発現解析も併用し、Ang II持続阻害の治療的・臨床的意義の検討も行う予定である。研究費は解析費用及び蛋白発現検討の試薬・抗体費用・雑費等に充てる予定である。更にマウス膀胱癌同所性発がんモデルを用いて、膀胱癌発がん過程におけるAng II阻害薬持続の意義についても同様な解析を行う予定である。 ②上部尿路上皮癌データベースを利用した摘出検体における免疫組織学的評価と臨床病理学的因子の比較:次に細胞内でのジェネティック・エピジェネティック変化の結果を踏まえ、作成したデータベースより患者情報を抽出、免疫組織学的評価を用いIn vitroにおける検討結果のValidationを行う予定である。よって研究費も同様に蛋白発現検討の試薬・抗体費用・雑費等に充てる予定である。
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